ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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クソ不味い乾杯

「結局休み潰れちゃったな」

 

 終末教のせいでアメリカでの滞在期間が伸びに伸びた。

 そのせいで日本に帰ってからも家に帰省することなく、そのままアカデミーに留まることになった。

 

 仕方のないことであるものの、今回の人生は母親のこともちゃんと大事にしようと思っているトモナリにとっては勘弁してくれよと思わざるを得ない。

 引っ越した後の生活も上手くいっているのか気になっていたのにな、と思わずため息が漏れてしまう。

 

 アメリカでの終末教の襲撃は日本であまり大きく取り上げられていない。

 単純に交流戦が長引いたから帰れなかったのだ、とゆかりに心配をかけずに言い訳できたことは幸いであった。

 

「色々とあったな……」

 

 交流戦だけの話ではない。

 もうすぐ二年生になる。

 

 トモナリが回帰してから一年が経つということなのだ。

 思い返してみると色々なことがあった。

 

 ヒカリと出会ってから、多くの出会いがあり、多くの戦いがあり、多くの成長があった。

 短いようで、長いような一年だったと感じる。

 

「まだまだこれからだな」

 

 トモナリが成し遂げたことは多くはない。

 一年という時間の短さもあるけれど、トモナリの力もまだ強いとは言えない。

 

 大きな問題を処理するのにトモナリの力が足りないのだ。

 それでもいくつかの悲劇を防ぐことができた。

 

 ゴブリンキング、No.10ゲート、五十嵐ギルド、終末教の交流戦襲撃と生まれるはずだった悲しみを大きく減らした。

 さらに交流戦の襲撃ではジョン・ドゥを倒した。

 

 将来的にジョンによって生まれるはずだった被害も未然に防いだことになる。

 これによって将来にどんな影響を及ぼすのかは分からないが、少しでも被害者が減ることを祈るのみである。

 

「……トモナリ? どうかしたのだ?」

 

 ぼんやりと考え事をするトモナリを下からヒカリが覗き込む。

 

「ん? 少し考え事をしてたんだ」

 

 トモナリは笑顔を浮かべてヒカリの頭を撫でる。

 頭を撫でられてヒカリは目を細める。

 

 ヒカリも成長したものだ、とトモナリは思う。

 見た目的な変化はないものの、全く戦えなかった最初に比べると立派な戦力となってくれている。

 

 このまま強くなってくれたらトモナリとしてもありがたい。

 

「さて……飲むか」

 

 トモナリはインベントリから二本の小瓶を取り出した。

 それはルドンアカデミーで団体戦の優勝賞品としてもらった霊薬であった。

 

「ほら、ヒカリ」

 

 一本はヒカリの分である。

 トモナリが瓶を開けて渡してやる。

 

「一気にいくぞ」

 

「うむ!」

 

 両手で可愛らしく小瓶を持つヒカリと一度顔を合わせて、小瓶を口につける。

 

「ぐぇー! 不味いのだ!」

 

「……美味くないな……」

 

 そもそも霊薬に味を求めるのが間違いなのかもしれない。

 前に食べたものも決して美味しくはなかった。

 

 それにも増して今飲んだものは不味い。

 トモナリとヒカリは渋い顔をしてなんとか霊薬を飲み切った。

 

「ほらよ、ヒカリ……」

 

 こうなることは予想していた。

 だから事前に用意してあったジュースをヒカリの前に置く。

 

「チュー!」

 

 ヒカリはストローで一気にジュースを飲み干す。

 

「もっと美味しく作ってほしいのだ」

 

 ヒカリは険しい顔をしてため息をつく。

 ジュースと違って味より効能なのでしょうがないが、せめて不味くないようにはできないのかとトモナリも思う。

 

『魔力が2増えました!

 スキル魂の契約(ドラゴン)の効果で相互作用を得られました。魔力が2増えました!』

 

 ただ効果はちゃんとある。

 魔力がトモナリとヒカリの相乗効果で大きく上がった。

 

『力:104

 素早さ:108

 体力:108

 魔力:103

 器用さ:105

 運:76』

 

 トモナリはステータスを確認する。

 レベルも気付けば29になった。

 

 ステータスもかなり伸びてどの数値も100を超えてきた。

 ジョンとの戦いでレベルは上がらなかったが、ギリギリの死闘だったのでいくつかの能力も上がったのだ。

 

「うん、まだまだいける。もっと強くなって……今度は世界を救う」

 

 これからもっと激しい戦いが待ち受けているだろう。

 だが立ち止まるつもりはない。

 

 今度は人類が勝利する。

 そのためにもっともっと強くならねばならない。

 

「ヒカリ」

 

「なんなのだ?」

 

「これからもよろしく頼むぞ」

 

「うむ、任せておくのだ!」

 

 ヒカリがいれば百人力だ。

 

『妾もおるぞ』

 

「ああ、みんなで救おう。きっとやれるさ」

 

 諦めることのないまっすぐな決意。

 トモナリとヒカリとルビウスは、用意していたお菓子を食べてささやかな休息を取ったのであった。

 

 ーーー第四章完結ーーー

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