ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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覚醒1

 テッサイに弟子入りしてトモナリの生活にも変化があった。

 朝は少しゆっくりとゆかりと過ごし、ゆかりが会社に行ったらトモナリはランニングして道場に向かった。

 

 テッサイの指導の下で体づくりをしたり剣を習ったりしてお昼はそのままテッサイのところでお昼もいただくことになった。

 そして午後は一応勉強ということになっている。

 

 でも回帰前のこの時期は普通に学校で学んでいたので少し復習すれば難しいことは何もなく、勉強の頻度を落としてまた体を鍛えたりしていた。

 

「なんの変哲もないように見えるけれど今この世界がどうなっているのか知ってるか?」

 

 たまにはと思って少し高くなっているところまでランニングしてきた。

 見下ろす町並みは平和そのものでなんの危険もないように見えるけれど、これが仮初のものであるとトモナリは知っている。

 

「ううん、知らない」

 

 周りに人がいないことを確認してヒカリはリュックから顔を出した。

 そして肩に頭を置くようにして同じく街並みを見下ろす。

 

「今この世界には危機が迫ってるんだ」

 

「危機?」

 

「そうだ。始まりは天がもたらした地獄の始まりと呼ばれる出来事だった」

 

 トモナリは街を見下ろすのをやめてゆっくりと坂を下り始めた。

 

「ある時全世界、全ての人の頭の中に声が響いた」

 

 “99個のゲートをクリアせよ。さすれば滅亡を避けられん”

 

 言葉の意味が理解できない人類だったがすぐに言葉の意味を理解した。

 不思議なゲートが現れて、その中から異形の化け物が出てきて暴れた。

 

 ただ希望も見えた。

 モンスターを倒した人が覚醒したのである。

 

 モンスターと戦える力が目覚めて、スキルという力を与えられて人類はモンスターと戦い始めた。

 今では最初に言われた99個のゲートのことを試練のゲートと呼んでいる。

 

「細かく言えば色々あったけど今では覚醒者が増えてモンスターと戦って平和を取り戻したんだ」

 

「へぇ……」

 

「それでもまだ世界中にゲートは残ってる。しかも99個に含まれないゲートまで発生したりと大変なんだ」

 

 だから仮初の平和であるとトモナリは言う。

 これから99個の試練のゲートが次々と出現し始めて人類は段々と追い詰められていく。

 

「そして最後に現れたのがお前なんだよ」

 

「僕?」

 

「そうだよ」

 

 試練のゲートはクリアせずとも次のものが現れて、やがてモンスターが外に溢れ出した。

 試練のゲートの中で99個目、最後のゲートから現れたのが邪竜であるヒカリだった。

 

「……そういや、99個目のゲートはどうなるんだろうな」

 

 99個目のゲートのボスがヒカリだった。

 正確には人類は79個のゲートまでしかクリアできず、99個目のゲートは中に入ったこともないのでヒカリがラスボスだったのかは不明である。

 

 しかしあの強さと状況を見るにヒカリが最後の敵だったのは間違いないはずであると誰もが信じていて、邪竜を倒せばと全力で挑んだものだった。

 でも今ヒカリはトモナリと一緒にいる。

 

 そうなると99個目のゲートはどうなるのか。

 ヒカリと同じ邪竜がまた生まれるのか、あるいはまた別のモンスターがボスになるのか。

 

「まあどうでもいいか」

 

 そもそもどうにかしてそこまで行かねば確認もできない。

 今回はちゃんと試練のゲートをクリアしていきたいものである。

 

「そのためにも準備しなきゃいけないことがある」

 

「何やるんだ?」

 

「ふふ……まずは覚醒だな」

 

 ーーーーー

 

 トモナリは朝のランニングをしていた。

 

「おはよう、いつもより早いんじゃないかい?」

 

「おはようございます。今日はちょっと用事があって」

 

 走っているのはいつものルートで、毎日走るものだからあいさつに声をかけてくるような人も何人かいたりする。

 ただ今日いつもと違うのは走っている時間が早いということである。

 

 いつもはゆかりが仕事に行った後にトモナリとヒカリも家を出るのだが、今日はゆかりよりも早くに家を出た。

 

「上手く借りられたな」

 

 トモナリは走るペースを落としてのんびりと歩く。

 いつものジャージにヒカリが入ったリュックスタイルであるのだが手に木刀を持っている。

 

 不思議がって聞いてくる人もいたが剣道習ってるんですよと普通に答えるとそれで納得してもらえた。

 木刀の出どころはもちろんテッサイである。

 

 素振りしたいから貸してくれというと殊勝なことだと言って木刀を渡してくれた。

 

「さてと、忍び込むか」

 

「んー? ここが目的地?」

 

「そっ」

 

「おっきー家だねー」

 

「家じゃないぞ。これは学校っていうんだ」

 

 トモナリが立ち止まったのは小学校の前だった。

 しかし小学校は昼間にも関わらず門が閉じられ、あるはずの活気がなく校舎の中は暗い。

 

 それもそのはずでトモナリがいる小学校は現在廃校となっていて校舎は利用されていないからである。

 数年前に近所にもう一つある小学校と合併になってそれから使われていない。

 

 まだまだ知識不足のヒカリから見ると小学校はとても大きな家に見えた。

 

「よいしょっと……」

 

 門は閉じているが小学校の門だからそんなに立派なものでもない。

 最近鍛えているトモナリはひょいと壁を蹴って高く飛び上がると門を飛び越えた。

 

「くだらないイタズラする奴もいるんだな」

 

 割と綺麗に見える校舎だが段ボールを窓に貼り付けてあるところもある。

 忍び込んで石でも投げつけたのだろう。

 

「よしっと……一回出てくれ」

 

「ほいほーい」

 

 小学校の入り口でリュックを下ろす。

 廃校に人はいない。

 

 ヒカリはリュックから飛び出すと翼を広げてグーっと体を伸ばす。

 トモナリはリュックの中に手を突っ込むとプラスチックのボトルを取り出した。

 

 中には透明な水が並々と入っている。

 ボトルの蓋を開けると入り口に水をぶちまけていく。

 

「しょっぱ」

 

「こらこら汚いぞ」

 

 床にまかれた水を舐めてヒカリがべっと舌を出す。

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