ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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ギルドのお仕事4

「まだまだ!」

 

 トモナリはルビウスに炎をまとわせる。

 切られなくとも掠るだけで焼けてしまいそうなトモナリの剣をイヌサワは軽く防ぐ。

 

「ふっ、手が痺れてきたよ!」

 

 トモナリの攻撃は苛烈で、イヌサワも少しずつ楽しくなってきていた。

 

「それじゃあそろそろ……」

 

「僕もいるのだー!」

 

 トモナリの力や素早さは分かってきた。

 反撃に出ようとイヌサワが動こうとした瞬間ヒカリが襲いかかった。

 

 ヒカリはずっと上から戦いを見下ろしていた。

 そして機会を待っていた。

 

 イヌサワの意識からヒカリの存在が消えて油断をするその時を狙って息を潜めていたのである。

 ヒカリはイヌサワの動きが変わりそうなことをいち早く察した。

 

 防御から攻撃にリズムが変わる一瞬の隙をついて急降下して爪を振るった。

 

「くっ! うっ!」

 

「おー、一撃加えたか」

 

 ヒカリの爪をギリギリかわしたイヌサワにトモナリが追撃を叩き込む。

 炎をまとったルビウスはなんとかガードしたけれど、続くトモナリの殴打を防ぐことはできずに脇腹を殴られた。

 

 周りの人たちはトモナリが一撃入れたことに驚きを隠せないでいる。

 

「恥ずかしいところ見せちゃったね」

 

「うっ!?」

 

「ぶぎゃっ!?」

 

 さらなる追撃をしようとしたトモナリは急に動けなくなった。

 強い力で上から押さえつけられているようでヒカリも床に墜落してしまった。

 

「まさかこれを使うことになるとはね」

 

「しょうがないだろ? 君が思ったよりも強かったんだ」

 

 急に体が動かなくなった理由はイヌサワが原因であった。

 

「重力操作……まあ僕の代名詞だしね。使わないのも物足りないだろ?」

 

 イヌサワは特殊なスキルで有名になった。

 重力操作という物の重力をコントロールするスキルを保有していて、今のところトモナリの魂の契約と同じようなイヌサワ唯一無二のスキルなのである。

 

「ふぬぬ……」

 

「くっ……」

 

「ふふ、抵抗するかい」

 

 トモナリは体に魔力をみなぎらせて重たくなった体を無理やり動かす。

 ヒカリも同じく重力に逆らって体を起こす。

 

「こちらから行こうか!」

 

 大きな重力がかかって速度が大きく制限されている。

 そもそも差があるのに今の状態で自らイヌサワに飛び込むことはできない。

 

 ただ重力操作もタダで発動させられるものではなく魔力を消費する。

 能力値がまだまだのトモナリの方が消耗は激しいものの、睨み合っていてもただただ魔力を消費するだけなのでイヌサワから動く。

 

「グッ!」

 

 振り下ろされた剣をトモナリは受け止める。

 ルビウスを持ち上げてガードするだけなのに剣や腕が重たくて仕方がない。

 

「まだまだ!」

 

 勝てないことは分かっている。

 けれども諦めない。

 

 諦めることは死んだ後で十分だ。

 

「反撃までするのか。今時珍しく気合の入った覚醒者だな」

 

 シノハラはカラカラと笑う。

 諦めないだけでも大したものなのに反撃してみせるなんてサーシャといいやるものだと感心してしまう。

 

「食らうのだ!」

 

「うわっち!」

 

 ヒカリも重たい体を引きずってイヌサワの足元まで移動した。

 真っ赤に燃える火炎のブレスが飛び出してきてイヌサワは慌てて飛びのいた。

 

「今だ!」

 

「行くのだー!」

 

 体にかかっていた重力が元に戻った。

 トモナリは最後のチャンスだとイヌサワに向かって走り出す。

 

「さて……君が越えるべき壁を見せてあげようか」

 

 しかし一瞬早くイヌサワが重力操作を発動させた。

 

「グゥッ!?」

 

 視界が歪んで見えるほどの重力がトモナリとヒカリにかかった。

 

「耐える……のか」

 

 イガラシは腕を組んだまま驚きで目を見開いた。

 重力がかかってトモナリの足元の床が割れるけれど、トモナリは歯を食いしばって倒れるのを耐えた。

 

「根性はすでにレベル100ということかな?」

 

「ぐぬぬぬぬ……」

 

 トモナリが諦めないならヒカリも諦めない。

 二人して重力に抗う。

 

 それでいながらトモナリの目はしっかりと相手であるイヌサワから外れることもない。

 

「……じゃあ」

 

「そこまでだ!」

 

 スッと手を伸ばしたイヌサワをイガラシが止めた。

 もう少し重力をかけてやろうと思ったのだが、イガラシはそれは危険だと判断した。

 

「はぁっ! はぁ……はぁ……」

 

 重力が解かれてトモナリは床にへたり込む。

 全身汗だくになっていて耐えていた体の骨が軋んでいるような思いだった。

 

「その価値はあったな……」

 

 トモナリは自分のステータスを確認する。

 

『力:84

 素早さ:88

 体力:83

 魔力:79

 器用さ:87

 運:58』

 

 力、素早さ、体力、器用さの能力値が一つずつ上がった。

 諦めないという意思もあったのだけど、過酷な環境に耐え抜くことで能力値が上がることもあることをトモナリは知っていた。

 

 最近トレーニングでは能力値が上がらなくなっていたのでイヌサワの重力下で耐えて全力を尽くすことで上がるのではないかと思っていたところがあったのだ。

 まさしく狙い通り。

 

 いっぺんに複数の能力値が上がるなんてレベルアップ以外では久しぶりのことである。

 

「全く……無茶なことをするね、君は」

 

「もうちょっと頑張れば倒せると思ったんですけどね」

 

 イヌサワが手を差し出してきた。

 トモナリはイヌサワの手を取って立ち上がる。

 

「それだけ言えるなら大丈夫そうだね」

 

 トモナリの軽口にイヌサワは笑顔を浮かべる。

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