ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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星読の巫女

「天明教……ねぇ」

 

 ハルカが狙いなことは分かっていたが、話を聞き出してもその通りであった。

 そして男たちはフリーで活動していた覚醒者で、汚いことにも手を染める違法覚醒者だった。

 

 個人的な理由でハルカを狙ったわけではなく、雇われた人たちである。

 雇った相手は天明教という宗教組織。

 

 終末教なんかと近いような名前をしているが、終末教が教とついてるにも関わらず宗教的な組織とはちょっと違うのに対して、天明教は教祖のいる新興宗教であった。

 ただ今では人の不安を受け止めて、不確定な予言とやらで人々を惑わずようなあまり良い集団ではなくなっている。

 

「私の母は天明教の巫女なんです……」

 

 課外活動部の部室でハルカは重たく口を開いた。

 ハルカ個人にも関わることなので、全体にされた説明はなんとなく個人や細かい事情が特定できないようにぼかされていた。

 

 ただ今回関わった人にはちゃんと説明したいとハルカ自身が申し出た。

 天明教にハルカが狙われたのは偶然ではない。

 

 ハルカと天明教には関わりがある。

 

「巫女?」

 

「予言を受けし者……ということらしいですが、私にはよく分かりません……」

 

 ハルカの母親は天明教であった。

 しかも巫女という重要な立場にある。

 

「私は父に連れられて天明教から離れました」

 

 母親は完全に天明教にのめり込んでいた。

 ハルカの父親はそれをどうにかしようとしたのだけど失敗。

 

 最後にはハルカだけでもと、ハルカを連れて天明教から逃れたのだ。

 

「それからは父と叔父さんが私のことを守って育ててくれました」

 

 父親は覚醒者であった自分の弟を頼った。

 天明教は次代の巫女候補としてハルカを狙い、二人はハルカを守った。

 

 今は父親は病に倒れて叔父が一人でハルカを育てる形になっている。

 

「……自分で身を守る力を身につけるために私は覚醒者になったんです」

 

 このまま守られているだけではいけない。

 だからハルカは覚醒者になろうと決め、アカデミーに入学してきた。

 

 ついでにアカデミーならば天明教も手を出せないだろうと思ったのだ。

 

「だけど……私の職業は星読の巫女……向こうからすればまるで天明教の巫女となるのにふさわしいように見えるのでしょうね」

 

 どうせなら平凡な職業でも良かった。

 なのにハルカに与えられた職業は星読の巫女というものだった。

 

 巫女の娘に与えられた職業が巫女である。

 半ばハルカのことを諦めていた天明教はそのことを知って再びハルカを狙ったのだ。

 

「私のせいで襲われてしまって……アカデミーにいる資格なんて……」

 

「ハルカ」

 

 うつむいたハルカは泣き出しそうな顔をしている。

 ヒカリを膝に抱えて座るトモナリが声をかけると、ハルカはビクリと肩を振るわせた。

 

「悪いのは天明教って奴らだ。お前じゃない」

 

「先輩……」

 

「お前がそいつらのせいで人生を棒に振ることはないんだ。お前がいたいところにいればいい。そしてお前がここにいたいというのなら俺は受け入れるし、仲間として守るよ」

 

「どうして……先輩はそんなに優しくしてくれるんですか……」

 

 潤んだ瞳でハルカがトモナリを見つめる。

 

「仲間は見捨てない。困ってるなら助けるし、居場所になってほしいなら俺が居場所になってやる。ハルカはもう俺の仲間だ。お前が離れたいと思わない限り……俺はお前の味方でいるよ」

 

 回帰前、有名な人だけではなく、無名でありながらも多くの英雄がいた。

 モンスターと戦うだけでなく、人に寄り添い、人を助けた人々もいる。

 

 トモナリもそんな英雄たちに助けられたことがある。

 モンスターを倒すことで英雄となるのにも憧れはあった。

 

 しかし孤独な英雄は皆どこかで消えていってしまった。

 手を取り合い、個としての英雄ではなくみんなで英雄になれる者、それがトモナリの理想だった。

 

 ハルカは未来予知という強力な力を持っている。

 ただハルカがどんな力を持つか知らなくとも、仮に平凡な力だったとしても、仲間ならばトモナリが見捨てることはしない。

 

「これが俺だ。去る者は追わない。でもここはハルカ、もうお前の居場所なんだ」

 

「せ、先輩……」

 

 もうハルカの涙は決壊寸前になっている。

 

「ナナ……」

 

 隣に座ったナナがハルカの肩をそっと抱く。

 

「いいんじゃない? 誰もあなたに出ていけなんて言わないわよ」

 

 今集まっているのは課外活動部の一年生と二年生である。

 ハルカがみんなのことを見ると誰も冷たい目をしていない。

 

 それどころか温かい目や心配しているような顔をしている人もいる。

 

「僕もトモナリに出会って友達になったのだ。ハルカも友達なのだ!」

 

「ありがとう……ございます」

 

 ハルカの涙が溢れるとナナはハルカのことを抱き寄せる。

 

『いい信念だな。主君だけではない。主君が守ろうとするもの……この私も守るとしよう』

 

 頭の中でエドの声が聞こえる。

 回帰前にハルカがどう天明教を乗り越えたのかトモナリは知らない。

 

 でもハルカはそれを乗り越えて最後まで戦っていた。

 今回はトモナリを含めてナナやみんなもいる。

 

 きっと今回も乗り越えられる。

 

「たくさん泣くのだ。たくさん泣いたら、今度は笑えばいいのだ!」

 

「うぅぅ〜ヒカリ先輩!」

 

「はっは〜! 僕は優しい先輩だからちょっとだけよしよししてあげるのだ!」

 

 ハルカはヒカリを抱きしめる。

 あんまりトモナリ以外の人に抱きしめられることが好きではないヒカリも、今ばかりは笑顔でハルカのことを許して頭を撫でてあげていたのだった。

 

 ーーー第五章完結ーーー

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