ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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ブラックドラゴンはメロメロです

「んん……?」

 

「アイゼン!」

 

「先輩? ここは……」

 

 トモナリが気づいたらサタケの工房にいた。

 工房にはカエデを始めとして、ゲートの異常に備えるために覚醒者が待機していた。

 

「えっと……」

 

 状況がうまく飲み込めない。

 

「トモナリィィィイ〜」

 

「……ヒカリは元気そうだな」

 

 ヒカリは相変わらずトモナリの胸にしがみついたままである。

 無事なようでホッと一安心する。

 

「ルビウスは……」

 

『ここにおるぞ』

 

 ルビウスはいつの間にか腰に差してあった。

 ゲート中の過去の世界ではルビウスがいなかったのでどこに行っていたのか心配だったが、こちらも特に変わった様子はない。

 

「それと……」

 

 トモナリは右手を持ち上げる。

 右手にはいつの間にかアースドラゴンの精髄が握られていた。

 

 ただ少しだけ様子が変わっている。

 アースドラゴンの精髄の中はただ魔力が漂うように見えていたのに、今は大きな魔力が渦巻くようになっている。

 

「お体は無事ですか?」

 

「あ……はい」

 

 待機していた医療班がぼんやりとしているトモナリに声をかけてきた。

 ハッとしてトモナリは頷き返す。

 

「……あれは何だったんだろうな」

 

 奇妙な経験をしたと、振り返ってみて思う。

 終末の世界だった。

 

 ヒカリはブラックドラゴンで、トモナリは何の力も持たない一介の覚醒者。

 けれども不思議な力を与えられてトモナリはヒカリを倒す寸前まで行った。

 

 もしかしたらアンディのことがなければ本当にあんなことになっていたのだろうか。

 特に確かめようのない疑問が頭に浮かぶ。

 

 その場合、回帰前のトモナリはきっとヒカリを容赦なく倒したことだろう。

 そうなれば世界は救われたのだろうかと少しだけ考えてしまう。

 

「これ、サタケさんにお願いします」

 

「分かった。お前は休むといい。近くにホテルを借りてある」

 

「ありがとうございます。ちょっと疲れているのでありがたいです」

 

 アースドラゴンの精髄はカエデに渡しておく。

 カエデならば盗むなんて心配もない。

 

 トモナリはオウルグループの車で近くのホテルまで送ってもらった。

 かなりいいホテルの最上階を貸切だった。

 

「ヒカリ? いつまでそうつもりだ?」

 

「ずっとこうしていたいのだ」

 

 ヒカリはトモナリの胸にしがみついたままで離れない。

 怖かったといってので、相当不安だったのだろう。

 

 トモナリは少し困ったように笑いながらヒカリの頭を撫でてやる。

 

「僕はトモナリが友達でよかったのだ」

 

「そうか」

 

 胸に顔を押し付け、ちょっとくぐもった声。

 

「あんな状況でもトモナリは僕を友達だと言ってくれて……守ってくれたのだ」

 

 一方的にヒカリが友達だと言っているのではないか、という不安は少しだけあった。

 友達と言いながらもその思いの程度に差があることはもちろんあり得ることで、トモナリが本気でどこまで考えてくれているのかは言葉のみで伝えるのは難しい。

 

 だけど今回のことで、トモナリも本気でヒカリを友達だと考えていてくれていることが分かった。

 

「トモナリ、大好きなのだ……」

 

「ふふ、そうか。俺も好きだよ」

 

 なんだかんだ、ヒカリのことは好きである。

 明るく天真爛漫で、それでいながらも意外と努力も欠かさない。

 

 人が好きで常に笑顔で、食べることが好きで、友達である。

 

「このままギュッてしてほしいのだ」

 

「ギュッ? いいぞ」

 

 希望に応えてトモナリは胸にしがみつくヒカリを抱きしめる。

 

「ヌフフ……友達だけの特権なのだ」

 

 ヒカリは嬉しそうに笑う。

 頭のどこかでこびりついた破壊を求める声が薄れて、消えていく。

 

 トモナリと一緒なら自分が自分でいられる。

 そのままベッドに寝転がる。

 

「あったかいのだ」

 

 心も体も温かい。

 トモナリとヒカリは一緒に眠りについたのであった。

 

ーーー

後書き

いつもお読みくださりありがとうございます。

サポーター様限定で公開しております先行公開にて第五章が完結しました!

 

よければギフトでも投げて読んでくださると嬉しいです!

これからものんびり書いていきますので応援よろしくお願いします!

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