ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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接触2

「俺が死んだら怒るでしょうね。でも仲間となった人たちを見捨てて一人で逃げたら、きっともっと怒ります」

 

 アユムは少し困ったように笑った。

 だけど強制されているような雰囲気はなく、どこか自分なりの選択だと自信はあるようだった。

 

「海原宗元(ウナバラシュウゲン)……か」

 

「父を知っているんですか?」

 

 マサヨシが口にした名前にアユムが驚いた顔をした。

 

「もちろん知っているとも。知らずに声をかけたと思うか?」

 

「あっ……まあ、そうですね」

 

「相変わらずな性格をしているようだ。だがその性格のおかげであいつの周りには人がいる」

 

 マサヨシはフッと笑った。

 

「ひとまず君の意思は分かった。みんなもいいな? まだ今なら引き返せる。たとえ行かないという選択をしても笑う者はいない」

 

 みんなのことをぐるりと見回す。

 トモナリという一点のみで参加するのは大きなリスクがある。

 

 それも危険があるだろうから参加すると言っているのだ。

 危険があるならそれを避けてしまうというのも当然のことであり、行かないこともまた勇気ある選択である。

 

「……本当にいいのだな」

 

 しかし一度行くと言った以上、それを覆す人はこの場にいなかった。

 

「ならばこれ以上は問わん。だが肝に銘じておけ。大切なのは命だ。生き延びること。全員無事に日本に帰るぞ」

 

 トモナリも含めてみんなが大きく頷いた。

 襲撃は近い。

 

 ーーーーー

 

「でっかいビルなのだ……」

 

「まさか町中に拠点があるとはな」

 

「逆だろ。町中だから紛れられるんだよ」

 

 人知れぬ僻地の秘密拠点なんてものを想像していたユウトはため息をつく。

 終末教の拠点は町中にある巨大なオフィスビルであった。

 

 捕らえた終末教から聞き出した話によると、終末教が裏にいるフロント企業が持っているビルが今回襲撃する拠点らしい。

 まさか都市のど真ん中にあるビル一棟そのものが終末教の拠点だとは誰も思いもしない。

 

 思っていたよりも相手の規模が大きいので、警察やさらに追加で覚醒者ギルドの協力も得た。

 今は逃げられるものがいないように、終末教の拠点をひっそりと包囲して襲撃の準備を進めているところである。

 

 近くには中国もいて、メイリンが時々手を振ってきたりハオレンが睨みつけてきたりする。

 

「全員終末教……なのかな?」

 

 トモナリたちは最後尾からついていく形となっている。

 なので他の人よりも少し離れたところで待機している。

 

 遠くからチラリと見えているビルには多くの人が出入りしているのが見えている。

 覚醒者ギルドも抱えているが、普通の企業としての顔も持っている場所なのでスーツ姿の人も多い。

 

 ミズキはそれら全てが終末教なのかと不思議そうにしていた。

 

「いや、あの人たちは普通の人だろうね」

 

 ミズキの疑問にコウが答える。

 

「終末教のフロント企業だからって全員が全員、終末教じゃないと思うよ。終末教のフロント企業だって知らないで働いている人はきっと多いはずだ」

 

 むしろビルにいる人の総数から考えると終末教である人の方が少ないかもしれない。

 社会に溶け込み、終末教だとバレないようにするため企業活動はまともなものに見えるようにしているはずだ。

 

 利益を出し、求人活動などを通じて一般の人も受け入れている。

 そうして得られた利益は終末教の活動資金となるし、一般の人は終末教に勧誘される。

 

 フロント企業を設けることで終末教が得られるものは大きい。

 

「どうやってあんなデカい会社作ったんだ?」

 

「コツコツと?」

 

「コツコツと、は大事なのだ、サーシャ」

 

「まあ大事かもしれないけど、一からあんな会社作るのは大変だろう。多分買収とか……会社のトップを終末教に引き込んだとかそんなとこだろうな」

 

 一から企業を作り上げることは不可能ではないし、そうしたフロント企業もあるだろう。

 しかし巨大なビルを有するレベルの企業を一から育て上げるのは相当難しい。

 

 ある程度の基盤を持つ会社を買収したか、経営のトップを終末教にしてしまったのだろうとトモナリは思った。

 何にしても広い人脈や大きな資金がいる。

 

 終末教が広げる根は深くて広い。

 どこまで広がっているのか、どれほど深いのか想像もつかない。

 

「あんなデカいビル、そうそう手にいられないだろう。終末教の拠点を潰せばアイツらにとっても痛手だろうな」

 

 ついでに他の終末教の情報を手に入れられればもっと痛手を与えられる。

 罠かもしれない可能性はあるが、終末教の勢力を削いでおきたい考えはトモナリにもあった。

 

「そろそろ時間になる。気を引き締め……」

 

 マサヨシが腕時計で時間を確かめた。

 予定されている襲撃の時間が迫っていて、改めて注意を促しておこうと顔上げた瞬間、爆発が起きた。

 

 周りが騒然となり、トモナリたちはどこで爆発が起きたのか把握しようと周りを見回す。

 

「なんだ!?」

 

 トモナリたちがいる場所で起きたものではないが、すぐ近くから音が聞こえた。

 

「トモナリ、あれ!」

 

「死体……ジョンか!」

 

 近くに止まっていた車の窓ガラスが割れて中からズルリと人が這い出てきた。

 

「また爆発が……」

 

 再び大きな音が響き渡り、人々が訳も分からず逃げ惑い始める。

 

「操られた死体……ネクロマンサーのジョン・ドゥだな」

 

 マサヨシは素早く状況を把握する。

 爆発はともかく車から出てきたものがジョンによって操られた死体だと見抜いた。

 

 襲撃する前に、襲撃されたのだ。

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