ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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レベル1でも強いんです1

「はぁ〜」

 

 リュックから少し顔を出したヒカリが息を吐き出す。

 まるでドラゴンのブレスのように息が白くなってヒカリは面白いなと思った。

 

 季節は進んで冬になった。

 雪が降る地域ではないけれど息が白くなるほどに空気は冷えてくる。

 

 厚手の服装に身を包んだトモナリは日課であるランニングを続けていた。

 ゲートブレイクを経て覚醒するという目的は果たしたけれど体力作りなどちゃんとした理由があって未だに日課としているのだ。

 

 朝方の空気はだいぶひんやりとしているけれど走っているので体は寒くない。

 それに背中に背負っているリュックもヒカリが入っているせいかほんのりと温かく感じる。

 

「肉まーんが食べたーいのだ〜」

 

 周りに誰もいないことを確認してヒカリが完全に頭を出してトモナリに頬を擦り付ける。

 少し前にふとコンビニに寄って肉まんを買ってあげたのだけど気に入ったようである。

 

「ちょっと買い食いでもするか」

 

「やった!」

 

 たまには買い食いしたところで怒る人もいない。

 ひんやりした空気の中で食べる肉まんはトモナリも嫌いじゃないのでコンビニに寄ることにした。

 

「あっ! あいつだ!」

 

 近くのコンビニに向かっていると朝の静かな空気にふさわしくない声が聞こえてきた。

 

「あっ?」

 

 トモナリが怪訝そうな顔をして振り返ると見覚えのある顔がそこにいた。

 思い出すのにちょっとだけタイムラグがあったけれどなんとか思い出せた。

 

 そいつはカイトであった。

 トモナリのことをいじめていたクソ野郎で、回帰してきたばかりのトモナリにいっぱい食わされて暴行事件として騒ぎにしない代わりに転校していった。

 

 カイトと一緒にいじめをしていた連中は肩身の狭い思いをしているらしいというのは学年主任から聞いた話である。

 親の仕事の都合があるからあまり遠くではなく隣町に引っ越してそこの学校に転校したと聞いていた。

 

 それでも距離はあるので意図的にカイトが来なければ会うこともないとトモナリは思っていた。

 なのにどうしてこんなところにいるのか。

 

「兄貴、アイツです!」

 

「アイツか」

 

 カイトは一緒にトモナリをいじめていた連中に加えて見慣れない男を連れていた。

 トモナリより少し年上に見える高校生ぐらいの体つきのいい青年である。

 

 いじめっこ感のある生意気そうな顔をしていて、トモナリのことを見て見下すようにふんと鼻を鳴らして笑った。

 

「おい! 無視すんな!」

 

 なんだか嫌な感じがする。

 トモナリは声をかけられたのは自分じゃなかったことにして行こうとしたが、やはりトモナリが目的だったようだ。

 

「チッ、なんだ?」

 

「コイツ……舌打ちしやがった!」

 

 肉まんの気分だったのに水をさされた。

 思わずしてしまった舌打ちにカイトは不快そうな顔をする。

 

「何の用だ?」

 

「なんだコイツら」

 

 何もないならさっさと行きたい。

 ヒカリもリュックの中で小さく唸るように警戒している。

 

「ちょっと来てもらおうか?」

 

「はぁ? 嫌に決まってんだろ」

 

「な……てめっ!」

 

 なんで大人しくついていかねばならないのか。

 当然トモナリに行くつもりなんてない。

 

 少し前ならあり得ない態度にカイトは顔を赤くして怒る。

 改めて見るとカイトは何も怖くないし、こんなにもガキっぽかったのかと思う。

 

「おい、行け!」

 

 カイトが命令すると一緒にいじめていた連中がトモナリの方に走ってくる。

 やるのかとトモナリが警戒するけれど馬鹿な連中はトモナリの横を通り過ぎて退路を塞いだ。

 

 逃がさない、ということらしい。

 

「いいから来い!」

 

 トモナリはだんだんとイライラしてきた。

 なんだってカイトの命令なんて聞かなきゃいけないのか。

 

 ただこんな人の往来があるところで問題を起こすとまたゆかりに心配をかけてしまうかもしれない。

 

「どこに行くんだ?」

 

「最初からそうすればいいんだよ」

 

 馬鹿な連中がトモナリを挟み込んで両腕を掴む。

 

「むっ……」

 

「大人しくしてろ」

 

「はぁ? お前が大人しくしてろ」

 

「はいはい」

 

 ヒカリが出てきそうになってトモナリが制する。

 無理矢理連れていかれるような形になるけれど周りから見れば男子生徒がじゃれあっているぐらいにしか見えていない。

 

「ここは……」

 

 連れてこられたのは廃校となった小学校であった。

 以前スケルトンが出てくるゲートが発生したあの小学校である。

 

 スケルトンが溢れたせいで正面の門は壊れてしまい、今は簡易的に封鎖してあるだけになっていた。

 噂では近々取り壊すことになっているらしいが、ゲートが発生したということも相まって余計に人が立ち寄らない場所となっていた。

 

 その中でもさらに人目のない校舎裏にトモナリは連れていかれた。

 

「んで、なんだよ?」

 

 学校で追いかけっこでもしようなんてつもりがないことはトモナリにも分かりきっている。

 トモナリの堂々とした態度に馬鹿な連中は動揺している。

 

 これまでは少しいじめただけで動揺していたのに今は一切動じることがない。

 

「なんだだと! お前のせいで俺は引っ越しまでする羽目になったんだ! 父さんには怒られるし、母さんも事あるごとに小言のように俺を責める!」

 

 知るかよ、とトモナリは思った。

 

「それなのにお前が悠々と生きてんのがムカつくんだよ!」

 

 単なる八つ当たり。

 全部自業自得で起きたことなのにそれをトモナリのせいにして自分の気を落ち着かせようとしている。

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