ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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頼もしき学生たち2

「質の悪い魔力ですね」

 

 ディーニは魔力を吸収してため息をつく。

 いい魔力ほど変換の効率は良く、無駄なく吸収できる。

 

 モンスターの等級が低いために溜め込まれた魔力の質が悪く、一個の魔石から採れる魔力が少ない。

 魔力を吸収された魔石は透明さを失って、ただの石のようになってしまう。

 

 こうなるともう魔力もなくて使い道はないのだけど、ポイ捨てはいけないので回収して持って帰る。

 ディーニは一つでいいと言ったが、サントリは五つほど吸収していた。

 

「嫌な感じがするな」

 

「何かですか?」

 

 トモナリの呟きに一年生のハルカが反応した。

 嫌な感じと言われても何が嫌なのか分からない。

 

「モンスターが遠巻きに見てる」

 

「えっ?」

 

 ハルカは森の方を向く。

 崖下を歩いているが、相変わらず反対側は森が広がっている。

 

 なんの変哲もない森に見えるのだけど、デビルアームが遠くからトモナリたちのことを見てるのだ。

 気づかれにくいようにかなり遠くから見ていて、少しでも追いかけようとすれば逃げていってしまうだろう。

 

 バスを襲撃して真っ先に運転手を狙ったことといい、多少の知恵がありそうだとトモナリは思った。

 なんにしてもモンスターに監視されていて気分がいいはずがない。

 

「日が落ちてきたね」

 

 カエデが空を見上げる。

 バスならばとっくに廃村に着いていた頃だろうが、モンスターを警戒しながらの歩きでは移動に時間もかかる。

 

「ここで野営する」

 

 どれぐらいで着くのかまだわからない。

 日が落ちて夜暗い中移動するのはリスクが高い。

 

 まだ明るいうちに野営の準備をしておくことも大切な判断である。

 

「自然を破壊するのは気が進まないが……しょうがないな」

 

 テントなどの必要なものはインベントリに入れて持ってきてある。

 ただテントの設営も、崖にピッタリと沿うようにしてしまうとモンスターに囲まれた時に余裕がなくなってしまう。

 

 スペースや安全確保のためにも崖から少し離れておきたい。

 そこで森の木々の一部を切り倒した。

 

 根っこも引き抜き、魔法で軽く整地する。

 そして広くなって視界も確保できたところにテントを張った。

 

 もちろん切り倒した木々も無駄にはしない。

 先を尖らせるように削って地面に突き刺し、簡易的な柵にした。

 

「こ、こんな状況でバーベキューですか……」

 

「こんな状況だから、だよ」

 

 寝る準備ができたら次は食事の準備である。

 別にディーニやサントリに限った話ではなく、食事をとることは魔力の回復にも必要だ。

 

 状況からすると緊迫しているが、こんな時ほど食事をとって気を休めることが大事なのである。

 簡易的に食べられるものももちろん持ってきているが、料理できるような食材も持ってきている。

 

 廃村に行くつもりなので食材も割とたくさん持ってきてあり、今回は良いお肉、良い野菜を使ったバーベキューを楽しむ。

 お肉を焼きながらこれでいいのかとハルカは苦笑いを浮かべる。

 

 しかしトモナリは平然とした顔をしながらハルカの皿にお肉を乗せる。

 

「いつ戦いになるか分からない。食べられる時に食べて体力つけるんだよ」

 

「それに良い肉だぞ! うまうまなのだ!」

 

 状況によっては食事が唯一の楽しみなんてこともある。

 腹さえ膨れればいいという人もいるが、どうやって腹を膨れさせるかは非常に重要なのである。

 

「時には飯も喉を通らない時があるかもしれない。それでも食べるんだ」

 

 仲間が死んだり、絶望的な状況では食事なんてとれないような精神状態になることも決してないとは言えない。

 そんな時でも、無理矢理何か腹に入れる。

 

 その食事が最後の抵抗の力になるのかもしれない。

 逃げるためのエネルギーになってくれるかもしれない。

 

「……食べます!」

 

 トモナリの目に真剣なものを感じてハルカもお肉を口に運ぶ。

 

「ん! 美味しい!」

 

 食べてみるとお肉は普通に美味かった。

 良いお肉なので当然の話だ。

 

「デザートにプリンもあるぞ」

 

「至れり尽くせりですね」

 

「これ先輩の手作りっすか?」

 

「買ったやつだよ」

 

 ナナとミヤマエは割と神経太くてお肉をガツガツ食べて、トモナリからプリンも受け取っていた。

 トモナリの考えとしては、やはり嫌いじゃなきゃ甘いものも大事である。

 

 濃い味のものが喉を通らなくてもちょっと甘いものとか、ゼリーならなんてこともあるからなんでも備えてあるのだ。

 

「トモナリ、おかわり!」

 

「はいはい」

 

 ヒカリは空になったプリンの容器を差し出して、おかわりを要求する。

 もちろん多めに持ってきているのでトモナリはプリンを出してヒカリに渡す。

 

「うーまいーのだー」

 

「このプリン、美味しいですね」

 

「ねーえー、トモナリくーん。プリン、もう一個ないかな〜?」

 

「私も欲しい」

 

「あるぞ、ほれ」

 

 ナナはプリンが気に入ったようで少しずつ食べている。

 ミズキが猫撫で声でおかわりを求めて、サーシャもそれに便乗する。

 

 二年生たちも色々な経験をしてきたからそれなりに落ち着いている。

 こうした二、三年生の落ち着きを見て、一年生たちの不安や動揺もだいぶ収まっているのであった。

 

「この後は交代を見張りをして寝るぞ」

 

 流石に無防備に全員寝ることはしない。

 いつモンスターが来てもいいように交代で寝ながら見張りをする。

 

 こうした時に面倒なのは中途半端な時間に起こされ、中途半端にまた寝なきゃいけない時間の人が辛い。

 トモナリはその時間の見張りを自ら買って出たのであった。

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