ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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覚醒2

 一通り入り口に水をまくと土足のまま校舎の中に入っていく。

 古い感じはあるけれどまだ使えそうな校舎である。

 

 校舎がダメになったからではなく児童数の減少によって学校を合併することになったので廃校となったのだからまだ使えて当然である。

 イベントに使うとか貸し出すとかいくつかのアイデアはあったようだけどどれも実現しないまま放置されている。

 

「……にしたって分かんないよな」

 

「何探してるのだ?」

 

 誰もいない校舎の中でヒカリはリュックから体を出してトモナリの頭に自分の頭を乗せている。

 校舎の中を歩き回っているトモナリは小さくため息をついた。

 

 何かを探しているようだけど何を探しているのだろうかとヒカリは疑問に思っていた。

 

「ゲートを探してるんだけど……出てこなきゃ分かんないしな」

 

 トモナリが探していたのはゲートだった。

 

「ゲートってなんなのだ?」

 

「そんなことも知らない……まあ知らなきゃ知らないか」

 

 今の世界においてゲートとは常識であるがトモナリにとっての常識をヒカリにそのまま当てはめるのは酷だろう。

 

「ゲートってのはな、異世界に繋がる不思議な入り口のことなんだ。どうやってゲートができるのかは分からないけれどある時急に現れて、中からモンスターが出てきたりするんだ」

 

「じゃあ僕もゲートってところから出てきたのか?」

 

「覚えてないのか?」

 

「……あんまりあの時のこと記憶にないんだ」

 

「そっか。多分ゲートから出てきたと思うけどそれを見たやつはいないからな」

 

 今回ヒカリは卵から出てきた。

 

「そんでゲートも俺たちがクリアしなきゃならない99個の試練ゲートと関係のないモンスターゲートがあるんだ。今回探してるのはモンスターゲートの方」

 

「ここにあるのか?」

 

「あるってか、出るはずなんだ。記憶ではな」

 

 この時期の記憶はトモナリの中で遠い。

 いじめられていた時期で思い出したくないことが多いせいか記憶が薄いのだ。

 

 トモナリの日常のせいだけでなくトモナリの周りでは平和で記憶に残るような出来事も少なかった。

 ただそんな中でも覚えていることもある。

 

「今日この学校にゲートが出現するんだ」

 

 モンスターゲートの出現は平和だった日常に大きな衝撃を与えた。

 トモナリが直接被害に遭ったものではなかったが朝の通勤通学の時間を直撃したモンスターの襲撃は意外と大きな混乱を生んで被害をもたらした。

 

 おかげで学校は数日休みになったとか小さい影響はあったが、近所のスーパーがゲートの影響で閉店してしまったのは生活に影響を与える被害だったといえる。

 当時はどこでゲートが発生したのかわからなくて対応が遅れてしまったけれど廃校として誰も立ち入らなかったここがゲートの発生場所だったのである。

 

「ゲートで何をするんだ?」

 

「まあちょちょいとモンスターを倒して覚醒したら逃げるんだ」

 

 99個のゲートをクリアするため、モンスターに対抗するために人類には力が与えられた。

 魔力、スキルなどこれまでになかった力を引き出す最初の一歩が覚醒である。

 

 やり方は簡単でモンスターを倒せばいい。

 どんな方法、どんなモンスターかは問わず、モンスターを倒せれば覚醒することができる。

 

 途中まで人類は望む人だけに覚醒を促していた。

 覚醒した人は覚醒者と呼ばれて自分の能力を使ってモンスターと戦いゲートを攻略した。

 

 しかし事態が差し迫ってくるとなんの能力も持たない人を守ってもいられなくなった。

 そして全人類総覚醒者時代が訪れる。

 

 トモナリはその前から覚醒していたが覚醒者となった時期が遅かったことは否めない。

 今回は計画がある。

 

 そのためには早めに覚醒しておきたいと考えていた。

 しかし覚醒も楽じゃない。

 

 そこらへんをノラモンスターが歩いているはずもないし、覚醒前の一般人の状態でモンスターを倒すのは困難である。

 基本的には覚醒者の大人がついてモンスターを倒させてあげるお膳立てをしてもらって初めて覚醒できる人がほとんどになる。

 

 そこまで待っていられない。

 だからトモナリは記憶の中にあったモンスターゲートを利用しようと計画していたのである。

 

「出るまで待つっきゃないか」

 

 しかし学校は思いの外広い。

 学校の中でゲートが発生したという話は聞いたけれど学校の中のどこでゲートが発生したかなんて聞いた覚えはない。

 

 多分そんな情報はニュースとか新聞とかでも出ていなかったとトモナリは思う。

 わざわざ教室の位置まで報道されないので知らなくても仕方ない。

 

 ただどこにゲートが出るのか分からない以上はゲートが出るまで待つしかない。

 

「しゃーねえ」

 

 トモナリは適当な教室に入った。

 そこにはまだ机と椅子が残されていて生徒が通っていた頃の面影を残している。

 

 適当な椅子の埃を払って座るとリュックの中から弁当箱を取り出した。

 

「ほれ」

 

「ありがと」

 

 朝ご飯を適当に詰め込んできたもので、ウィンナーと卵焼き、それにおにぎりである。

 いつもの朝ごはんは目玉焼きなのだけどお弁当用に卵焼きをゆかりが焼いてくれたのだ。

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