ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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ルドンアカデミー3

「‘君の相棒は話せるんだね’」

 

 アルケスはみんなにお肉を食べさせてもらっているヒカリを見る。

 

「‘僕の相棒のキュリシーは話せないから羨ましいよ。それでも君の気持ちは分かってるよ’」

 

 キュリシーがアルケスの腕に頭をこすりつける。

 アルケスは笑顔を浮かべてキュリシーを撫でる。

 

「‘僕のスキルは獣系モンスターに効果があるんだ。こうして感情表現は豊かだけど、おしゃべりしてみたいっていう気持ちはあるんだ’」

 

 基本的にモンスターは話さない。

 人語を真似して騙そうとするものはいるけれども、それは会話にならない。

 

 一部で人語を理解して操るモンスターの存在もいるにはいるが、かなり貴重でかなり強力なモンスターだけである。

 ヒカリはドラゴンである。

 

 そういえば普通に話しているけれど、人語を理解するすごいモンスターになるのかもしれない。

 

「……待てよ?」

 

 トモナリはあることに気づいた。

 

「わっはっはっ! どれも美味しいのだ!」

 

 トモナリにはヒカリの声が日本語に聞こえている。

 だが周りの人に日本語が理解できる人は少ないだろう。

 

 けれど周りの人はヒカリの言葉を理解している。

 

「‘どうかしたのかい?’」

 

「‘……いや、なんでもない。話せるとなかなか面白いよ’」

 

 ふと疑問を感じた。

 もしかしたらヒカリは言葉をしゃべっていないのではないか。

 

 意思の疎通が取れているだけで言葉を話していないのではないかと思ったのである。

 そういえばヒカリと最初に会ったときも別に言葉は話していなかった。

 

「言葉が聞こえるようになったのは……スキルを手に入れてから」

 

 死にかけて、交感力というスキルを手に入れた瞬間にヒカリの声が聞こえるようになった。

 

「スキルが周りにも影響を及ぼしてる?」

 

 トモナリはスキルのおかげでヒカリの言葉が分かっている。

 とすると周りの人もスキルの影響でヒカリの言葉が分かっていることになる。

 

 魂の契約によってトモナリとヒカリには相互効果が発生している。

 イマイチ相互効果がなんなのか分からないところもあるが、交感力のスキルがなんらかの形でヒカリ、あるいは周りにも影響を与えているのかもしれない。

 

 交感力にはモンスターの好感を得られるという効果もある。

 モンスターであるヒカリが周りに受け入れられるのは交感力の影響がある可能性もあった。

 

「トモナリ!」

 

「わっぷ!」

 

 トモナリが考え事をしているとヒカリが飛んできてトモナリの顔面にしがみついた。

 お腹いっぱいでちょっとぽよんとしたお腹が顔に当たる。

 

「満足なのだ〜」

 

 ヒカリは嬉しそうな顔をして尻尾を振っている。

 

「‘君がヒカリ君だね’」

 

「むっ?」

 

「‘僕はアルケス、この子はキュリシー。よろしくね’」

 

「うむ、よろしくなのだ! ……むむむ?」

 

 キュリシーが牙を剥き出してうなり、険しい目をしてヒカリのことを見ている。

 ヒカリもそのことに気づいてキッとキュリシーを睨みつける。

 

「伏せ! なのだ!」

 

 スッとキュリシーの尻尾が下がったのを見てヒカリがパッと手を前に出した。

 するとキュリシーはおとなしくヒカリの言うことを聞いて床に伏せる。

 

「‘キュリシー?’」

 

 自分以外の相手の命令を聞くところなんて見たことがないとアルケスは驚く。

 

「ふはははっ! そんな目をするからなのだ!」

 

 キュリシーはすっかりしおらしくなってクゥーンと鳴いた。

 

「‘どうやら君の相棒の方が強いみたいだね’」

 

 アルケスは少し困ったように笑う。

 幼なくともドラゴンはドラゴンである。

 

 ドラゴンはモンスターの中でも最上級の種類であるといわれていた。

 キュリシーは別のモンスターであるヒカリに敵意を表したものの、格の違いを感じて押されてしまったのである。

 

「お前も友達と一緒なのだな」

 

 得意げなヒカリは床に伏せるキュリシーの背中に乗っかる。

 

「んん? もちろんである!」

 

「ヒカリ? どうしたんだ? まさか……話してるのか?」

 

 ヒカリがキュリシーの顔に頭を近づけて何かを話している。

 独り言かと思ったけれど、なんだか会話しているような雰囲気があってトモナリは目を丸くする。

 

「うむ、話してるのだ!」

 

「‘キュリシーの言葉が分かるのかい?’」

 

「にゅ? 分かるのだ」

 

 アルケスに詰め寄られてヒカリは不思議そうな顔をする。

 特にすごいことだとも思っていないようである。

 

「何を話してたんだ?」

 

「えっ、自分が一番相棒のことが好き……にょわー! 何するのだー!」

 

 キュリシーがハッとした顔をしてヒカリを押し倒す。

 

「‘そんなことを……’」

 

 ヒカリの口を塞ごうとしたのかもしれないが、時すでに遅しである。

 アルケスはキュリシーを止めることもなく、嬉しさに口元が緩んでいる。

 

「やめるのだ!」

 

 顔を舐めまわされていたヒカリが飛び上がって、キュリシーから逃げてトモナリの胸にしがみつく。

 

「‘ふふ、キュリシー’」

 

 アルケスが満面の笑みで近づくとキュリシーは床に伏せて恥ずかしそうに前足で顔を隠した。

 

「‘ありがと、ヒカリ君、アイゼン君。おかげで良いものが知れたよ’」

 

 アルケスはキュリシーの背中に顔を埋める。

 

「むむ……トモナリには僕がいるのだ!」

 

 トモナリがデカモフモフ良いなと思っていることを察したヒカリがトモナリの体をよじ登って顔にしがみつく。

 キュリシーのヨダレの匂いがする。

 

 そんなことを思いながら、トモナリもトモナリでウロコでちょっとゴツゴツしながらポヨポヨしたヒカリの感触を堪能していたのだった。

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