ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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学生覚醒者世界交流戦4

「大丈夫ですか!」

 

 事故を起こした車に近づいて中の人を確認する。

 運転席に座っている人は事故の衝撃で気を失っているのか反応はない。

 

「ふんっ!」

 

 開かなくなっている車の扉をタケルが無理矢理開ける。

 トモナリとカエデで車から人を引っ張り出す。

 

 その間にも、みんなは他に事故で動けない人や逃げ遅れた人はいないか周りをチェックする。

 

「他に怪我人はいません!」

 

 いくつか事故はあったようだが、どの車も中は空になっていた。

 怪我はしている可能性はあるけれど、少なくとも動いて逃げられるだけは無事だったのだろう。

 

 一通り周りに人がいないことを確認したところで警察が到着した。

 パトカーから降りてきたイカつい警察官にはカエデが対応する。

 

 ヒカリを見てちょっとだけざわついていたけれど、カエデが上手く説明してくれた。

 

「あとは覚醒者チームが来てくれるそうだ」

 

 日本では覚醒者ギルドが都市部に現れた突発的なゲートに対応する。

 覚醒者協会が対応する場合もあるけれど、近くの覚醒者ギルドに声をかけたり、危険がないなら都市部でも参加ギルドを募ったりする。

 

 アメリカでも多くの場合、覚醒者ギルドがゲートの攻略に当たる。

 けれど緊急性が高い場合は警察のように覚醒者チームが公的な機関として存在していて、ゲートの対処に当たるのであった。

 

 今回都市部の交差点ということでゲートを早急に攻略する必要があるので、公的な覚醒者チームが来てくれるという話だった。

 

「‘ゲートが……’」

 

 大きな車が到着して覚醒者と思わしき人たちが降りてきた。

 ちょうどそのタイミングでゲートが大きく揺らいだ。

 

 モンスターが出てくるのかと警戒する。

 

「‘人……だと?’」

 

 ゲートから出てきたのは人であった。

 

「そういえば入っていった連中がいたな」

 

 騒がしい状況に忘れていたが、ゲートに入った覚醒者がいたことを思い出した。

 

「ゲートが消える……攻略したのか」

 

 十名ほどの覚醒者が出てきてゲートが消えていく。

 入っていった連中がゲートを攻略して出てきたようだ。

 

「‘彼らは君たちの仲間か?’」

 

「‘いいえ、違います’」

 

 黒髪で黒い瞳の見た目は圭たちと似ていて、アメリカの覚醒者には同じに見えた。

 

「‘……彼女たちは中国人です’」

 

 しかしゲートから出てきた覚醒者たちは日本人ではない。

 

「あー、あいつは……」

 

「先輩、知ってるんですか?」

 

 ゲートから出てきた覚醒者の中で先頭に立つ女の子を見て、タケルが顔をしかめた。

 

「去年の交流戦で中国が優勝したって言ったろ? 俺たちは一年として参加していたわけだが、その時中国の代表として力を見せつけてくれたのがあの女だよ」

 

「…………ワン・メイリンですね」

 

「ん? お前も知ってるのか?」

 

「いえ、思い出したんです」

 

 傭兵女王ワン・メイリンの名前は回帰前に有名であった。

 金さえ積まれればどんな人の味方にもなり、金がなくなればどんな人も縁を繋いではいられない。

 

 泣きぼくろの麗人という見た目に反して実力は相当高く、冷酷で相手を殺すこともいとわないヤバい覚醒者であった。

 最後には雇い主に捨て駒にされてメイリンは壮絶な最期を迎える。

 

 何で傭兵なんかやったのか、自分に見合う強い男を探していたなんて噂があったこともトモナリは思い出した。

 

「おっと……」

 

 見すぎていたためかメイリンと視線が合った。

 傭兵女王なんて呼ばれながらも麗人とも言われていただけはある。

 

「年近かったのか……」

 

 去年、今年と参加しているということはメイリンはトモナリの一つ上だろう。

 遠い存在の存在だと思っていたのに一つ上と同年代なことにトモナリは小さな驚きを覚えていた。

 

 覚醒者チームがメイリンたちに話を聞きにいく。

 やはりメイリンたちは中国の覚醒者で、交流戦に参加しに来てきたのであった。

 

 ゲートがあったから攻略した。

 そんなことを悪びれもなく告げたらしい。

 

 人助けといえば聞こえはいいが、ブレイキングゲートでもないのに他国で発生したゲートを他国の覚醒者が攻略するのは複雑な話となる。

 けれどもそれはトモナリたちと関係のことであり、トモナリたちは市民救出のお礼を言われて帰されることとなった。

 

「‘どうしたの、メイリン?’」

 

「‘面白そうな人がいた’」

 

「‘君たち話を聞いているのか?’」

 

「‘はいはい、聞いてますよ’」

 

 メイリンは立ち去るトモナリたちのことをじっと見つめていたのであった。

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