ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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トモナリの狙い3

「僕は料理が苦手でね。いわゆるバカ舌ってやつなんだ」

 

 トモナリが秘密を打ち明けてもイヌサワの態度は変わらない。

 

「なんでも美味しいんだ。美味しいものは美味しいよ? でも他の人が不味いものでも僕には割と美味しかったりするんだ。だから料理は得意じゃない。他の人にとって美味しいところってやつが分からないのさ」

 

「まあ自分で作って食べる分にはいいんじゃないですか?」

 

「そうだね。でも塩入れ過ぎたりしてね。体に悪いって怒られて……今だと自分で作る時はレシピ通りに作るようにしてるよ」

 

 今は食堂があるから自分で作ることは少ないし、ゲートの攻略などで誰かが作らねばならない時はイヌサワに任せる人はいない。

 

「イガラシさん、いますか?」

 

 ギルド長であるイガラシが使う社長室の前についた。

 イヌサワは軽くノックをしながら中に声をかける。

 

「この声はイヌサワか? 入れ」

 

「失礼しまーす」

 

 年は離れていそうなのにイヌサワとイガラシの関係は割とフランクだ。

 これぐらいのゆるさは良いなと思うところである。

 

「むっ? アイゼン君か。不思議な組み合わせ……というわけでもないが二人してどうした?」

 

 研修に来ている四人の担当はイヌサワなので、トモナリと一緒にいても不思議ではない。

 特にイヌサワはアカデミーの後輩であり同性のトモナリのことを目にかけているのを知っていたから仲良くなったのだなと少し嬉しさすら覚えている。

 

「少しお話があるんです」

 

「話だと?」

 

「先日見つけられた新しいゲートについてです」

 

「……ふむ、話を聞こう」

 

 相変わらずイヌサワの態度は軽めだが、それでもサングラスの奥の目の真剣さにイガラシは気づいた。

 

「君から話してくれるかな?」

 

「分かりました」

 

 ーーーーー

 

「先発隊全滅の可能性か……」

 

 トモナリの話を聞いてイガラシは椅子の背もたれに体を預けた。

 リスクとしては決してあり得ない話ではない。

 

 だがCクラスゲートは五十嵐ギルドにとって強く警戒する対象ではないことは確かだった。

 寝耳に水の警告であり、にわかには信じがたくある。

 

 先発の攻略隊だからと軽く考えて編成するはずもなく、十分な戦力で送り出すつもりであった。

 

「どこまで予知できる?」

 

「意図的な能力ではないので見たまんまを伝えるのみです」

 

 イガラシもトモナリの未来予知について疑問に思わず受け入れてくれた。

 イヌサワと同じようにメリットデメリットなどを勘案して嘘をつく必要がないと総合的に判断していた。

 

「ゲート中の様子は分かるか?」

 

「ある程度は。それよりも重要なことはこのゲートが二重ゲートの可能性があるということです」

 

「二重ゲート……なるほどな。ならば全滅する未来が見えてもおかしくはない」

 

 二重ゲートとは特殊なゲートの一つである。

 ゲートの中にゲートが発生するゲートインゲート、あるいはゲートの難易度が途中で変わるゲート変容など中において外から観測できない不測の事態が時として起こる。

 

 事象として入ったゲートとは別のゲートを攻略するようなので二重ゲートと呼ばれているのだ。

 これまでに起きた二重ゲートでは全てゲートの難易度が跳ね上がっている。

 

 二重ゲートであったと知らずに挑んだ人たちはほとんどが帰ることはなかった。

 それぐらいに危険なゲートである。

 

 本来の難易度とかけ離れてしまうので全滅するのも当然と言える。

 新たなゲートもCクラスと表示されているが、二重ゲートとして難易度が上がればBやAクラスとなる。

 

 BクラスならともかくAクラスにまでなればCクラス相当の用意しかしていない攻略隊では厳しいだろう。

 そもそもAクラスゲートならばトモナリの言うように五十嵐ギルドの総力を上げて攻略せねば危険だ。

 

「ボスは分かるか?」

 

「……正確なことは何も」

 

 実はボスも分かっている。

 しかしあまり全てを話し過ぎて何かを疑われてもトモナリとしても今後やりにくくなってしまう。

 

「俺も連れて行ってもらえませんか?」

 

「なんだと?」

 

「いけばまた何か見える可能性はあります」

 

「しかし……」

 

「自分の身は自分で守ります。何か助けになれることがあるなら協力したいんです」

 

 実際トモナリはもう少し情報を持っている。

 Aクラスの危険がある二重ゲートならトモナリを連れていくことはかなりのリスクであるが、未来予知で何かの情報が分かるならトモナリを連れていくリスク以上のものを得られるかもしれないとイガラシは悩む。

 

「…………少し考えさせてくれ」

 

 トモナリの話を大きく疑ってはいない。

 しかし話を聞いて即断できるようなものでもない。

 

「このことはみんなに話しても?」

 

「うーん……覚醒者協会からの情報ってことにしてくれませんか?」

 

 別に未来予知のことがバレてもいいのだけど覚醒者協会は一応秘密にしてくれている。

 トモナリがベラベラと公開することもできない。

 

 今回のことは未来予知能力者による情報提供が覚醒者協会から寄せられたということにしてもらえばいいかなと思った。

 通常はそうした形でトモナリの偽未来予知情報は活用されている。

 

「分かった。話してくれてありがとう。ゲートについては慎重に当たることにしよう」

 

 ちょっと研修に来た程度のトモナリの話をこうして聞いてくれるだけでもありがたい。

 これなら未来は変わるかもしれないなとトモナリは思ったのだった。

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