ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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悪夢消ゆる日4

「‘早くぶっ殺せ!’」

 

 トモナリとワンの戦いではトモナリが押されている。

 このまま時間をかければトモナリはワンにやられてしまうことだろう。

 

 しかしジョンにも時間がない。

 斬り落とされた腕からの出血が止まらない。

 

 多量の出血で顔色がかなり悪くなっている。

 あまり時間がかかると命が危ないのはジョンの方も同じだ。

 

 勝負を焦っているのはジョンの方であった。

 

「‘くそッ……’」

 

 血が足りなくなってきて頭がぼんやりしてきたジョンは大きく舌打ちする。

 適度に戦って、適当なところで撤退するつもりだった。

 

 ナンバーズまで使って相手に大打撃を与えられればそれでよかったはずなのに、どうしてこんなことになったのかと回らない頭で考える。

 あいつが悪いのだ、とジョンは思った。

 

 今だけではない。

 ゲートでの襲撃の時もトモナリは邪魔してくれた。

 

 イレブンを破壊されて思うように作戦を遂行できなかった。

 ドラゴンを連れた特殊職業覚醒者の存在はジョンも聞いていた。

 

 トモナリたちの中で何人か殺さずに捕えろと指名されていた人がいる。

 トモナリもそのうちの一人だった。

 

 同時に正確な能力が不明で要注意ともされていたことをジョンは思い出す。

 

「‘不殺の命令など聞かずにあの時殺していればよかった……!’」

 

 イレブンはトモナリに負けた。

 けれどそれはトモナリが純粋にイレブンを上回ったわけではなかった。

 

 トモナリを殺してはならないというブレーキがジョンの中にあったのだ。

 

「‘なぜあんなやつを生かしておこうとするんだ……’」

 

 イレブンの時は手心が加えられていた。

 だが今ジョンはワンに全力でトモナリを殺すように命令を出している。

 

 それなのにトモナリは防御に徹していてギリギリのところで持ち堪えている。

 明らかに脅威となる敵だとジョンは感じた。

 

 今の段階でこれならば将来的により強大な敵となる。

 

「‘チッ……恩はあるからな’」

 

 ここで止めねばならぬ敵。

 トモナリはジョンのことをそう思い、ジョンはトモナリのことをそう思った。

 

「‘ワン……くれてやる。全力でいけ!’」

 

 ジョンの体が淡く光り、呼応するようにワンの体も光った。

 

「‘そいつを殺せ……不殺なんか知るもんか!’」

 

「な……グッ!」

 

 急にワンの攻撃速度が上がった。

 かわしきれなくて攻撃がトモナリの脇腹をかすめる。

 

 直撃したわけではないのに鋭い痛みを感じて、トモナリは顔をしかめた。

 かすっただけなのにこれなのだから直撃なんてしたら内臓が飛び出すかもしれない。

 

「なんだ……いきなり……」

 

 これまででも速くて力も強かったのによりパワーアップした。

 トモナリの余裕が完全になくなる。

 

 あまり攻撃を受けて消耗してしまうと、ドラゴンズコネクトの継続時間にも影響が出てくる。

 ブレスを使っていないので大きな消耗はしていないが、維持だけでも力は使う。

 

 ドラゴンズコネクトを維持していられるのも限界があるのだ。

 ワンの速度にはドラゴンズコネクト無しではついていけない。

 

「くらうのだ!」

 

 ヒカリが火の玉を放つ。

 ワンは火の玉を回避したり、殴って打ち消したりしながらもトモナリへの攻撃をやめない。

 

 一息つくことはできないが、ヒカリのおかげでほんの少し立て直すことはできた。

 

「‘あんまりその人をいじめないでほしいな’」

 

「あれは……」

 

 青い剣が飛んできた。

 ワンは自身に飛んできた青い剣を素手で青い剣を殴り飛ばす。

 

「‘手助け、いる?’」

 

「‘メイリン……’」

 

 青い剣は空中で止まり、スーッと操られるように空中を移動する。

 青い剣が飛んで行った先には赤い剣の上に立つメイリンがいた。

 

 無事だったのかという思いと同時に、これは心強い味方が来てくれた。

 

「‘助けてくれ’」

 

「‘ふふ、素直でいいね’」

 

 地面に降り立ったメイリンは両手を大きく動かして剣を操る。

 赤と青の二本の剣が勢いよくワンに向かって飛んでいく。

 

「‘チッ! なんだあいつ!’」

 

 ワンは飛んできた二本の剣を飛び上がってかわす。ジョンは突然の乱入者に顔をしかめる。

 

「‘あの女……あいつも……’」

 

 メイリンも不殺リストの中に名前があった。

 なぜ不殺なのか。

 

 それはやはり引き込みたい人材だからだろう。

 つまりは厄介な敵になりうるという側面もあるのだ。

 

 メイリンは手に剣を持たずに操って戦う。

 本来人であればできないような動きも空中に浮かせた剣ならば実現することができる。

 

 メイリンが参戦してきて少しだけ余裕ができた。

 剣のみで戦うメイリンはトモナリの戦いの邪魔にもならないで、上手くフォローするように動かしてくれている。

 

 けれどメイリンが加わってなおワンを押しきれない。

 

「もう限界が近い……」

 

 ドラゴンズコネクトの限界ももう目の前に迫っている。

 ワンを倒すほどの力が残っているのか、正直自信がない。

 

「ならば……」

 

 ワンを倒せないのなら作戦を変える必要がある。

 

「‘メイリン、こいつを頼んでもいいか!’」

 

「‘うーん、まああなたのお願いなら’」

 

「ヒカリ!」

 

「うぬ! ボーッ!」

 

 ヒカリがブレスを放つ。

 ワンが炎を避けて飛び退き、メイリンが剣を操って追撃を仕掛ける。

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