ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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覚醒者もいい人ばかりではない2

「一年生はこの中で固まっているように! 二年生は俺たちと共に戦うぞ」

 

「よし、みんなも行くぞ。怪我すんなよ? 怪我したらトレーニングの強度上げるからな」

 

「は、はは……頑張るよ」

 

 トモナリの目を見て冗談を言っているわけじゃないとコウは察した。

 せめて自分だけでも怪我しないようにしなきゃなと思った。

 

「先輩! この状況は……」

 

「ハルカ」

 

 自分が出ればそれで丸く収まるのではないか。

 狙われていることを分かっているハルカの中にはそんな思いがあった。

 

 回帰前にこんなことがあったのか、あるいはあったとしてどうやって乗り越えたのかは分からない。

 だがきっとどうにかして乗り越えたのだろう。

 

 トモナリの行動によって未来は変わっている。

 今の状況も回帰前とは違っている可能性もある。

 

 ハルカを狙ってのことかもしれない。

 しかしトモナリの行動が流れを変えて、危機的状況を生み出しているのだとしたらトモナリにも少しぐらいは責任がある。

 

「お前のせいじゃない」

 

 多少の責任というやつはあるかもしれない。

 けれどもなんにしても悪いのは襲いかかってくる連中だ。

 

 トモナリはハルカの頭に手を乗せて撫でる。

 

「それに後輩を守るのは先輩の役目だからな」

 

 なんにしてもハルカは未来のためにも必要な人である。

 訳の分からない連中に引き渡すなんてことはしない。

 

「あっと……悪い!」

 

 ヒカリにやるようにして自然とハルカの頭を撫でてしまった。

 女の子の頭を撫でるなんてことを、普通はやってはいけないことなのはトモナリでも知っている。

 

「いえ……大丈夫…………です」

 

 ただハルカは嫌がるでもなく顔を赤くしてうつむいていた。

 

「ジー」

 

「ヒカリ?」

 

「ズルいのだ」

 

 ヒカリがトモナリの頬に顔をつけるようにして険しい目をしている。

 

「戦いが終わったら褒めてやるから」

 

「ステーキもつけるのだ」

 

「分かったよ」

 

 トモナリはヒカリが不機嫌な理由をイマイチ分かっていない。

 

「それじゃあ行くぞ!」

 

 周りを囲む男たちはバリアを壊そうと攻撃し始めている。

 バリアだって万能ではない。

 

 強い攻撃に晒されれば破壊されてしまうし、エネルギーが尽きればバリアが解除されてしまう。

 トモナリたちはバリアの中から飛び出す。

 

「ぐわっ!」

 

 トモナリはバリアを攻撃している男に出ていきながら剣を振った。

 バリアに集中していた男はあっさりとトモナリの剣に斬り倒された。

 

「ち、血が……」

 

 バリアの中では悲鳴が上がっていた。

 モンスターと人は違う。

 

 流石に人が倒される光景は一年生にとって衝撃的であった。

 当然ながら覚醒者の中でも人と一切戦わない人もいる。

 

 モンスターに仲間がやられることによって血を見ることがあっても、人同士の命のかかった争いなんかそうそう見るものではない。

 

「このガキ!」

 

「おじさん」

 

 サーシャは盾で剣を受け止めながら反撃を繰り出す。

 トモナリたちのことをただのアカデミーの生徒と侮るなかれ。

 

 決して望んだものではないけれど、トモナリたちも対人戦闘の経験がある。

 終末教というもっと厄介な相手を敵にして生き残ってきた。

 

 人と戦うことに慣れているなんてこともないけれど、ためらうと自分や仲間が危険に晒されることを知っている。

 

「チッ……思っていたよりやるな」

 

 男たちのリーダーは状況を見て舌打ちする。

 大人しくハルカを渡すとは考えていない。

 

 誰か直接人質にでもできれば終わるだろうと思っていた。

 けれど見たこともないものを使ってバリアを作り出し、二年生まで動員して抵抗している。

 

 なんなら二年生を人質にすればいいとも考えたが、トモナリたちの動きは悪くない。

 能力そのものも低くはなく、人と戦うことにためらいもない。

 

「面倒だが俺が出る。お前らは邪魔な教員どもが来ないように引きつけろ」

 

「はっ、わかりました!」

 

「さて……イキって出てきたこと後悔させてやるよ」

 

 リーダーの男が動き出す。

 狙うは一人少し外れたような位置で戦っているトモナリだった。

 

「トモナリ、来るのだ!」

 

「うっ!」

 

 リーダーの男の攻撃をトモナリはルビウスで受け止める。

 けれど思っていたよりも力が強くてトモナリは大きく押し返されてしまった。

 

「トモナリ君!」

 

「こっちは大丈夫だ! お前らはそのまま戦え!」

 

 心配するようなマコトの声にトモナリは振り返りもせずに答える。

 

「ふっ、余裕だな。たかだか学生が俺に勝てるとでも?」

 

 男たちの強さの質は様々だ。

 最初にトモナリが斬り捨てた男は明らかに弱かったけれど、男たちの中にはレベルの高い強そうな人も混じっている。

 

 マサヨシたちがなんとか強そうな相手とは戦ってくれているが、手が回りきっていない。

 トモナリが対峙するリーダーの男もレベルが高く、強そうだ。

 

 余裕なんてない。

 

「……まあせんせー方のこと信じてますからね」

 

 一人で戦うには危険な相手かもしれないが、今はミズキたちもいればマサヨシたちもいる。

 耐え抜けばきっと助けに来てくれるだろう。

 

「ちょっと試したいこともあったしね」

 

 それにもう一つトモナリには目的があった。

 

「あんたの相手は厳しそうだ」

 

 力を見るに高レベルの覚醒者である。

 能力値が結構高めになってることは一撃だけでも推測できる。

 

 しかしそうした相手は多くの場合スキルの方があまり良くない傾向にありがちだ。

 スキルも能力も高いという人も当然に存在はするが、スキルがいいなら能力は低め、あるいは能力が優れている場合にはスキルが微妙だったりする。

 

 リーダーの男もスキルは持っているだろう。

 ただ隠し玉的な強力なスキルを持っている確率は低い。

 

 そもそもそんな能力があったならこんな真似していないで真っ当に稼いでいるだろう。

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