ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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唐突なプロポーズ2

「‘日本には大切な人がいる。お世話になった人がいる。守りたい人がいる。友達がいる’」

 

 トモナリはまっすぐにメイリンの目を見つめた。

 

「‘俺は日本で生まれて、日本で育った。俺はあそこが好きなんだよ’」

 

 回帰前のことを含めると色々な思い出はある。

 辛かったこともたくさんあるけれど、それでも嫌いにはなれない。

 

 特に今は多くの人と絆を深めてきた。

 離れるなんてとても考えられなかった。

 

「‘俺があんたのパートナーになるんじゃなくて、あんたが俺のパートナーになるなら考えるよ’」

 

 中国に帰化するつもりはない。

 ただメイリンの力はそばにあるとありがたい。

 

 よく知りもしないメイリンの旦那になることはないが、共に活動してくれるならとは思う。

 

「‘私にそんなこと言うの、あなたぐらいよ’」

 

 メイリンはくすくすと笑う。

 

「‘でもいいのかしら、そんなこと言って?’」

 

「‘なんでだ?’」

 

「‘育ててもらった恩はあるけれど……私はあまり国にこだわりはないわ。こんなこと言うと怒られるから言わないけどね。だから本気にしちゃうよ?’」

 

 メイリンは髪をかきあげて流し目を送る。

 回帰前、メイリンは傭兵女王だった。

 

 つまり国に関係なく金で動く傭兵なのであった。

 中国が最大戦力とも言えるほどに強かったメイリンを、金を積まれたとしてもそう簡単には貸し出すことは考えにくい。

 

 そして中国がメイリンを手放すことも考えにくい。

 となると、メイリンは自ら国を飛び出して傭兵として活動し出したことになる。

 

 多くの人が自分の国で活動するけれど、中には別の国に移って活動する人もいる。

 移る理由はお金や待遇なことが多かった。

 

 それ以外の理由で国を出ることも当然あった。

 少なくともメイリンは自国にこだわる人でないことは回帰前の記憶から分かっている。

 

 上手くいけば引き抜ける可能性がある。

 メイリンの希望を見抜いて、望むものを提示できたら仲間にできるかもしれない。

 

 ただメイリンが何を望むのか分からない。

 今のところトモナリ自身を望んでいる気がするけれど、そんなもの差し出せない。

 

 メイリンを仲間に引き込んだところで、今のトモナリにちゃんとメイリンをコントロールできるかも不安だ。

 

「‘でも今あなたは私よりも弱いわ。そんな人の下にはつけない。だから強くなって’」

 

 メイリンはなんだか楽しそうだ。

 対してヒカリはオレンジジュースを飲み干して、ジトっとした目でメイリンを見ている。

 

「‘あなたが強くなったら私があなたを迎えにいくわ。その時に……私が負けたらお嫁さんになってあげる’」

 

「‘別に嫁にはしないけど……それに’」

 

「にゅ?」

 

 トモナリは膝に乗せたヒカリを抱き上げる。

 

「‘俺には立派なパートナーがいるんだ’」

 

「ト、トモナリィ〜!」

 

 トモナリはピタッとヒカリに頬をつける。

 メイリンも頼もしい仲間になってくれるかもしれない。

 

 でもトモナリにはもうすでに頼もしいパートナーがいるのだ。

 ヒカリを押し退けてトモナリのパートナーとなることは容易ではない。

 

 ヒカリは口に手を当てて感動した顔をしている。

 

「むふん!」

 

 途端に自信をつけたヒカリがメイリンに勝ち誇った顔をする。

 

「‘んー……今はあなたに預けておくわ。でもそのうち私がパートナーになってみせるわよ’」

 

 欲しいものは手に入れる。

 それがメイリンを傭兵女王にした理由であった。

 

「にゃにおう!」

 

「ヒカリ、やめとけ」

 

 メイリンも笑っている。

 冗談だろうとは思うけど、どこまでが冗談なのか判断がつかない。

 

「‘個人戦は手加減しないからね’」

 

「ふん! 今度こそ倒してやるのだ!」

 

 不思議なお誘いだったとトモナリは思う。

 ホテルに戻るとなんの話だったかとみんなに聞かれたけれど、流石にプロポーズされましたとは答えられずにスカウトぐらいで言葉を濁す。

 

 ヒカリは僕がパートナーなのだ! と嬉しそうにみんなに言って回っていた。

 ついでにハオレンについてはメイリンに気があるらしく、メイリンがトモナリに興味を持っていることを知って、あのような敵対的な態度だったことも教えてもらったりした。

 

『モテる男はつらいのぅ』

 

「殺されるんじゃないかとドキドキだったけどな」

 

「ぼーくがトモナリのパートナーなのだ〜! わっはっはっ〜!」

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