ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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本当の竜6

「何が起きているのだ……」

 

 天井の光る模様の真ん中に魔力が集まり、凝縮されてまるで槍のように細長い形で撃ち出されてメガサウルスの体を貫いた。

 メガサウルスが苦痛の叫び声を上げる。

 

 青白く光る抑制装置から光がメガサウルスの背中に刺さっているモリに伸びていく。

 

「何が起きているのか知らないけれどチャンスだ!」

 

 敵の攻撃ではなくトモナリが何かしたのだとイガラシはすぐに察した。

 

「刃が通る! これなら……」

 

 ミヤノがメガサウルスの横から斬りつけた。

 まだ抑制装置が何なのか分かっていないミヤノは警戒しながらの攻撃だった。

 

 手を抜いてはいないがいつでも下がれるようにしていた一撃がメガサウルスの体を斬り裂いて、メガサウルスに起きた反応が自分たちに有利なものだとミヤノは気づく。

 

『アドシュタイトが決戦の誓いを発動させました!

 指名対象種族は“ドラゴン”です。

 指名対象種族の能力が向上します。

 指名対象種族以外の能力が低下します。

 敵性指名対象種族が多いほど効果が低下します。』

 

 みんなの前に表示が現れた。

 

「くっ……」

 

 急に体が重たくなったように感じてミヤノは表情を曇らせた。

 

「モンスターの広域デバフスキルだ! みんな自身の変化に気をつけるんだ!」

 

 モンスターの能力や変化、スキルの一部は時としてステータスの表示のように目の前に現れて、アナウンスされることがある。

 表示の内容と体が重たく感じられる変化から、デバフ系のスキルを発動させたのだと周りに注意を促す。

 

『アドシュタイトが大地の束縛を発動させました!

 行動を制限します。』

 

「なっ……!」

 

「チッ! うりゃああああっ!」

 

 メガサウルスが尻尾を振り下ろした。

 まとめて複数人が攻撃範囲に入っていて、それぞれ尻尾を避けようとした。

 

 しかし何人かは動けなかった。

 仲間の危機にイサキは自ら尻尾の下に入り込んで剣を振り上げる。

 

 巨大な尻尾とイサキの剣がぶつかる。

 剣が尻尾にめり込むが、尻尾の破壊力にイサキの足元も地面にめり込む。

 

「こんにゃ……ろおおおおっ!」

 

 イサキは全力でメガサウルスの尻尾を押し返した。

 

「……ジャンプです!」

 

「なに?」

 

「行動の制限はジャンプにかけられています!」

 

 逃げられた者と逃げられなかった者がいる。

 何の違いがあったのか。

 

 それが分からなければ危険であるとミヤノは原因を考えた。

 全員に同じくスキルによる行動の制限がかけられたはずなのに、動けなかった理由があるはずなのだ。

 

 考えながら動こうとしたミヤノも自分が動けない瞬間があることに気づいた。

 その行動はジャンプであった。

 

 高く飛びあがろうとすると足が地面から離れずに動きが止まってしまうのである。

 

「ジャンプか……みんな飛び上がらないようにするんだ!」

 

「危ない!」

 

 地面スレスレで低く滑走するように飛ぶなら大丈夫だが、ある程度以上の高さになるようにジャンプしようとすると足が地面から離れなくなる。

 大きく跳躍して回避するのも普通のことなので、飛び上がるなと言われても咄嗟の時には飛んでしまおうとして動きが止まる。

 

 また一人、思わずジャンプして飛んでくる岩をかわそうとして別の覚醒者に助けられた。

 

「結構面倒だね」

 

 普段の習慣というのはなかなか抜けない。

 ジャンプするなと言われても、普段からジャンプするような人は飛んで動いてしまう。

 

「それに攻撃面でも厄介だ」

 

 相手はデカい。

 頭は到底手の届かない位置にある。

 

 飛び上がらずに有効打を狙う手段はかなり限られてしまう。

 

「どりゃああああっ!」

 

「あれは……ヒカリ!?」

 

 何かでメガサウルスの頭が弾け飛んだ。

 黒い塊が飛んできたと思ったらヒカリだった。

 

「わーはっはっはっ!」

 

 ヒカリは腰に手を当て胸を張る。

 

「これが僕の本当の力なのだ! さあ、トモナリもいくのだ!」

 

「やる気だな。俺も一発!」

 

 怒りのこもった目をしてヒカリの方を振り返ったメガサウルスが見たのは、拳を振りかぶるトモナリの姿であった。

 

「……あれがトモナリ君の切り札か」

 

「くらえ!」

 

 トモナリは思い切りメガサウルスの鼻先を殴りつけた。

 

 ーーーーー

 

『アドシュタイトが決戦の誓いを発動させました!

 指名対象種族は“ドラゴン”です。

 指名対象種族の能力が向上します。

 指名対象種族以外の能力が低下します。

 敵性指名対象種族が多いほど効果が低下します。』

 

 抑制装置がメガサウルスを貫いてトモナリとヒカリの耳鳴りも治った。

 トモナリが頭を振って耳鳴りの影響を振り払っていると目の前に表示が現れた。

 

「モンスターのスキルか」

 

 回帰前の経験があるトモナリは表示が何のものなのかすぐに分かった。

 

「ふおおおおっ! トモナリ!」

 

「ヒ、ヒカリ?」

 

「何だか力が溢れてくるのだ!」

 

 ヒカリから魔力が溢れている。

 

「今ならフウカに捕まえられても逃げられるのだ……」

 

 ヒカリはキリッとした顔をしてトモナリのことを見る。

 

「そういえば俺も少し……」

 

 ヒカリほどではないにしてもトモナリも体の軽さを感じていた。

 

「これのせいか」

 

 トモナリは表示に目を向ける。

 スキルの中身をざっくりと読んだ感じでは、指名対象種族となっているドラゴンにはバフがついて強化され、ドラゴン以外の種族にはデバフがつくようである。

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