ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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交流戦、始まる3

「最初はグー! ジャンケンポン!」

 

 トモナリは正直出ても出なくてもいいと考えているのだけど、アユムも実は同じなのであった。

 実力があるからと推薦されて交流戦に出ることになったものの、自分から出たいと言ったわけではなかったのだ。

 

 やるなら全力で挑むけれど、出なくていいならその方がいいかもしれないぐらいだった。

 ジャンケンの結果、勝ったのはトモナリだった。

 

「ではやるのだぞ!」

 

「そうだな」

 

 これから戦うのだから負けた方ではなく、勝った方が出ると決めていた。

 つまりトモナリとヒカリの番なのである。

 

「‘日本の先鋒、アイゼントモナリ。イギリスの先鋒、クリス・ハリソン’」

 

 トモナリがステージに上がる。

 対戦相手はグリグリとした茶髪の青年であった。

 

 武器はベーシックに剣で、やや目つきが悪く睨みつけるようにトモナリのことを見ている。

 

「さて……僕の力を世界に見せつける時がきたのだ!」

 

 ヒカリは胸を張って鼻息をフンと立てる。

 

「‘試合始め!’」

 

「ここは僕に任せるのだー!」

 

 開始とともに動いたのはヒカリ。

 真っ直ぐにクリスに向かって飛んでいって襲いかかる。

 

「‘これが噂のドラゴンか。大したことなさそうだな’」

 

 真っ直ぐに飛んでくるヒカリに合わせてクリスは剣を振り下ろす。

 テイマーが魔獣を失えば戦力は半減となる。

 

 連携を取られる前にヒカリさえ倒してしまえば楽になると口元は緩んでいた。

 

「ほっ、とりゃー!」

 

「‘ぐおっ!?’」

 

 振り下ろされた剣はヒカリに当たらなかった。

 空中でくるんと体を回転させて剣をかわしたヒカリは、そのままクリスの顔面に飛び蹴りを入れた。

 

 思いの外に重たい一撃でクリスがぶっ飛んでいく。

 ヒカリの活躍に観客席がワッと盛り上がる。

 

「‘チッ……この……’」

 

「まだまだー!」

 

 起きあがろうとしたクリスが見たのは急降下してくるヒカリであった。

 飛び蹴りもかなり重たかった。

 

 これ以上攻撃を食らうとまずいと思ったクリスは、床を転がってヒカリの追撃をかわした。

 

「俺の出番はないかもな」

 

 トモナリも戦うつもりであったのだが、ヒカリだけでも十分そうである。

 剣に手をかけながらもヒカリに任せて戦いを見守る。

 

 起き上がったクリスが剣を振るものの、空中を自在に飛び回るヒカリに剣は当たらない。

 上下左右と動いて相手を翻弄し、隙をついて体当たりを加えている。

 

 まだ爪もブレスも使っていない。

 持ち前の素早さだけで戦っているのだ。

 

「残念! 尻尾なのだ!」

 

「‘ぐわっ!’」

 

 体当たりと見せかけて体を回転させてクリスの顔面に尻尾を叩きつける。

 べチンと大きな音が鳴って、クリスがふらつく。

 

「くらうのだ! ボーッ!」

 

「‘うわああああっ!’」

 

 クリスの顔の前でヒカリは大きく口を開けた。

 真っ赤な火炎のブレスが放たれる。

 

 頭が炎に包まれてクリスは床を転げ回る。

 同時にバリアが割れる音が響いて、ステージの外にいた医療チームの覚醒者が水を飛ばして鎮火した。

 

 結構激しく燃えていたように見えたけれど、アーティファクトのおかげで実際に燃えた時間はバリアが壊れてから鎮火されるまでに抑えられていた。

 若干髪の先がチリチリになったかもしれないものの、それで済んだなら無傷といっても差し支えない。

 

「イェーイなのだ!」

 

 クリスのアーティファクトの効果が切れたのでトモナリとヒカリの勝ちである。

 ヒカリが笑顔で両手を突き出して飛んでくるのでトモナリを手を出す。

 

 ハイタッチを交わして、ヒカリは頭も差し出す。

 

「よくやったな」

 

 トモナリが撫でてやるとヒカリは嬉しそうにニンマリとする。

 

「さてと……次はどうするかな?」

 

 先鋒戦はそれこそ交流目的が強いような戦いである。

 本格的な戦いは次鋒戦からである。

 

 ステージに上がってきた相手の女の子を見て、戦えないこともなさそうだとトモナリは思った。

 

「まあ、少しぐらい先輩に楽させてあげようか」

 

 力を温存したところで所詮は先鋒である。

 負けるにしても次に繋がるぐらいには戦おう。

 

「流石に注目されるよな」

 

 トモナリが剣を抜くと会場がざわつく。

 赤い刃の剣はやはりとても目を引く。

 

『ほほほ、皆が見ておるわ』

 

 頭の中で響くルビウスの声もどことなく自慢げである。

 

「いくぞ!」

 

「やるのだー!」

 

 試合が始まり、トモナリとヒカリは別々の方向に分かれて相手に向かう。

 先鋒の試合でヒカリが戦えることはもうすでに刷り込まれている。

 

 素早く回り込もうとするヒカリとまだ未知数なトモナリのどちらを警戒するのか、咄嗟に判断することは難しい。

 互いに位置を確認して挟み込むように同時に攻撃する。

 

「とりゃー!」

 

 左右からの同時攻撃を防御できず相手は飛び退いて二人の攻撃をかわした。

 しかしかわすことが分かっていたかのようにヒカリは軌道を変えて相手を追いかける。

 

「ボーッ!」

 

 相手に迫ったヒカリはブレスを吐き出す。

 

「‘くっ! はあっ!’」

 

 相手は剣に魔力を込めて炎を切り裂く。

 

「ばびゅん!」

 

 切り裂かれた炎の奥に見えたヒカリは一気に飛び上がった。

 何をするつもりかと軽く上を見たところで、ヒカリの後ろからトモナリが迫っていることに気がついた。

 

「くらえ!」

 

 ヒカリのブレスの残火を切り裂いてトモナリの剣が振られた。

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