ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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閑話・やらないことの責任

「くそっ!」

 

「荒れてんなぁ……」

 

「しょうがねえよ。あんなことになっちまったんだから」

 

 部屋の中から何かが割れるような音と怒声が聞こえてきて廊下を歩いていた覚醒者の二人は顔を見合わせた。

 荒れているのはミネルアギルドのギルド長である男だった。

 

 砂浜でトモナリと衝突したミネルアギルドの責任者がギルド長その人であったのだ。

 

「今じゃ俺もミネルアギルドってだけで冷たい目を向けられるよ」

 

 トモナリたちがゲートの攻略に成功してさらわれた人を助け出したことは大きく地元のニュースとして取り上げられた。

 まだ未成年ということでトモナリたちの顔や名前こそ報じられることはなかったが、ゲートのニュースそのものは全国区の話題となった。

 

 多くのメディアはトモナリたちの活躍やさらわれた人を助け出すという姿勢を褒め、さらわれた人たちの無事を報じた。

 一方で別の切り口から出来事を報じたメディアも存在している。

 

 浜辺の管理を任されていたミネルアギルドがゲートの攻略に参加しなかったというところに目をつけたのだ。

 当然ながら入場制限によって入れない場合はある。

 

 しかし今回のゲートはレベル5以上であれば入れる。

 つまりほとんど制限はないのと同じだった。

 

 ゲートの情報は特別なものでもなきゃ公開されるのでミネルアギルドでも入れたゲートだということは簡単に調べがつく。

 まだ若い学生が人を助けにゲートに入ったのにミネルアギルドは何もしなかった。

 

 そんな疑いが一部のメディアで報じられた。

 

「あんなもん流出したらな……決定的だ」

 

 ただあくまでもそれは疑いであり、いくらでも言い訳ができるはずだった。

 ミネルアギルドの疑いを裏付けるものなどない。

 

 むしろミネルアギルドは法的手段をちらつかせて意見を封殺しようとしていた。

 そんなところにあるものが動画サイトに投稿された。

 

 それはトモナリとミネルアギルドのギルド長の会話だった。

 さらわれた人がいてまだ助けられると主張するトモナリに対してゲート攻略は課された仕事ではなく助けるつもりはないと言い放つ場面である。

 

 トモナリの顔こそ映らないように配慮された動画だったけれど会話が何のものなのかは一目瞭然であった。

 トモナリたちへの称賛が一通り終わって話題が終わりかけていたところにこんな話が降って湧いたのだ、メディアはこぞって食いついた。

 

 法的手段をちらつかせて意見を押さえつけようとしていたことも印象が悪くてミネルアギルドは批判の的になっていた。

 人を助けることを放棄した非人道的ギルドという拭いきれないレッテルが貼られてしまったのである。

 

 海水浴場の管理を任されるなんて簡単なことではない。

 ここまでコツコツと積み重ねてきた信頼が一気に吹き飛んだだけでなくマイナスになってしまった。

 

 ギルド長が荒れるのも当然なのだ。

 

「海水浴場の管理も怪しいんだろ?」

 

「そうらしいな……ミネルアギルドにいたって親に心配かけるだけだしどっか移籍検討しなきゃな」

 

「でもよ、元ミネルアギルドってだけで良い顔されなさそうだな」

 

「はぁーあ、安定だと思ったんだけどな。あんなガキに攻略できんなら俺たちでやればよかったのに」

 

「でもゲート攻略したのも鬼頭アカデミーのエリートでNo.10攻略した奴ららしいぜ」

 

「はっ、俺だってレベル20ならNo.10ぐらい攻略してみせるさ」

 

「くそがぁ!」

 

「……行こう。ここにいちゃ見つかるかもしれない」

 

「そうだな」

 

 やらないという選択肢は尊重されるべきだ。

 しかしトモナリたちにやるのならば命の保証はないなどと言い放ったのと同様にやらないことにも責任は付きまとうのだ。

 

「あのガキのせいで!」

 

 完全に批判される前にいくらでもミネルアギルドへの向けられる目への対処方法はあった。

 全てのやり方を間違い、最悪な結果を招くことにしたのはミネルアギルド自身の選択である。

 

 ミネルアギルドは海水浴場の管理から外され、批判されることを嫌った覚醒者たちはギルドを離れ、最終的にミネルアギルドは空中分解することになったのであった。

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