ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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本物の未来予知3

「すぐに……とはいかないかもしれないけど、調べてくれるはずだ」

 

「……ありがとうございます」

 

 少しだけ心が軽くなる。

 

「仮に失敗しても気に病むことはない」

 

 トモナリは慰めの言葉をかける。

 

「目の前にゲートがあっても攻略失敗してブレイクを起こすことだってあるんだ」

 

 未来予知で事前に警告することができなくても、全てハルカの責任なんてことはない。

 仮にゲートの存在が分かっていても失敗することがある。

 

 時間がかかってしまったり攻略できなくて、ブレイクを起こしてしまったなんて事例も山のようにある。

 分かっていたとしても防げないこともあるのだ。

 

「防げたらラッキー。何かを変えられたらそれでよかった。無理でも仕方ない。それぐらいに考えていいんだよ」

 

 トモナリも回帰前の知識を使って変えようとしたことは多い。

 しかし覚醒者協会に提供した情報だけじゃ上手くいかずに、変わらなかった悲劇もある。

 

 知っていても変えられるとは限らない。

 

「そう、ですね」

 

 ハルカは性根が優しい。

 すぐにそんなふうに考えを切り替えることが難しいのは、トモナリも理解している。

 

「……本当は…………未来予知のこと、人に話しちゃダメって言われてるんです」

 

「誰がそんな……」

 

「叔父です」

 

「ああ、例の」

 

 ハルカは天明教という宗教団体に狙われている。

 母親が天明教の巫女であり、ハルカも巫女にしようとしているのだ。

 

「私に未来予知の力があることが分かれば、余計に狙われるから」

 

「確かに……そうかもしれないな」

 

 仮に天明教でなくとも未来を予知できる力というのは欲しいだろう。

 今のハルカに自分を守り切るほどの力はない。

 

 ならば力があると公表せずに隠しておいた方が安全である。

 正しい判断だろう。

 

 他の人に言わないようにというのもハルカを守るためなのだ。

 だから今回ハルカは悩んだのだろう。

 

 人には言っていけない。

 けれども未来を見てしまって、モンスターによって大きな被害が出てしまうかもしれないのに止める手立てがない。

 

 どうにかしたいのにどうにもできないということに追い詰められていた。

 

「……キシ」

 

「なんですか?」

 

「よかったら今後も俺に相談してくれ」

 

「先輩に……ですか?」

 

「覚醒者協会にこういうことに協力してくれる人がいる。キシの存在は隠して未来予知で見たものをその人に伝えれば動いてくれるはずだ」

 

 回帰前にハルカがこうした事態にどう対処していたのか分からない。

 もしかしたら苦しみながらも予知を無視してきたのかもしれない。

 

 ならばトモナリの立場を利用すればいいのだ。

 今の所トモナリはひっそりと未来予知もどきを利用することに成功している。

 

 ハルカの未来予知を、ハルカの存在を隠してトモナリが矢面に立って伝えることもできるだろう。

 

「ちなみに俺、これでお金ももらったりしてるからキシにもな」

 

「……先輩、何者なんですか?」

 

 何をしてお金をもらってるのかいまいちふんわりとしている。

 危ないことではないのだろうけど、何をしていて、何者なのかハルカは不思議に思った。

 

「いろいろあるんだよ。キシが未来予知を他の人に言えないように、俺にも秘密があるんだ」

 

「……そんな言い方されたら、聞けませんね……」

 

 ズルい人だとハルカは思う。

 ミステリアスなところも、そして颯爽と自分を助けてくれるところも。

 

「大丈夫だ。未来はきっと変えられる」

 

 まるで自分に言い聞かせているようだ。

 そんなふうにハルカは感じた。

 

「変えられ……ますかね?」

 

「変えるんだ。そのために俺たちは頑張ってる」

 

「トモナリなら変えられるのだ」

 

「確かに、先輩なら変えちゃいそうですね」

 

 いつの間にかハルカの胸の中にあった重たい気持ちがなくなっていた。

 

「未来は起こりうる一つの可能性でしかない。変えられる。俺はそう思ってる」

 

「……はい」

 

 未来は変えられる。

 なんだかとても素敵な言葉だなとハルカは感じたのだった。

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