ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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冬を止めろ5

「うわっ!」

 

 クスクスと声は聞こえていたものの、トモナリたちに手を出してはこなかった。

 妖精ではなく精霊だろうとトモナリは推測していた。

 

 ただ今は精霊の存在よりも、マコトの存在に気づいて動き出したボスイエティの方が問題である。

 ボスイエティはマコトに襲いかかった。

 

 ブンブンと腕を振り回すボスイエティの攻撃をマコトはなんとか回避している。

 

「まずはあいつから処理するぞ!」

 

 精霊がなぜ雪の結晶を守っているのかは分からない。

 しかしボスイエティを相手にしながらでは雪の結晶を狙うのも容易なことではなく、ボスイエティを倒すことが優先だとトモナリは指示を出す。

 

「あぶっ……」

 

「させないよ」

 

「た、助かりました!」

 

 スキルを使ってほんのりと体を発光させたサーシャが、マコトとボスイエティの間に割り込んで攻撃を受け止める。

 

「意外と力強い」

 

 攻撃を受け止めたサーシャは顔をしかめる。

 ミニイエティでは余裕があったけれど、ボスイエティの攻撃は受け止めるのにギリギリだった。

 

 スキルを発動させておかなかったら危なかったかもしれない。

 

「ミズキ!」

 

「分かってるよ!」

 

 トモナリとミズキが飛び出す。

 ボスイエティの左右から迫り、剣と刀を振るう。

 

『冬が守護者を守ります』

 

 ボスイエティは腕を上げて二人の攻撃をガードする。

 腕を斬りつけられて血が飛ぶ。

 

 だが次の瞬間トモナリたちの前に表示が現れて、ボスイエティの傷が凍りついていく。

 

「なんだ?」

 

「トモナリ! ボッ!」

 

 ボスイエティがトモナリに襲いかかり、ヒカリが火の玉を放って牽制する。

 横から飛んでくる火の玉をボスイエティは飛び退いてかわす。

 

「ふっ!」

 

 着地地点を予想して動いていたダテは槍を突き出す。

 魔力の込められた槍はボスイエティの肩の肉をえぐった。

 

「また凍りついた……」

 

 攻撃されたそばからボスイエティの傷が凍りついていく。

 

「腕の傷が治ってる!」

 

 一歩引いたところからボスイエティの観察をしていたコウが気がついた。

 ボスイエティの腕の氷が剥がれ落ちて、トモナリとミズキがつけたはずの傷が治っていたのである。

 

「高い再生能力があるのか」

 

 ただ強いだけのイエティかと思ったら厄介な能力を持っているものだ。

 

「一気に攻撃するぞ!」

 

 再生能力が高いなら再生できないようにするか、再生が間に合わないように攻撃を叩き込み続けるしかない。

 幸いボスイエティの能力は対処できないほどに高くはなく、十分に戦える。

 

 サーシャとマコトで引きつけている間に、トモナリ、ミズキ、イワヤ、ダテでボスイエティを取り囲むように移動する。

 一年生たちにはコウを守ってもらっている。

 

 今はフォローしている余裕もないのでしょうがない。

 

「いくよ!」

 

「ボーッ!」

 

 コウが火の魔法を放ち、ヒカリもボスイエティの後ろに回り込んでブレスを吐き出す。

 前後から炎が迫りきて、ボスイエティは飛び上がる。

 

「今だ!」

 

 空中では身動きが取れない大きな隙となる。

 トモナリたちはボスイエティに一斉攻撃を仕掛ける。

 

 まず飛びかかったのはミズキ。

 刀による鋭い一撃はボスイエティの脇腹を斬り裂く。

 

 続いてダテとイワヤが攻撃する。

 ボスイエティは奇声を上げながら縮こまるようにしてガードした。

 

 本当に一斉に攻撃してはそれぞれの動きの邪魔になる。

 一斉攻撃しつつも互いの邪魔にならないように、トモナリはほんの少し攻撃を遅らせた。

 

「いける……!」

 

 ちょうどトモナリはボスイエティの後ろから攻撃になった。

 正面はガードされているから難しいが、後ろからなら頭や首を狙うことができる。

 

『冬が守護者を守り、力を与えます』

 

 視界の端で表示が現れたけれど気にしている暇もなくトモナリは剣を振り下ろす。

 

「……なに!」

 

 頭を叩き割ろうとしたトモナリの一撃は、突然現れた氷によって防がれてしまった。

 

「なんだあれ? みんな、一旦距離を取るんだ!」

 

 傷だけではなくボスイエティの全身が凍りついていく。

 最後にはまるで氷の鎧をまとったようになってしまった。

 

『クスクス……無駄だよ』

 

『そう、倒せないよ』

 

 雪の結晶を持ち上げている精霊がバカにしたようにクスクスと笑う。

 

「サーシャ!」

 

 氷の鎧をまとったボスイエティが動き出す。

 一気にサーシャと距離を詰めると盾を殴りつける。

 

 サーシャも油断せずに受け止めたのに殴り飛ばされた力を受け止めきれずに大きく後ろに下がらされた。

 

「スキル水流撃!」

 

 横からダテがスキルを使った一撃を放つ。

 水をまとったダテの一撃がボスイエティの胸を狙う。

 

「なっ!」

 

 ガキンと甲高い音が響き渡る。

 ダテの一撃は氷の鎧の表面を軽く割っただけで止められてしまった。

 

「うっ!」

 

 ボスイエティがダテに向かって腕を振る。

 間一髪回避したものの、拳にもまとわれている氷が掠めて頬が軽く切れる。

 

「これは厳しいな」

 

 槍の突破力は大きい。

 刺突における貫通力は剣よりも高く、スキルまで使った攻撃なら強い一撃だった。

 

 なのにボスイエティに傷をつけることもできなかった。

 氷の鎧は相当硬く、今のトモナリたちの攻撃力で破壊するのは難しそうだ。

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