ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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未来を見る少女

 次の日、トモナリが一年生の教室を訪れると、ミヤマエは打って変わって頭がつきそうなほどに頭を下げた。

 トモナリが勝ったことを知っているクラスメイトたちも、こんなふうに態度が変わるとは思っておらず驚いていた。

 

 ミヤマエに改めて課外活動部のことを説明したのだけど、返事は変わらず入りますだった。

 紆余曲折あったものの、ミヤマエは課外活動部に入ることには決まったのだ。

 

 ミヤマエは入るというが他の人もみんな入るかというとそうでもない。

 部活に入らないという人は一定数いる。

 

 他の部活に入ってしまっているとか、部活までして強くなるつもりがないという考えだってある。

 誘ってみても入らない人はどうしても出てきてしまう。

 

 だが課外活動部も強制でもなんでもない。

 入らないという人を無理矢理入れることなどないのだ。

 

 運が悪い年だと誘っても断られ続けることもある。

 今年も印を多くつけられた人に断られることが多く、印の少ない人も勧誘候補に入ってきた。

 

「岸晴香さん、いますか?」

 

 印が少ない人は同票であることも多い。

 どの人を誘うのかまたしても話し合いが行われた。

 

 そこでトモナリが目をつけたならと岸遥香をトモナリが勧誘することになった。

 先見の明があるからスカウトでトモナリが目をつけているのも理由があるのだろうとみんなが思っていた。

 

 ヒカリを連れたトモナリは周りの印象にもよく残る。

 トモナリが教室に入ると先輩だ、なんて声が聞こえてくるぐらいだ。

 

 トモナリはハルカを探して教室を見回す。

 

「キシさんならあそこですよ」

 

 ドア近くにいた女の子がハルカの席を教えてくれる。

 教室の真ん中がハルカの席だった。

 

「お弁当か?」

 

 教えてくれた女の子にお礼をしてハルカのところに行く。

 

「あっ……せ、先輩。あの、この間はどうもありがとうございました……」

 

 昼休みなのでみんな思い思いに過ごしている。

 ハルカは机にお弁当箱を出していた。

 

 女の子らしい彩りのある可愛らしいお弁当である。

 トモナリが空いていた前の席に座ると、ハルカは驚いたように目を丸くした。

 

 トモナリにとっては回帰前の記憶もあるが、ハルカにとっては少し前にぶつかってしまって道を教えてくれた先輩である。

 まさかトモナリが学内でも有名な人だとは知らなかった。

 

「食事中声かけて悪いな」

 

「い、いえ、大丈夫です! 先輩のおかげで遅刻せずに済みましたし」

 

「元気なのだ?」

 

「あっ、はい、元気です!」

 

 肩車されるようにトモナリの肩に乗っているヒカリが笑顔で手を振ると、ハルカはペコリと頭をさげた。

 

「少しだけでいい。時間はあるか?」

 

「大丈夫です」

 

「じゃあ廊下で」

 

 トモナリはハルカを連れて廊下に出る。

 一応スカウトして入部者を決めているので、隠しているわけでなくとも大っぴらに話はしない。

 

「課外活動部……ですか?」

 

「ああ、より強い覚醒者を育てることを目標にしてるんだ」

 

 課外活動部のことを説明するとハルカはキョトンとした顔をしていた。

 

「わ、私を誘ってるんですよね……?」

 

「そりゃそうだろ」

 

 わざわざ他の人をスカウトするためにハルカを誘ってみるなんて面倒なことしない。

 

「どうして……私なんですか?」

 

 特進クラスには入っている。

 しかし周りの話を聞いてみると他にもっと強い人はいくらでもいる。

 

 今の所パッとしない能力のハルカを誘う理由が分からない。

 

「……俺には未来をちょっとだけみる力がある」

 

「えっ?」

 

「それによると君は将来において重要な役割を果たす力を手に入れるんだ」

 

 偽物の未来予知ではなく、本物の未来予知の力をハルカは手に入れる。

 未来は変えられる。

 

 ハルカの未来予知によって救われた人は多くいる。

 早めに能力が目覚めればより多くの人が助けられるかもしれない。

 

 それに回帰前のハルカはいうほど弱くもなかった。

 戦闘専門の職業の人に比べてしまうと思ってしまうところはあるが、魔法職として前線で戦っていた。

 

 たとえ現段階の能力がパッとしないものだとしても、磨き上げれば光り輝く宝石の原石なことをトモナリは知っている。

 

「君も強くなれる。自信を持って欲しい」

 

「……本当ですか?」

 

「まあ未来が見えるってのは……」

 

「そうじゃなくて……私でも強くなれますか?」

 

 うつむき気味だったハルカは顔を上げてトモナリの目を見つめる。

 

「強くなりたいならなれるさ」

 

 今ならまだトレーニングもできる。

 ハルカにやる気があるなら回帰前よりも強くなれる可能性が高い。

 

「先輩のこと……信じてもいいですか?」

 

「俺を信じてもいいけど……」

 

「けど?」

 

「自分の力を信じてやれ。お前自身がお前自身を信じるんだ。強くなれる、強くなるんだってね」

 

「強くなるんだ……」

 

 未来予知ができるハルカという覚醒者の存在は知っているが、ハルカと親しいわけではなかったので細かな話は知らない。

 だからハルカがどんな思いでここにいるのかトモナリも分かってはいない。

 

 けれどもなんだか事情がありそうな感じはしている。

 

「私、課外活動部に入ります」

 

 少し悩んだように視線をさまよわせたハルカは一度頷いて、またトモナリのことをまっすぐに見た。

 

「強く……なりたいです」

 

「なれるさ、きっと」

 

 未来は分からない。

 だけど強くなりたいと願って前に進むのなら、ただ流されるままに進むよりも強くなれる。

 

「また今度連絡するから連絡先教えてくれるか?」

 

「あっ、はい!」

 

 まだスカウトも終わっていない。

 全体のスカウトが終わったらトモナリたちがやったように部室に集まって自己紹介をするのである。

 

「へへ……男の人と連絡先交換したの初めてです」

 

 ほんのりと頬を赤くして笑顔を浮かべるハルカは、覚醒者というよりも普通の女の子と変わらない。

 

「それじゃあ時間取らせて悪かった」

 

「はい! お誘いございました!」

 

 ハルカは礼儀正しくお辞儀する。

 ミヤマエの時のようにめんどくさいスカウトにならなくてよかった。

 

「むむむ……」

 

 ヒカリはなぜかちょっと不満そうだけど、スカウトは上手くいったのだった。

 

「どうかしたのかよ?」

 

『あやつがお主に色目使うからだ』

 

「色目って……別にそんなんじゃないだろう」

 

『ふん、鈍い男はそのうち刺されるぞ』

 

「勘違い男も逮捕されるかもしれないからな。ヒカリ? 痛いぞ」

 

 ヒカリは頭にしがみついてトモナリの背中を尻尾でバシバシ叩いていたのである。

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