ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

35 / 409
協力関係1

「引き留めて悪かったな」

 

「いえ、これから通う学校の学長ですからね」

 

 緊張の面接を終えた次の日、トモナリとヒカリは学長室に呼び出された。

 なぜかどっさりとお菓子が用意してあって、ヒカリも出していいというのでトモナリの隣でヒカリはお菓子を喜んで食べている。

 

「君も食べるといい」

 

「ありがとうございます」

 

 なんとなくであるが面接の時よりもマサヨシの表情は柔らかい。

 

「トモナリ、これ美味いぞ」

 

 普通にお店に売っているお菓子もあればちゃんとした専門店っぽそうな和菓子もある。

 ヒカリはコアラ的なキャラクターが特徴のお菓子を気に入っている。

 

「……じゃあ、俺はこれを」

 

「なかなか渋い趣味だな」

 

「好きなんです」

 

 トモナリが取ったのは羊羹であった。

 切り分けられた羊羹を爪楊枝で刺して一口食べる。

 

 回帰前ゲートの攻略が遅れ始めて人類がモンスターに押されていくと色々な物資も厳しくなった。

 甘いものなんかも作っている余裕がなくなってきたのだけどその中で羊羹というのはだいぶトモナリもお世話になった。

 

 日持ちしてサッと食べれることもあって小さいスティック状のものを懐に忍ばせていた時期があった。

 回帰前の若い頃は好きでもなんでもなかったのだが、生き延びたあとに少しでも甘いものが欲しい時に食べた羊羹は格別だった。

 

 今食べたらきっとそんなに美味い羊羹でもないんだろうなと思う。

 でもその時のことが忘れられなくて羊羹に手を伸ばした。

 

「ん、美味しい」

 

 マサヨシが用意してくれた羊羹は良いもので、食べてみると普通に美味しいと思えた。

 

「ならよかった」

 

 マサヨシは目を細めてわずかに微笑む。

 

「今日君を呼んだのは少し話がしたかったからだ。食べながらでいい。気楽に答えてくれ」

 

「……分かりました」

 

 イカツイおじさんと二人きりにされて普通の中学生なら気楽にいられないだろうけど、トモナリには回帰前の経験がある。

 多少の緊張はあるけれど他の子よりも落ち着いていられる。

 

「99個のゲートを閉じて世界を救う……立派な目標だ」

 

「ありがとうございます」

 

「覚醒した経緯といい、君は高い志と正義感を持っているようだね」

 

 世界を救いたいという志があることは認めるけれど正義感まであると言われるとちょっと言い過ぎかなとは感じる。

 

「この世界が置かれた状況をよく学んでいる。ただこの世界が今立ち向かっている敵はゲートやモンスターだけでないことは知っているかい?」

 

「……いえ」

 

 実は知っている。

 けれどまだ何も知らないはずの中学生が何もかも知っていては不自然だろうと思って知らないことにした。

 

「今世界でゲートをクリアして世界を救おうとする者に敵対している相手に終末教という存在がある」

 

「終末教……ですか?」

 

 思わず反応してしまいそうになったのを抑えて知らないフリを続ける。

 

「そうだ。99個のゲートをクリアできなかった先には終末がある。そして正しく終末を迎えることに力を尽くした人は異界の神によって守られるという考えの下に活動している危険な集団だ」

 

 終末教はトモナリの記憶にも残っている。

 99個のゲートをクリアできないと世界は滅びる。

 

 けれども終末を迎えて滅びるのが本来の姿であり、正しい終末のために尽力すると異世界の神が救ってくれるという教義をもってゲート攻略を邪魔してくれた過激な連中だった。

 終末教のせいで大きな被害が出たこともあった。

 

 事あるごとにゲートの攻略も妨害してきたのでトモナリも終末教と戦ったことがある。

 モンスターも人類にとっては敵だったけれど終末教も敵だった。

 

 結局途中で終末教は倒れた。

 世界も滅びたのだけど彼らは救われたのだろうかとトモナリは心の隅で考えた。

 

「ゲートの攻略も大事なのだが、そのゲートの攻略を順当に行うためには終末教を相手にしなければならない」

 

「……何がおっしゃりたいんですか?」

 

 終末教が危険な存在であるということは分かったがまだ覚醒者として駆け出してもないトモナリにする話でもない。

 下手にこんな話をすると怖がらせてしまうだけになる。

 

「終末教が現れた時には誰も気に留めないおかしな考えの連中だった。しかしそんな風に放っておかれているうちに大きな組織になっていた。アカデミーや至るところに潜んでいるほどにな」

 

「アカデミーの中にもですか?」

 

「恥ずかしながらそうなのだ」

 

 それは初耳だった。

 まさかアカデミーの中にまで終末教がいるだなんて想像していなかった。

 

 だが納得はできる。

 回帰前にアカデミーで凄惨な事件が起きたことがあった。

 

 どうしてそんな事件が起きたのかマサヨシが大きくメディアに叩かれていたことは覚えているが、事件の解明はメディアに流れてこなかった。

 終末教が起こしたのだとしたら事件について情報が出てこなかったことも、事件が起きた理由も説明がつけられそうだ。

 

「終末教が危険な組織で、アカデミーにもいるかもしれないことは分かりました。ですがそれを俺に話す理由はなんですか?」

 

 当時ですら終末教が事件を起こしたことを隠していた。

 おそらく普通の生徒には終末教の存在は公に教えないだろう。

 

 それなのにトモナリを呼び出して終末教の話をする理由がいまだに分からない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。