ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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壊れてしまった姉2

「さて……ん? あれは……」

 

 周りの状況を確認したイヌサワはホール奥の扉が開くのを見た。

 真っ白な髪をしたオートマタが扉から出てくる。

 

 フラフラカクカクとした動きはなんとなく白髪のオートマタの異常さを表しているかのよう。

 

「トモナリ君! ……くそっ!」

 

 白髪のオートマタがどう動くのか注視していた。

 ピタリと一瞬動きを止めた白髪のオートマタは急に走り出す。

 

 その先にはトモナリがいる。

 イヌサワも駆けつけようとするが、オートマタに襲い掛かられて身動きが取れない。

 

「グッ!」

 

 白髪のオートマタの鋭く伸びた爪が目の前に迫り、トモナリはギリギリのところで受け止めた。

 トモナリの姿は変化している。

 

 エドとのドラゴンズコネクトを発動させていたのである。

 扉が開いて白髪のオートマタが見えた時点で、もう何かが起こると思っていた。

 

 回帰前にオートマタゲートの攻略情報は見ていたので、オートマタが減ってくるとボスとなるオートマタが出てくることは知っていた。

 四体のオートマタに狙われるのだから、これで終わるはずがないと備えていたのである。

 

 それでもギリギリだった。

 

「シンニュウシャヲ……ハイジョスル」

 

「よう……あんたがモーノか」

 

 ディーニたちは綺麗な服を着させられていた。

 対してモーノはボロ布をまとったようで、体の何箇所かは壊れている。

 

 顔も左目の周りがボロボロに剥がれていて、紫の目が剥き出しになっていた。

 赤い瞳の右目周りは綺麗なので対称的である。

 

「うっ!」

 

 トモナリの問いかけに答えることなくモーノは爪を振り回す。

 脇腹を切りつけられる。

 

 エドのコートはなんとか爪を防いでくれたが、エドがなかったらざっくりといかれていたかもしれない。

 

「ご主人様!」

 

「お兄様!」

 

 トモナリが押されているのを見てディーニたちも焦りを見せる。

 しかし四体のオートマタも意外と粘っている。

 

「お前たちは先に自分の相手を倒せ!」

 

 トモナリだって戦える。

 モーノを倒すのは厳しそうだが、持ち堪えるぐらいはできる。

 

「どりゃりゃりゃー!」

 

「ヒカリ、無茶するなよ!」

 

「僕もやれるのだ!」

 

 トモナリを狙うモーノをヒカリが攻撃する。

 煩わしそうに振り回される爪をかわして、ヒカリも爪で攻撃し返す。

 

「ディーニ……サントリ……シテトラ……ペンターゴ…………あの子……たちは……行かせない」

 

 ボロボロになっていない赤い目にほんのわずかな理性が宿る。

 

「どうして……あの子たちを連れ出そうとする!」

 

「うっ……」

 

 モーノの爪が頬をかすめる。

 

「ここにいるべき……もはや人で無くなった私たちは存在してはならないのだ!」

 

「だからディーニたちを閉じ込めていたのか?」

 

「そうだ!」

 

「私たちは人ではない……人だ……いや、ひとではない……ヒト……ヒト……」

 

 赤い瞳の理性が急速に失われていく。

 

「シンニュウシャヲハイショスル」

 

「速い!」

 

 モーノの速度が上がった。

 

『あまり受けすぎると持たないかもしれないな』

 

 モーノの爪でエドが切り裂かれる。

 ただの服ではないエドはすぐに修復されるけれど、それにだってトモナリの魔力を使う。

 

 そもそもドラゴンズコネクトを発動させて、維持するのにも魔力を使っている。

 ドラゴンズコネクトはスキルの中ではかなり燃費の悪い方であった。

 

 エドの損傷をもって防げるぐらいのダメージであるが、モーノの攻撃の回転は早く、油断しているとあっという間に魔力が尽きてもおかしくない。

 

「むぎゃっ!」

 

「ヒカリ!」

 

「だ、大丈夫なのだ!」

 

 ヒカリの爪とモーノの爪がぶつかりあった。

 力負けしたヒカリが床に叩きつけられて跳ねる。

 

「ヤバっ……!」

 

 バランスを崩したトモナリの首にモーノが手を伸ばす。

 

「目を覚ませ、姉さん!」

 

 火炎をまとった拳がモーノの頬を殴り飛ばした。

 駆けつけたのはサントリだった。

 

 少し焦ってオートマタを倒したのか、着ているドレスが破れて少しセクシーな感じになっている。

 

「テキハ……タオス。ミンナヲ……マモル」

 

 モーノの頬がポロポロと崩れる。

 相変わらず目には理性がなく、濁ったような瞳をしている。

 

「もういいんだ、姉さん……私たちだって守られるばかりじゃない!」

 

 サントリが火炎を放つ。

 モーノはそのまま火炎のど真ん中を突っ切って、サントリに爪を振り下ろす。

 

「お姉様こそ、もう休んで」

 

 サントリに襲いかかるモーノにペンターゴが斧を振り下ろした。

 モーノは身をよじりながら飛び上がって回避し、ペンターゴに蹴りを入れる。

 

「大丈夫?」

 

「ん、大丈夫」

 

 ぶっ飛ぶペンターゴをシテトラが受け止めた。

 

「姉様……確かにショックを受けたことも迫害されたこともあります。ですが私たちは子供ではありません。どこかに閉じ込めて守られているだけなんて耐えられないのです」

 

 気づけば四体のオートマタは倒されていた。

 誰か来てくれればと思っていたけれど、これで一気に戦いが優位になった。

 

「……ここはあなたたちの家……ここを、捨てるつもり?」

 

「人はいつか巣立つもの……世界が厳しくても己の世界に引きこもっては前に進めません」

 

「姉さん、私たちのことを思ってくれてるのは分かってるさ。でもさ……このままじゃいけないことは姉さんも分かってるはずだ!」

 

 ディーニたちは姉妹である。

 しかしディーニ、サントリ、シテトラ、ペンターゴの四人姉妹ではない。

 

 モーノを含めて五人が姉妹なのである。

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