ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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覚醒者もいい人ばかりではない1

 ボスコボルトの死体も回収してゲートを出た。

 しっかりとゲートの消滅を確認して、トモナリたちは設営していたテントで一晩泊まってから帰ることになった。

 

 近くの町まで行ってホテルを探すには時間的にも遅いし、せっかくテントを立てたのだから使っておくのがいい。

 ちゃんと食料などは持ってきている。

 

 仲良くみんなでワイワイと料理をしてお腹を満たし、疲れていたのか一年生はぐっすりとテントで眠った。

 次の日の朝、やっぱりインベントリは早くほしいなんて会話をしながら帰るために片付けをしていたら事件は起こった。

 

「動くな!」

 

 突然現れた十数人の男たちがトモナリたちのことを取り囲んだ。

 ただの男たちではなく、武装をしている。

 

「お前たち何者だ!」

 

 マサヨシが険しい顔をして男たちのことを睨みつける。

 一年生は状況にただただ困惑しているが、トモナリたち二年生は状況を把握する前に素早くインベントリから装備を出して身につけていた。

 

「俺たちが何者かはどうでもいい。俺たちの要求を飲めば全員無事に帰してやる」

 

「……何が目的だ」

 

 明らかに怪しい連中である。

 しかしまだ何もされていないのに手を出すわけにもいかない。

 

 マサヨシは周りを警戒しつつも相手の会話に乗る。

 

「相手の目的は何かな?」

 

 ミズキはそっとトモナリに話しかける。

 二年生の面々は男たちを見てある可能性を頭の中に思い浮かべていた。

 

「終末教?」

 

 サーシャが口にした相手の可能性。

 いきなり襲撃される経験はこれまでにも何回かある。

 

 覚醒者を襲う覚醒者として真っ先に頭に浮かぶのが終末教という存在なのだった。

 

「いや、多分違う」

 

 終末教なら結構危ないかもしれない。

 ミズキやサーシャはそう思っていたけれど、トモナリは男たちが終末教ではないだろうと見ていた。

 

 終末教には独特のエンブレムがある。

 活動する時には終末教はそのエンブレムを体のどこかしらに見えるようにしているのに、今男たちには終末教のエンブレムが見えない。

 

 それに終末教なら要求なんて面倒なことをしないで襲いかかってくることだろう。

 

「俺たちの要求は一つ。星読の巫女がこの中にいるな? そいつ俺たちに渡せ」

 

「なんだと?」

 

「全員動くな!」

 

 星読の巫女と聞いて思い当たるのはただ一人。

 ハルカである。

 

 しかし相手の言い方からして、ハルカが星読の巫女だとは分かっていないとトモナリはとっさに察した。

 誰が星読の巫女なのかバレると狙われてしまう。

 

 ハルカのことを見ようとしたみんなを制するためにトモナリは叫んだ。

 

「ほう? 知恵の回るものがいるようだな」

 

「先輩……」

 

「星読の巫女という職業の者はいる。だがそれはうちの生徒であり、渡すわけにはいかない」

 

 ハルカが星読の巫女であることはわかっていないようだが、星読の巫女がこの場にいるということは分かっているようだ。

 下手にいないなどと嘘はつかない方がいいとマサヨシは判断した。

 

 けれども誰であれアカデミーの生徒を怪しい奴に引き渡すなんてことはしない。

 

「いいのか? そんなにたくさん足手まといを連れてそんなこと言って」

 

 男たちはわざとらしく武器を構える。

 要求を拒否すればどうなるのかを分かりやすく教えてくれているようだ。

 

「なんと言われようともだ」

 

 マサヨシも剣を抜く。

 

「ふん……やってしまえ。何人か殺せば大人しく従うだろう」

 

 終末教ではなさそうだが、かなり容赦ない言葉が聞こえてきた。

 

「マナカ先生!」

 

「はい!」

 

 イオリがインベントリから手のひらにギリギリ収まるぐらいの大きな丸いものを取り出した。

 上部にあったスイッチのようなものを押すと、丸いものの側面は広がって中から光が漏れ出した。

 

「なんだあれは?」

 

 トモナリたちを覆うようなドーム状のバリアが張られた。

 

「オウルグループが作った簡易安全地帯発生装置の試作品です!」

 

 イオリが出したのは簡易安全地帯発生装置というものだった。

 要するにバリアを作り出して内側にいる人を守るもので、オウルグループが製品化を目指して作ったものの試作品を今回提供されていた。

 

「きゃあ!」

 

 男の一人が突然動いてバリアを殴りつけ、拳を弾き飛ばすバチリと音がした。

 近くにいた女の子が驚いて一歩下がるけれど、バリアは破壊されずに無事だった。

 

「一年生は真ん中で固まれ! 二年生は中で一年生を守れ! 教員は相手を倒すぞ!」

 

 運悪く、今いるところは携帯などの電波が届かない。

 外部に助けを呼ぶことはできない。

 

「学長! 俺も行かせてください!」

 

「……分かった」

 

 バリアの中では戦えない。

 トモナリが直談判するとマサヨシは悩まし気に眉をひそめて、小さく頷いた。

 

 教員はマサヨシを含めて四人。

 男たちは十数人いて、数では明らかに劣る。

 

 トモナリの実力ならば、とマサヨシは思った。

 

「なら私たちも……」

 

「君たちは……」

 

「学長!」

 

「…………君がそういうのなら」

 

 トモナリは目で訴えかけた。

 マサヨシが言いたいことは分かっている。

 

 トモナリに比べてミズキたちは一つ実力が下だと言わざるを得ない。

 リスクが大きく戦うことを許可できない。

 

 けれどもトモナリはみんなも一緒にと思った。

 男たちの実力が分からないので戦うリスクもあるが、戦わねば人数が少なすぎるというリスクもあるのだ。

 

 ミズキたちなら戦える。

 トモナリはそう思った。

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