ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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一年生を護衛して1

「僕が〜後輩を〜みちびぃ〜くのだぁ〜」

 

 トモナリたちが一年生の時に、実戦的な経験を積むために簡単なゲートに挑んだこともあった。

 その時は、バスで数時間移動したところにあったゲートに挑んだものである。

 

 ただそれは運が良かった話ともいえる。

 なぜなら、アカデミーから近いところに初心者である覚醒者挑むのにちょうどいい低ランクのゲートが発生していた、なんて話だからだ。

 

 普通はそんなに都合よくゲートは発生しない。

 今年の一年生にもゲートでの経験は積ませたい。

 

 アカデミー側は根気強くゲートを探した。

 遠く離れればそうしたゲートもあるけれど、あまり離れすぎても一年生の負担が大きい。

 

 そうして、ようやく一年生でも入れそうなゲートが見つかった。

 多少遠い。

 

 一日では着かない距離である。

 だが実際のモンスターを目の前にするという経験は、覚醒者として歩み始め、少しばかり調子に乗り始めた一年生に衝撃を与える役割を持つ。

 

 まだ足りない実力の中でモンスターに対峙し、命をかけた戦いをするのだとしっかりと自覚させることが大事なのである。

 だから遠くても行かねばならない。

 

 日帰りで行けるような距離だったトモナリたちの時とは少し事情が違う。

 ゲートが出現したタイミングというものもちょっと都合が悪く、あまり多くの教員がアカデミーを離れるわけにはいかなかった。

 

 そのために動員されたのが二年生だ。

 成績的に余裕のある生徒が数人、引率として一年生についていくことになったのである。

 

 より具体的には実力的に十分な課外活動部のメンバーであった。

 トモナリを始めとしてミズキ、サーシャ、コウ、マコトにクラシマもいる。

 

 ユウトはいない。

 なぜなら成績的に余裕のある生徒ではないからだ。

 

 実力ではなく学力の方だ。

 なんでだよ! と嘆いていたが、悪いのは普段から勉強しておかなかったユウトの方である。

 

 成績上位でなくとも、進級に問題ないと判断されるぐらいならきっと一緒に来ていたはずである。

 

「ご機嫌だな、ヒカリ」

 

「ふっふっふっう〜、僕を頼りにしてもらえるのは嬉しいのだ!」

 

 トモナリがいるならもちろんヒカリもいる。

 ヒカリは座席にちょこんと座り、窓の外を見ながら尻尾を振っている。

 

 全人類のマスコット的なヒカリであるが、可愛がられるだけでなく、多少の先輩風も吹かせたいと思っている。

 一年生の引率ということでヒカリもやる気を見せている。

 

 ただ一年生たちはヒカリのことを可愛いなと見ている。

 あまり先輩であるという感じではなかった。

 

「あ、あの、ヒカリ先輩!」

 

「ん? なんなのだ?」

 

 女生徒が一人ヒカリをのところを訪ねてくる。

 ヒカリが振り向くと女生徒は少し顔を赤らめる。

 

「お、お触りいいですか!」

 

 まるでラブレターでも渡すように板チョコをヒカリに差し出した。

 

「ふっふっふっ、しょうがないのだ! 少しだけならいいのだ!」

 

 今ヒカリのところには大量のお菓子が集まっている。

 それはヒカリが持ってきたものではなく、周りのみんながヒカリに献上したものだった。

 

「よいしょ……」

 

「うむ、ちょっとだけ撫でるがよいぞ!」

 

 トモナリがチョコを受け取ってヒカリの横にあるお菓子の山に乗せる。

 そしてトモナリが光を抱きかかえて女生徒の前に差し出す。

 

 ドヤ顔のヒカリが頭を差し出すと女生徒はそーっと手を伸ばす。

 

「羨ましい……」

 

「もっとお菓子持ってくれば良かったな」

 

 今回二年生が同行することは出発の直前に明かされた。

 当然トモナリが来ることは実際に来てみて、みんな知ったのである。

 

 遠征用にお菓子を持ってきている人も少なくなかったが、まだインベントリも解放されていないのでそんなにたくさんのお菓子を持ってきていない。

 ヒカリが来ると知っていたらお菓子をもっと持ってきていたのに、と思う一年生は多かった。

 

「いいかな?」

 

「あっ……えっと……」

 

 今回の遠征には引率の教員としてマサヨシも来ていた。

 アカデミーの学園長であり、体格的にも大きなマサヨシは慣れないと恐く見えることもある。

 

 急に立ち上がったマサヨシに女生徒がちょっとびくりとする。

 立ち歩いていたことを怒られるかもしれないと思ったのだ。

 

「…………」

 

 マサヨシはインベントリから何か手のひらよりも少し長いぐらいの四角い棒を取り出した。

 

「俺もいいかな? 高級ようかんだ」

 

 叩かれるのかもしれない。

 そんな女生徒の心配をよそにマサヨシは棒をヒカリに差し出した。

 

「……ちょっと長めにヨシ!」

 

 けれどもマサヨシは優しい人である。

 決して暴力など振るわない。

 

 マサヨシが取り出したのはようかんであった。

 お高いようかんを丸々一本、ヒカリに献上したのだ。

 

 マサヨシがくれるお菓子は美味しいものが多いとヒカリは知っている。

 すぐにヒカリからお触りオッケーの許可が出る。

 

「ズルい……あっ!」

 

「はははっ、これが大人の力だよ」

 

 インベントリもあるし高いものも持っている。

 思わず言葉を口に出した女生徒は慌てるけれど、マサヨシは怒ることもなくヒカリを撫でながら笑顔を浮かべる。

 

 朗らかに笑うマサヨシを見れば、そんなに怖い人ではないのかもと女生徒は思った。

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