ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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レベル1でも強いんです2

「話は分かったけど……そいつは?」

 

「ふん、聞いて驚け! この人は柏原和樹(カシワバラカズキ)さんだ!」

 

 カイトが八つ当たりや復讐のためにやってきたのだということは理解した。

 けれど見覚えのない高校生がなぜ一緒にいるのだと疑問に思った。

 

「この人はな、卒業後にギルドも決まってる覚醒者なんだ!」

 

 カイトは密かにトモナリに対して恐怖心を抱いていた。

 トモナリを殴りつけて教員たちに止められる前に見たトモナリの燃えるような意思を宿した目はなぜかカイトの記憶に強く刻まれていた。

 

 何者にも折れないようなトモナリにカイトはなぜなのか怖いような思いを抱いていて、それを忘れられなかったから復讐に訪れたという側面もあった。

 カイトと仲間たちだけでは不安があった。

 

 だから転校先で知り合ったカズキをカイトはいざという時の助っ人として連れてきたのだ。

 中学生のケンカに高校生が顔を出すだけでもロクでもないのに、しかも覚醒者となると救いようがない馬鹿であるとトモナリは内心で思う。

 

「まあでも兄貴が手を下すことはありません」

 

 なんとなく不安だったからカズキについてきてもらっただけで直接手を出してもらおうなんてカイトも思っていない。

 今トモナリは両手を抱えられて動くこともできない状況。

 

 カイトはニヤニヤとしながらトモナリに近づく。

 

「お前は大人しく殴られてりゃいいんだよ」

 

 カイトはポキポキと拳を鳴らす。

 

「……その目ムカつくんだよ」

 

 ただトモナリはこんな状況でもカイトを睨みつけている。

 あの日から変わったトモナリの強い意思を持つ炎のような目はカイトの心をざわつかせる。

 

「…………よ」

 

「あっ?」

 

 トモナリの口がわずかに動いてカイトは顔をしかめた。

 

「……ねぇよ」

 

「なんだよ?」

 

 上手く聞き取れなくてカイトはトモナリの顔に耳を寄せた。

 

「もうお前なんて怖くねぇよ」

 

「ぶっ!」

 

 ニヤリと笑ったトモナリは一度頭を後ろに逸らして勢いをつけ、カイトの鼻に額をぶつけた。

 遠慮のない一撃にカイトは後ろに転がる。

 

「うっ!」

 

「なっ……ぎゃっ!」

 

 トモナリは左腕を掴む馬鹿の足をかかとで踏み抜く。

 鋭い痛みに馬鹿は左腕を放し、そのまま右腕を掴んでいる馬鹿の顔面を殴り飛ばす。

 

 逃げないようにと後ろを囲んでいた馬鹿二人もトモナリは殴って倒し、カイトを冷たい目で見下ろす。

 

「こ、こいつ……兄貴、お願いします!」

 

「チッ……何やってんだか」

 

 ただ後ろで手を組んでいればいい。

 それだけでカイトはまたなんか飯でも奢ってくれる。

 

 簡単なことだと思っていたのに少し面倒なことになったと思いながらカズキは腕を振り回しながら前に出てくる。

 一般人など敵ではない。

 

 軽く一発殴って終わりにしようと考えていた。

 

「恥ずかしくねぇのかよ?」

 

「あっ?」

 

「あんた高校生だろ? しかも覚醒者。ガキのケンカに顔出して恥ってもんがないのかよ」

 

「ふん、聞いてた通り生意気なやつだな」

 

 トモナリの言い方もそうだが内容も反論できないような正論でカズキはカチンと来ていた。

 

「決めた。一発じゃ終わらせねぇ。ボコボコにしてやる」

 

「やってみろよ」

 

 トモナリはヒカリが入ったリュックをそっと下ろして、こいよとジェスチャーする。

 

「泣いてもしらねぇからな!」

 

 カズキがトモナリに殴りかかる。

 大きく腕を振り上げた状態から分かりやすく顔を狙った一撃だった。

 

 トモナリは一歩踏み込みながら顔を逸らして拳をかわす。

 

「うっ!」

 

 反撃で繰り出されたボディーブローが完璧に決まってカズキは顔をしかめる。

 予想外に重たい攻撃にお腹を押さえて距離を取ろうとしたけれど、トモナリはそれを許さず追いかけて顔面を殴りつけた。

 

「あ、兄貴!」

 

「ぐっ……スキルアイアンフィスト!」

 

「ほう?」

 

 なんとか倒れることだけは耐えたカズキがスキルを使う。

 カズキの右腕が金属のように変化して、そのままトモナリを殴ろうとする。

 

 当たると痛そうだ。

 ただし当たるとである。

 

 金属の拳をかわしたトモナリはまたカズキの腹を殴りつける。

 ギルドが決まっているとか聞いていたけれど戦い方は全くの素人だ。

 

 硬い拳をしていようとも当たらなければ意味がない。

 

「な……兄貴!」

 

 トモナリに殴り飛ばされてカズキが地面に倒れた。

 

「お、お前……何者だ……」

 

「状況見ろよ」

 

「何?」

 

「質問するのはお前じゃない。俺だ」

 

「何を……」

 

 トモナリはカズキの左手を取った。

 そして中指を握る。

 

「ゔゔぅ! テメ……なにを!」

 

 トモナリが中指を逆の方に勢いよく曲げるとボキリと鈍い音がしてカズキは声を押し殺したようにうめき声を上げた。

 

「あんたが行くことに決まってるギルドの名前は?」

 

「なんでそんなこと……分かった! アイアンハートギルドだ!」

 

別の指をトモナリがぎゅっと掴むとカズキはすぐに口を割った。

 

「うーん、知らないな」

 

 トモナリの記憶にはないギルド名だった。

 おそらくそこらにある中小ギルドの一つなんだろうと思う。

 

「どうする?」

 

「……何をだ?」

 

「警察に通報するか、ギルドに通報するかだ」

 

 覚醒者が一般人に暴力を振るうなど言語道断である。

 結果的にトモナリが勝っているが集団でトモナリを襲ったことに変わりはない。

 

 そこに年上で覚醒者であるカズキがいたら処罰が重たいことは避けられない。

 ギルドに通報してもいい。

 

 そちらに内定している覚醒者が暴行事件を起こしたといえばカズキは処罰されるだろう。

 内定取り消しになるし正義感が強いギルドならそのまま警察コースになるかもしれない。

 

「ちょ……ちょっと待ってくれ」

 

 トモナリの言葉にカズキの顔が一気に青くなる。

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