ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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守りたいこの景色1

「ほんとさ……ああいうのはこう……三つぐらいの質問にしてくんないかな?」

 

「気持ちは分からなくもないけど向こうも大変なんだよ」

 

「若い時は貴重なんだよ〜」

 

 浜辺でのゲートを攻略したトモナリたちだったが病院での検査や覚醒者協会による取り調べで丸一日が潰れた。

 非難されるべき行いでなかったので厳しくされることはなかったけれども、若いのに無茶をするなと覚醒者協会の職員から小言はもらった。

 

 トモナリはマサヨシからも連絡を受けていて少し心配をかけてしまったが問題ないと答えるとホッとしたようにため息をついていた。

 

「まあみんな褒めてくれるし、よかったっちゃよかったのかな」

 

 マサヨシからはメディアの方もなんとかしておくと言われている。

 大きなメディアはトモナリたちのことを褒めつつも素性は明らかにしないようにしてくれた。

 

 面倒な主張をする者が現れることを心配していたけれど、批判的な記事は人を助けにいかなかったミネルアギルドの方に向いていたので助かった。

 もしかしたらそれもマサヨシのメディアコントロールの賜物なのかもしれない。

 

「まあ昨日で終わってよかったじゃないか」

 

 ゲートの出現から聴取まで大きく予定が狂うことになったのだけど元々スケジュールは余裕を持って組んである。

 たった一日潰れただけで済んだのならむしろラッキーな方だとコウは思った。

 

 もっと長々と手続きやら多くのことをやらされる可能性だってもちろんあったのだから。

 

「にしてもよ……遅いな」

 

 トモナリたちは地元で開催されているお祭りにやってきていた。

 商店街を通る直線の道を使って屋台などがずらっと並ぶみんなのお楽しみのイベントだ。

 

 男子は先に行っているように。

 そんなことを言われてトモナリたち男子組は先にミズキの家を出てお祭りの近くでミズキたちを待っていた。

 

「女の子には何かと準備がかかるもんだからな」

 

「余裕があるね。うちの姉さんはどんなことでも準備早かったからな……」

 

 世界の終末期でろくなものがない時でもしっかりと身を整える女性はいた。

 むしろギリギリの状況でも自分を保つために色々としていたのかもしれない。

 

 何にしても何かを待ったりどんなことにでもイラつかないような心の余裕は戦いにおいても必要不可欠だ。

 コウは自分の姉であるミクのことを思い浮かべるけどミクはコウよりも準備が早いぐらいの人だった。

 

「まだかかるようならなんか買ってもいいかも……」

 

「ごめん! 待たせた!」

 

「おっ、きたきた」

 

 近くに焼きそばの屋台があるものだから余計に色々刺激される。

 焼きそばぐらい買ってもいいかなんて思っているとやっとミズキたちが合流した。

 

「時間かかってると思ったらそんなもん着てたのか」

 

「ほぉ〜似合ってるじゃないか。まさか……ヒカリもとはな」

 

「うへへー似合ってるのだ?」

 

「ああ、可愛いぞ」

 

「ふむっ!」

 

 トモナリたちの輪の中にヒカリもいなかった。

 なぜなのかミズキはヒカリも連れて行ったのだけどようやく理由が分かった。

 

 ミズキたちは浴衣を着ていた。

 ミズキは赤、サーシャは青いものを着ていて着付けのために少し時間がかかったのであった。

 

 そしてさらにはヒカリも浴衣を着ていた。

 浴衣というか浴衣を利用してヒカリに合わせて作られた特殊な浴衣風衣装だ。

 

 トモナリは普通に可愛いなと思い、ヒカリは褒められて嬉しそうに尻尾を振っている。

 嬉しそうに笑顔を浮かべたヒカリはビタッとトモナリの顔に張り付く。

 

「お母さんが作ってくれたんだよ」

 

「ユキナさんが」

 

 トモナリは顔に張り付くヒカリを引き剥がして改めてヒカリ用の浴衣を見る。

 翼用の穴が空いていたりとうまくデザインされているものだと感心してしまう。

 

 ヒカリの浴衣を作ってくれたのはミズキの母親であるユキナであった。

 泊まってお祭りに行くってことは伝えてあったので使わない浴衣を再利用して作ってくれたのである。

 

 なかなかすごい技術だ。

 

「二人の方もよく似合ってんじゃないか」

 

「そうでしょ? 私はスタイル良いからね」

 

「そーだな」

 

「何それー!」

 

「私のは借り物だけどね」

 

 浴衣を着よう!

 そう言い出したのはミズキである。

 

 もちろん浴衣なんてサーシャは持ってきていなかったのだけど、ミズキが持っていたものをサーシャは借りて着ることになった。

 身長的なところではややサーシャの方が瑞姫よりも小柄であるが大きな差はない。

 

 ミズキの浴衣だけどサーシャでも着られるものがあったのだ。

 

「まあ、何でも良いけど腹減ったから行こうぜ」

 

「そんなんじゃ女の子にモテないよ?」

 

「別にぃ〜」

 

 ユウトに褒められても嬉しかないけど興味なさげなのもなんとなくムカつくとミズキは目を細めた。

 

「俺はなぁ……年上のお姉さんが好きなんだよ。出るとこ出てて、お前とは……」

 

「それ以上口にしたら殺すよ?」

 

「ユウト君……それはダメだと思いますよ……」

 

 チラリとミズキの胸元をユウトが見て、ミズキは怖い目をして拳に魔力を集める。

 

「せっかく楽しい日なんだ、ケンカなんかしないでお祭り楽しもうぜ」

 

 このままだとミズキの浴衣がユウトの血でさらに赤く染まってしまうかもしれない。

 トモナリとマコトで二人をとりなしてお祭りの人混みの中に入っていく。

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