ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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冬を止めろ4

「中に何かない?」

 

 ミズキは目を凝らす。

 雪の結晶の真ん中に何かが入っているように見える。

 

「本当ですね……人?」

 

 みんなも目を凝らしてみる。

 雪の結晶の中に入っているのは人のような姿をしているとマコトはつぶやく。

 

「確かにそうも見えんな」

 

「ただ小さい」

 

「うん、そうだよな……」

 

 距離はあるといっても雪の結晶の大体の大きさは分かる。

 雪の結晶そのものは人ほどの大きさがあって大きい。

 

 しかし真ん中部分は人の頭よりも大きいぐらいしかない。

 その中に入っている人っぽいものの大きさはせいぜい人の頭程度になるだろう。

 

 どう見たって人のサイズにはならない。

 

「あとは……あれだよな」

 

「どー見たってボスだよね」

 

 見るべきところはもう一つある。

 雪の結晶の向こう、洞窟の奥に白いものが見える。

 

 パッと見るとミニイエティかなと思うのだけど、ミニイエティよりも大きい。

 雪の結晶の向こう側に座っているので、見にくくサイズ感もわかりにくいのだけど、下手すると人よりも大きなサイズがありそうだ。

 

 状況的にゲートのボスだろう。

 

「……まあでも戦うこともないかもな」

 

「ん? どして?」

 

 トモナリの言葉にサーシャは首を傾げる。

 

「ゲートの攻略条件は冬の結晶を破壊しろだ。ボスを倒せじゃない」

 

「あっ、そっか」

 

 ゲートの多くが攻略するためにモンスターを倒す必要がある。

 だからモンスターを倒しさえすればいいと、ついつい考えがちである。

 

 しかしモンスターの討伐ばかりが攻略の条件ではない。

 モンスターを倒すこと以外が求められるゲートもある。

 

 もちろんモンスターを倒してもいい。

 ただモンスターの相手をしているとかなり厳しいゲートもあって、そうしたゲートはモンスターを倒すことをやめて攻略条件に沿って動いた方が楽に済むこともある。

 

 今回のゲートは冬の結晶を破壊すればいい。

 目の前に見えているものが冬の結晶かはまだ明らかではないものの、状況的には間違いない。

 

 トモナリたちは積極的にモンスターを倒して死体を持ち帰ってお金を稼ぐつもりはない。

 ならばボスモンスターと戦わず雪の結晶を破壊して、ゲートの攻略を終わらせる方がいいのである。

 

「確かにその通り。さっさと帰りたい」

 

 無言だったサーシャだが、寒くないわけじゃない。

 しっかり寒かった。

 

 だから早く帰りたい。

 

「マコト、いけるか?」

 

 ひとまずボスイエティはトモナリたちに気づいていない。

 位置関係としても雪の結晶の向こう側にいる。

 

 今なら気づかれずに雪の結晶を攻撃できる。

 魔法という手段もあるが、気づかれて防がれるような可能性がある。

 

 ここはマコトがこっそり近づいて雪の結晶を破壊できないかとトモナリは考えた。

 

「やってみる」

 

 マコトはトモナリの目を見て頷いた。

 

「インザシャドウ……闇に隠れる」

 

 マコトは地面に手をつく。

 するとマコトの体がゆっくりと影の中に溶け込んでいく。

 

 いつ見ても良いスキルだなとトモナリは思う。

 直接相手を攻撃したり、防御するスキルではないが、隠れられるのはかなり強力なスキルとなる。

 

 黒くて丸い影が地面を移動していく。

 都合上完全に姿を隠すことはできない。

 

 他に影があればその中に紛れ込むことはできるが、影のない場所では影だけが残ってしまう。

 これは仕方のない弱点だ。

 

「何があるか分からない。すぐに飛び出せる準備はしておけよ」

 

 バレない間に破壊してしまえばいいとはいうものの、何もなく破壊できるだろうかと疑問もある。

 マコトに任せっきりではなく、異常事態があればすぐに助けに行けるように備えておく。

 

「ふぅ……」

 

 影は雪の結晶の前で止まる。

 影の中のマコトは緊張で早まる鼓動を抑えるように大きく息を吐き出す。

 

「いくぞ……」

 

 最初はレベル的、能力的に遅れをとっていたマコトも努力を重ねてミズキたちとの差はなくなった。

 やや消極的なところは残っているけれども、自信がなくて何もできないと思っていた時とは大きく変わっている。

 

「はあっ!」

 

 マコトは影から飛び出して雪の結晶にナイフを振る。

 

『クスクス……ダメだよ』

 

 影から飛び出したマコトの耳に何かの声が聞こえてきた。

 

「えっ!?」

 

 ナイフに何の手応えもない。

 目の前にあったはずの雪の結晶が消えた。

 

 ふっとマコトが見上げると雪の結晶がそこにあった。

 

「なんだ……?」

 

 雪の結晶が動いた。

 一人でに動いたのかと思ったけれど、よく見ると雪の結晶を持ち上げている何かがいる。

 

『壊しちゃダメだよ』

 

『これは大切な……友達』

 

「あれは……精霊? 妖精?」

 

「それって何か……違うの?」

 

「違うもんだけど、今は説明してられない。マコト! 気をつけろ!」

 

 雪の結晶を持ち上げているのは人のような姿をしたモンスターであった。

 しかしサイズは手のひらほどしかなく、背中には半透明の羽が生えている。

 

 声の正体はあれだったのかとトモナリは察した。

 精霊や妖精は比較的人と敵対しにくいモンスターである。

 

 精霊と妖精の分類は難しいが、精霊は火や水などの属性を司る魔力の塊のような存在である。

 対して妖精は魔法を使うものの、精霊のように属性を司ってはいない。

 

 妖精はイタズラ好きとかそんな特徴もあるけれど、精霊には階級のようなものがあるのが大きな違いかもしれない。

 低級精霊になると妖精も精霊もあまり違いはないが、精霊は成長してより高位の存在になる。

 

 大精霊になると人と変わらないぐらいの大きさになって、かなり強い力を持つ。

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