ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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魚人ゲート5

『トモナリ、聞こえるか?』

 

「ああ、聞こえてるぞ」

 

 もう大丈夫そうと下がろうとしたトモナリの頭の中にルビウスの声が響いてきた。

 トモナリとルビウスは魂の契約で繋がっている。

 

 そのために離れていても会話が可能である。

 だからトモナリは普段からルビウスを手放さない。

 

 だって手放しているとうるさいのだ。

 ちなみにヒカリとは遠距離交信ができない。

 

 実体があるヒカリと実体がないルビウスの差がそこにあるのかもしれない。

 

「さらわれた人はどうなった?」

 

『まだ生きておる。あれはマーマンシャーマンかのぅ。木の檻のようなものなものに閉じ込められていて儀式のようなものをしようとしておる。今ならまだ助けられるぞ』

 

「分かった。まだ監視を続けてくれ」

 

『妾もやきそば……食べたいのぅ』

 

「後で買ってやるから」

 

『ふふ、監視は任せておけ』

 

「失敗するなよ!」

 

『ふん、お主のようなちんちくりんとは違うから大丈夫だ』

 

「なにをー!」

 

 ルビウスとの交信はヒカリにも聞こえている。

 ルビウスの物言いにヒカリはプンプンとしている。

 

 まださらわれた人を助けられる可能性がある。

 トモナリは周りを見てミネルアギルドの責任者っぽそうな人を探す。

 

 周りに指示を出している四十代ぐらいの男性がいた。

 指示を出しているということはギルドのリーダーか、少なくとも上の立場にいる人である。

 

「すいません」

 

「ん? ああ、君がモンスターの討伐に協力してくれた子だね。協力に感謝するよ。あとは我々に任せて避難くれて大丈夫だよ」

 

「それよりもモンスターにさらわれた人がいるんです」

 

「なんだって?」

 

「モンスターが数人ゲートの中に人を連れていったんです。今ならまだ……」

 

「それは……もうすぐ討伐してくれるギルドが決まるだろうからそちらに伝えておこう」

 

「はっ?」

 

 男の返事にトモナリは驚いてしまった。

 

「今すぐ行けばまだ助けられる可能性が高いんですよ!」

 

「それはそうかもしれないが我々の仕事は海水浴場の保全だ。海水浴のお客の保護、モンスターの討伐でゲートの攻略は契約に含まれていない」

 

「そんなこと……」

 

「我々はリスクを冒さない。ゲートの攻略を意図した備えもしていない。すでに通報はなされているから他のギルドがすぐに攻略してくれるだろう」

 

「ふざけんなよ!」

 

 トモナリが男に掴みかかる。

 

「トモナリ君!」

 

「何をしてるんだ!」

 

 そこにマコトとコウが駆けつける。

 

「こんなに人がいるだろ! マーマンならそんなに強い魔物じゃない! 時間がかかるほどにさらわれた人が助かる可能性は低くなるんだ!」

 

「そんなこと理解している。ただ義務も責任も我々にはない。君は現実を見るんだ」

 

「現実だと……目の前に助けられる人がいる! それが現実だ!」

 

「どうしても助けたいなら君が行くといい。我々はゲートを攻略するつもりはないから好きにしても構わない」

 

「こいつ……」

 

「トモナリ君ダメだよ!」

 

「暴力はいけない!」

 

 冷たく言い放つ男にトモナリはカッとなる。

 マコトとコウがトモナリのことを押さえて引きずるようにしてその場を離れる。

 

「三人とも、何があったの?」

 

「あのクソ野郎!」

 

 一般人の避難誘導もギルドに任せた。

 トモナリたちが来ないのでミズキたちも戻ってきていてトモナリが掴みかかっているところを見ていたのである。

 

 珍しく怒ったような表情を浮かべるトモナリをミズキは心配そうな顔で見ている。

 

「実は……」

 

「何それ!」

 

「ひどい」

 

「契約にないからってそんな話あるかよ……」

 

 怒りがおさまらないトモナリの代わりにコウが状況を説明する。

 モンスターに人がさらわれたのだけどミネルアギルドはゲートの中には助けに行くつもりがない。

 

 そのことでトモナリと揉めていたのだと説明するとミズキたちも不快感をあらわにした。

 

「どうするつもりなんだ?」

 

「……俺一人でも行く」

 

「トモナリ君……」

 

「まだ生きてるんだ。助けられる。見捨てられるかよ!」

 

 回帰前助けられない人がたくさんいた。

 どうしても助けることが無理な人はいた。

 

 だが戦いも激しさを増すとリスクが伴うという理由で多くの人が見捨てられ犠牲になっていった。

 全ての人を救うことなんてできない。

 

 そんなことはトモナリにも分かっている。

 けれど今は手を伸ばせばさらわれた人たちは助けられる可能性が高いのだ。

 

 無視して避難などしていられない。

 

「僕も行くよ」

 

「僕も!」

 

「コウ……マコト……」

 

「一人でなんて行かせられない。僕たちだって強くなったんだ。トモナリ君の足手まといにはならないよ」

 

「僕だって!」

 

 コウとマコトもトモナリがゲートに行くならついていくつもりだった。

 ここまでコウとマコトだってトモナリとトレーニングをしてゲートでレベルを上げてきた。

 

 二人も同レベル帯の覚醒者と比べると強い方であるとトモナリも自信を持って言える。

 

「……俺もいく!」

 

「ユウト?」

 

「武器ないから……素手になるけど友達が行くのに黙って見てられっかよ!」

 

「私も行くよ!」

 

「私も」

 

「ミズキにサーシャも」

 

「せめて武器ぐらい欲しいけどやってやるんだから!」

 

「ユウト盾にする」

 

「やめぃ!」

 

 ユウトを始めとしてミズキとサーシャもトモナリと一緒に行くつもりである。

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