ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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守りたいこの景色4

「貴様!」

 

「えっ、なに?」

 

 ルビウスが食べ終えたチョコバナナの棒でミズキのことを指す。

 

「このちんちくりんと一緒にするでないわ!」

 

 今度はヒカリのことを棒で指した。

 

「本来の妾はそれはもう高貴で美しい姿を……」

 

「どりゃー!」

 

「ブニョ! 何をするこのちんちくりん!」

 

「ちんちくりん言うな!」

 

 ヒカリがルビウスに飛び蹴りをかました。

 トモナリが可愛いと言ってくれるのだからヒカリは今の姿にとても高い自己肯定感を持っている。

 

 そんな姿を馬鹿にされるとヒカリは怒っちゃうのである。

 加えて今のルビウスはヒカリの姿と大差ない。

 

 同じような姿をして何言ってるんだと思っている。

 むしろ同じような姿なら自分の方が上だとすら自負があるのだ。

 

「うにー!」

 

「ひょのひんひふりんふぁ〜!」

 

 互いに口を引っ張り合う低レベルな争いが繰り広げられる。

 時々勃発する争いであんまりうるさくならなきゃトモナリは止めるつもりもなく、困惑するみんなをよそにトモナリは焼きそばを取り出した。

 

 みんなもトモナリが止めないのならとヒカリとルビウスの争いを見守る。

 魔法やブレスは使わないようにと言いつけてあるので軽い小競り合いが続く。

 

 そんなものだから冷静になって眺めているとミニ竜同士の争いは意外と可愛いのである。

 

「あっ……」

 

「始まった」

 

 そんなことをしている間にボーンと音がした。

 花火が始まったのである。

 

「綺麗ですね」

 

「ああ、今じゃ花火をできるところも少なくなったからな」

 

 モンスターの影響で飛行機すら飛ばすのが大変になった。

 花火もモンスターを切りつけてしまうかもしれないと今では行うところも少なくなった。

 

 事前に魔物がいないことを確認して警護を行ってくれるギルドがいて安全に行えるのだ。

 トモナリの町においては大型ギルドが拠点を構えていて、その大型ギルドが花火大会に協賛しているから行えていた。

 

「ほらルビウス。焼きそばだ」

 

「本当の妾はもっとすごいのに……」

 

 ヒカリとルビウスの争いも花火が始まって終わった。

 トモナリが焼きそばを渡してやるとブツクサと文句を言いながらも焼きそばを食べ始める。

 

「綺麗なのだ……」

 

「すごいだろ?」

 

 花火も進化している。

 魔法を混ぜ込んで良い鮮やかに、より複雑な形も再現できるようになった。

 

「今度は守りたいな……」

 

 ゲートの出現が加速して、試練ゲートの攻略に手が回らなくなってくるとこんな花火大会もやっている余裕は無くなっていった。

 人々の心が安らぎ、癒しになるようなイベントは消えていき、ただ覚醒者たちの成功を祈ることしか一般人にはできないような時が来る。

 

 でも今度はこうした景色も守りたいとトモナリは思った。

 できるなら時として苦痛を忘れられる安らぎを得られるような世界のままでいてほしいと思うのだ。

 

「トモナリ」

 

「なんだ?」

 

「ちょこばなな食べたいのだ」

 

「ふふ、分かった」

 

 トモナリの膝に座ったヒカリの頭を撫でてチョコバナナをインベントリの中から出してやった。

 

 ーーーーー

 

「おい! こんなところで何をしてる!」

 

 花火大会も終わった。

 少しの余韻に浸ってトモナリたちは家に帰ることにした。

 

 廃校から出てきたところで人に見つかった。

 懐中電灯でトモナリのことを照らした男は警察官のように見えてミズキたちは焦った顔をする。

 

「忍び込んでました!」

 

「ト、トモナリ君!?」

 

 はっきりと白状するトモナリにコウは目を白黒させる。

 事前に言っていた上手い言い訳はどこへいったのだと驚いてしまう。

 

「……いけないことなのは分かってんだろうな?」

 

「ちょっとぐらいいいじゃないですか」

 

「ふぅ……久々に顔見せたと思ったらとんだ悪ガキになってるもんだな」

 

「……知り合い?」

 

 警察官が険しい顔をしていたのも一瞬で、すぐに呆れたような半笑いの顔をした。

 トモナリのことを知っているような口ぶりだ。

 

「ああ、顔見知りなんだ」

 

「花火見てたのか。昔からここはよく見えるって評判だもんな。子供はさっさと帰れ。見逃してやる」

 

 相手の警察官はトモナリが朝のランニングをしていた時によく挨拶をしていた人の一人だった。

 学校に行っていなかったトモナリのことを気にかけてくれていた人で、アカデミーに行くのに家を出ることを伝えたら良かったなと優しい目をしてくれていた。

 

「友達できたんだな。悪友みたいだが」

 

「友達できました。悪い友達たくさん」

 

「はははっ! 先日のゲートもお前がやったんだって? 体格もがっしりしてきてる……頑張ってるようだな」

 

 警察官のおじさんは優しく笑う。

 

「もっと頑張りますよ」

 

「そうか……あんまり無茶はするな。だけど若いうちの無茶は少しぐらいやっとくもんだからな」

 

 次やったら逮捕だぞ。

 そんな冗談をもらってトモナリたちは廃校から出てミズキの家に帰ったのだった。

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