ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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冬を止めろ1

「雪が降ってきたな」

 

 これでもチラつくことがあった雪が本格的に降ってきた。

 気温が下がってはいないが、少し風も出てきたので寒さは厳しく感じられる。

 

 何回かミニイエティに襲われたものの、特に問題なく対処できている。

 おかげで一年生たちも少しレベルアップしていた。

 

「視界が悪くなる。より気をつけていこう」

 

 雨や雪は資格に入る情報を多くして、警戒の邪魔をする。

 まだ音が鳴らない分雪の方がマシかもしれないが、雨の粒よりも大きな雪は視界にチラチラとして注意力を散漫にしてしまう。

 

 風もある。

 吹き飛ばされた雪が目に入りそうになって、ほんの一瞬まぶたを閉じた時に敵が現れるかもしれない。

 

 まだクラスの低いダンジョンだからそんなことはないだろうが、ないとも言い切れない。

 

「……冷静ですね」

 

 イワヤはトモナリに驚いている。

 ほんの少しの不満はあった。

 

 なぜ自分が年下の、まだ学生身分の覚醒者の指示に従わねばならないのかと。

 しかしトモナリの指示は的確だった。

 

 イワヤに対しても無理に押さえつけるような指示も出さないし、周りのことをよく見ている。

 環境の変化を感じ取って周りに注意を促す様はまさしくリーダーの姿である。

 

 まるでベテランの覚醒者のようだと今は感心していた。

 

「本来こんなの柄じゃないんですけどね」

 

 トモナリは困ったように笑う。

 気づいたらリーダーのような役割を担っていたし、周りもそれに従ってくれる。

 

 回帰前の経験があるから多少知識が豊富なだけで、トモナリは自分がリーダーシップに優れているとは思っていなかった。

 むしろ誰かが周りを見て指示を出してくれるなら自由に動けるのに、と思うこともある。

 

 だが今のところトモナリが指示を出している方がみんなが安全に戦える確率が高い。

 それだけの話である。

 

「いえ、見習うべきところがあります」

 

 褒められても良い気にならず、謙虚さもある。

 すぐにメッキが剥がれるだろうと思っていた自分が恥ずかしくなる。

 

「流石課外活動部の子だね」

 

 ダテも感心したように頷いている。

 一般クラスと特進クラスは違い、さらにその中でも課外活動部に選ばれた子はもう一つ上のステージにある。

 

 そんなことを言われていた。

 一般クラスだとあまり課外活動部の子と絡むことはなく、噂が本当なのかどうか半信半疑であった。

 

 けれどもトモナリの能力を見ればウソではなかったと納得できる。

 

「ドヤァ!」

 

「そんなにおだてないでくださいよ。調子に乗っちゃうじゃないですか」

 

 トモナリの服の中から顔を出しているヒカリが嬉しそうな顔をしている。

 トモナリが褒められれば、それはすなわちヒカリも褒められたということなのだ。

 

「君たちも良いコンビだ」

 

「うんうん、それはそうなのだ」

 

 ヒカリの尻尾が振られているのをトモナリはお腹で感じていた。

 

「うっすらと雪山が見えてきましたね」

 

 降りしきる雪の向こうに山の影が見えている。

 雪が降ってきたという環境の変化を含めて考えても雪山に何かがあることは間違いなさそうだ。

 

「冬の結晶……ってなんだろうね?」

 

「さあな。きっと結晶があるんだろうけど、そのまま置いてあるかは分からないな」

 

 簡単に破壊できるならその方がいい。

 ただ破壊してくださいとポンと置いてあるはずはない。

 

 モンスターが守っている場合やモンスターの体内ある場合もある。

 

 周りの状況からどこにありそうかしっかり見極めていかねば見逃してしまう可能性もある。

 

「吹雪いてきたな」

 

「うぅ……寒いよう」

 

「しょうがないのだ。スポっ!」

 

「ヒカリちゃぁーん!」

 

 空が暗くなり、雪と風が激しくなってきた。

 もはや吹雪といっていい状態になっている。

 

 気温もいくらか下がったようで、防寒具を着ていても体が冷えてきてしまう。

 トモナリは体に巡らせる魔力を多くして対策していたが、寒さに弱いミズキは辛そうだった。

 

 見かねたヒカリがミズキの服の中に入る。

 

「キツイのだ……」

 

「ちょ……女の子にそういうこと言っちゃダメだよ! えっと待ってね!」

 

 防寒具のサイズ的に余裕があったトモナリに比べて、ミズキの方はジャストサイズで余裕がない。

 下から入って頑張ってみたけれど頭の先しかヒカリは出ない。

 

 ミズキは慌ててもう一つ上のサイズの防寒具を取り出す。

 

「これでどう?」

 

「んー、まあよしなのだ」

 

 ヒカリがミズキの胸元から頭を出す。

 まだ少しキツイ感じはあるけれど、おかげで固定されたような安定感はある。

 

「あったかぁ〜」

 

「うやらま」

 

 ヒカリは意外と体温が高くて温かい。

 冷たいところだとウロコがひんやりしていることもあるが、温めるとすぐに温まる。

 

 サーシャは服の中に入るヒカリを見て羨ましそうに目を細めていた。

 

「ふふ、雰囲気もいいのね」

 

 ダテは思わず笑ってしまった。

 オウルグループの覚醒者チームも雰囲気は悪くない。

 

 しかしやはり仕事での付き合いであるし、トモナリたちのような和気藹々とした雰囲気まではいかない。

 仲間であり友達である結びつきはダテも懐かしい学生時代を思い出すような気分であった。

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