ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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ルドンアカデミー2

「‘交流戦は明日から始まる。しかし交流は今日からしてもいいだろう。食事の用意をしている。各々交流を深める時間にしてもらいたい’」

 

 今はまだそれぞれの国がそれぞれの国として活動している側面が大きい。

 しかしこれから先、試練ゲートの出現が加速すると国の枠など関係なく協力する時が来る。

 

 互いの実力を確かめ合うだけでなく、今のうちから交流しておくこともまた良いことだとトモナリも思う。

 

「‘その子はなんて言うんだい?’」

 

「‘本当にドラゴンなのか?’」

 

「‘可愛いね! 撫でてもいい?’」

 

「トモナリの奴、人気だなぁ」

 

「トモナリ君、っていうよりヒカリちゃんな気がするけどね」

 

 場所を移して交流のための食事会が始まった。

 食事会というが形式としては立食パーティーのような感じで、自由に動き回って食べながらも会話できるようになっている。

 

 食事会が始まってすぐにトモナリとヒカリは囲まれた。

 色々な国の人がトモナリとヒカリにワッと話しかけているのだ。

 

 みんなの目的はヒカリだ。

 物珍しい魔獣であるヒカリに興味を持っている。

 

「ぬぐぐ……」

 

 トモナリの頭の上に乗っかってヒカリは周りを警戒している。

 勝手に触ったら噛みついてやると周りのことを睨みつけていたが、それも逆効果でみんなは可愛いなと思っていた。

 

「‘いっぺんに話しかけるな。それと勝手に触ると怒るからやめてくれ’」

 

 こんなに囲まれるとは思っていなくてトモナリもギョッとしたけれど、とりあえず冷静さは保つ。

 

「‘なあ、本当にドラゴンなのか?’」

 

 どこから漏れたのか、ヒカリがドラゴンであることが広まっているようだ。

 最近トモナリも目立ってきているのでヒカリの存在も隠しきれない。

 

 ヒカリも隠れていないし、トモナリもヒカリは自由にしていてそんなに必死に隠すつもりもなかった。

 ドラゴンであることがバレていても特別驚きはない。

 

 むしろ交流戦として他国の優秀な覚醒者を警戒していたらトモナリとヒカリのことが上がってもおかしくない。

 

「‘ああ、こいつはドラゴンだよ’」

 

「‘すげー!’」

 

 ブラジルの覚醒者であるルーカスは目を輝かせてヒカリのことを見ている。

 

「‘なあなあなあ! ちょっと触らせてくれよ!’」

 

「イヤなのだ」

 

「‘な、なんでだよ……’」

 

「僕は今お肉が食べたいのだ!」

 

 ヒカリにとっては交流よりも肉がいい。

 そもそもトモナリ以外に撫でられることはあまり好きでもない。

 

 ただしチヤホヤされるのは好きである。

 

「‘ドラゴンちゃん’」

 

「む?」

 

「‘ほら、持ってきたよ!’」

 

 イタリアの覚醒者のソフィアがお皿に山盛りお肉を盛ってきた。

 

「‘これでいいかな?’」

 

「むむむむ……しょうがないのだ。ちょっとだけ撫でてよしなのだ!」

 

 肉の誘惑には抗えない。

 少し悩んだヒカリはテーブルの上に降り立った。

 

「‘はい、食べて’」

 

「にゅ?」

 

 ソフィアは切り分けられたステーキをフォークで突き刺すと、ヒカリの前に差し出した。

 ヒカリとしてはお皿を受け取って食べるつもりだったので驚いている。

 

「……パク!」

 

 ドラゴンのプライド、そんなものはなかった。

 分厚いステーキの前にヒカリはあっさりと陥落した。

 

「んまいのだ〜」

 

 アメリカ的な肉肉しいステーキはヒカリも大好きである。

 頬に手を当ててうっとりとするヒカリにみんなも見入っていた。

 

「‘甘いものはどうだ!’」

 

「‘こっちのも美味しいよ!’」

 

 いつの間にかヒカリは王様の如く料理を献上されて、食べさせてもらっている。

 

「まあ、ヒカリがいいならいいか」

 

 なんでこんなことになっているのだ、と思う。

 けれどもヒカリがそれでいいなら止めることもない。

 

 みんながヒカリの方に行ったのでトモナリにも余裕ができた。

 料理はかなり良いものを用意していくれているようなので、自分の何か食べようかとどんなものがあるのか見回す。

 

「‘これ美味しいよ’」

 

「‘ん? ありがとう……ええと、君は……’」

 

 トモナリの目の前にお皿が差し出された。

 控えめにいくつかの料理が乗せられていて、トモナリは普通に受け取ってしまった。

 

 誰が差し出したのか振り向くと金髪の青年が立っていて、穏やかな笑みを浮かべている。

 

「‘僕はアルケス。そしてこの子はキュリシーだ’」

 

 アルケスと名乗る青年の後ろには大きなオオカミがいる。

 四足で立っているだけで頭がトモナリと同じ高さもあるような、普通とは違うオオカミである。

 

「‘僕はテイマーなんだ。君と同じくね’」

 

 アルケスはテイマーであった。

 テイマーとは魔獣をスキルによって従えることができる特殊な職業で、世界でもテイマーの職業、あるいはテイムするスキルを持った人はごくわずかである。

 

 アルケスの後ろにいる大きなオオカミのキュリシーは、アルケスがテイムしたモンスターなのだ。

 トモナリの職業はドラゴンナイトであってテイマーではないものの、ドラゴンであるヒカリと繋がりを結ぶスキルを持っている。

 

 一種のテイマースキルだと言ってもいい。

 

「‘テイマーは少ないからね。君と話してみたかったんだ’」

 

 テイマーを職業としている人、あるいはテイムスキルを持っている人があまりいないので、アルケスはトモナリに興味を持っていた。

 だから話しかける機会を窺っていた。

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