ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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対極の白2

「こんなしっかりした防寒具用意してくれた理由がようやく分かったね……」

 

 チラチラと降っている雪にコウは手を差し出す。

 手のひらの上に落ちた雪が一瞬で溶けて消える。

 

 もちろんのことであるが、軽くゲートの話は聞いていた。

 寒いと言っていたけれども、想像以上であった。

 

『寒いところは嫌いだ』

 

 ルビウスの深いため息が聞こえてくる。

 火を扱うレッドドラゴンのルビウスは寒さが苦手だった。

 

「この周辺には特に障害となるようなものはありませんが、時々雪が深くて足を取られるところがあるので気をつけてください」

 

「分かりました」

 

「今回私たちはアイゼンさんに従うように言われているので、何かありましたら遠慮なく申しつけください」

 

 今回ゲートの中に入ってきているのはトモナリたちだけではない。

 オウルグルーブからも二人、支援の覚醒者が合流している。

 

 岩谷総二郎(イワヤソウジロウ)と伊達恵(ダテメグミ)という男女の覚醒者だ。

 ダテはアカデミーの卒業生でトモナリたちの先輩に当たる。

 

 課外活動部や特進クラスではなく、アカデミーの一般クラス出身だ。

 イワヤはアカデミー出身ではないが、アカデミー出身かどうかで何か変わることもない。

 

 二人ともレベル30代の覚醒者である。

 今回はトモナリたちの連携を考えて、イワヤとダテはトモナリの指示に従うことになっている。

 

 トモナリももうレベル30を超えているのでレベル的には二人とも差はない。

 

「それにしても曖昧な攻略条件だな……」

 

 今一度ゲートの情報を表示する。

 攻略条件は冬の結晶を破壊しろとなっている。

 

 冬の結晶が何を指しているものなのか判然としない。

 何か冬の結晶というアイテムがあって、それを壊すというのが一見して読み取れる内容だろう。

 

 ただ正面通りではない可能性もある。

 冬の結晶が何かのモンスターの存在である可能性もある。

 

 そうなるとモンスターを倒せと言い換えても同じ内容になるのだ。

 冬の結晶がどんなものなのか、情報もない。

 

 大きさも形も分からず、どこに冬の結晶があるのか今のところ想像もつかない。

 

「ううぅぅ〜早く行こうよ!」

 

 ミズキも寒さには弱いらしい。

 立ち止まっていると余計に体も冷えてくるのでトモナリを促す。

 

「事前調査では何か?」

 

 トモナリはイワヤのことを見る。

 オウルグループも素人ではない。

 

 資金力もあるのでもちろんゲートの調査も行っているだろうと思った。

 

「ゲート正面を北側として、そのまま北に進んでいくと雪山のようなものがあります」

 

「……そこが怪しいですね」

 

 何かがある場所に、大体何かがある。

 雪山があるならおそらくそこに何かはあるだろう。

 

 トモナリは雪山に向かっていくことにした。

 

「寒いよぅ……」

 

「火でも出すかい?」

 

 ミズキは自分を抱きかかえるようにしている。

 寒いといえば寒いけれど、ミズキは極端に寒さが苦手なのだなとトモナリは少し呆れてしまう。

 

「ヌフフ……こうすればあったかいのだ」

 

「いーなぁーヒカリちゃん!」

 

 ヒカリはトモナリの胸元から頭を出している。

 ヒカリサイズの防寒具もオウルグループは用意してくれていたのだが、ヒカリはトモナリの防寒具の中に入っていた。

 

 多少防寒具のサイズ的にキツイが、トモナリも温かいしヒカリも温かい。

 頭だけ出しているヒカリは可愛らしく、ミズキも自分のところに来てくれないかなと思った。

 

「コウが魔力を使うことはないよ。ミズキ、戦いの最中みたいに魔力を体に巡らせるんだ」

 

「魔力を? やってみる」

 

 コウにとって魔力は大切だ。

 緊急事態なら体を温めるのにコウが火を出すことも考えるが、今はそんな段階ではない。

 

 ミズキはトモナリに言われたように魔力を体に巡らせる。

 

「あっ、なんだかポカポカしてきた!」

 

「魔力は体を保護してくれる。こうして体に巡らせれば寒さにも少し抵抗力がつくのさ」

 

「これならなんとか耐えられそうかな! ありがとね!」

 

 魔力を体に巡らせればそれだけ魔力は使う。

 ただその消費量も平常時に比べて使うというぐらいで大きな浪費ではない。

 

 むしろ鍛えたいなら常に魔力を体に纏っているぐらいが良く、魔力を体に巡らせると体を強化してくれて寒さなんかにも強くなるのだ。

 

「……ということは? トモナリ君、最初から?」

 

「もちろん」

 

「えっ! ずるっ!」

 

「最初の頃にそうした効果もあるって教えたろ!」

 

「知らないし! ……まさかみんなも?」

 

「う、うん。魔力を体に巡らせてるよ」

 

 こんな方法があるのならトモナリも当然にやっているだろうとミズキは気づいた。

 どうして寒がっているのに教えてくれなかったのだと怒るが、他のみんなも同じく体に魔力を巡らせていた。

 

「じょーしきだぜ!」

 

「ああ! ユウトに言われると腹立つ!」

 

「なんでだよ!」

 

 マコトや魔法使いであるコウも同じく魔力を巡らせていた。

 そして普段抜けているところがあるユウトも同じだった。

 

「トモナリに習っただろ? 俺はちゃんと覚えてたからな!」

 

 一年生の時、魔力の応用として寒さ対策を教えたことがある。

 ユウトも含めてみんなはちゃんと覚えていたのだけど、ミズキは寒さにそんなことすっかり忘れていたのだ。

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