ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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とある場所のとある騒動

「‘こちらレベルファイブ! 人員をこちらに回してくれ!’」

 

 サイレンの音が鳴り響く。

 けたたましく響くサイレンに負けないように看守は無線に向かって叫んだ。

 

「‘……くそ!’」

 

 しかし無線からの応答はない。

 

「‘やばいぞ……このままじゃ……’」

 

「‘何がヤバいんだ?’」

 

 看守の頭が後ろの暗がりから伸びてきた手に鷲掴みにされた。

 ゴツゴツとした手はかぶっていた帽子ごと頭を掴んで、覆うぐらいの大きさである。

 

「‘あ……ああ……’」

 

 そのまま看守は持ち上げられる。

 決して華奢な体型でもない看守は足が地面から浮き上がり、持ち上げられるのに相応の力が込められて頭が割れそうな痛みを感じていた。

 

「‘確かにこんなうるさかったら寝るのも厳しいよな?’」

 

「‘は、はな……せ’」

 

「‘おいおい……状況分かってるのか?’」

 

 暗がりから男が姿を見せる。

 緑色のつなぎを着て、身長二メートルほどの筋肉質な体をした髭面の男は看守を自分の顔の横に引き寄せる。

 

 髭面の男が手に力を込めるとミシミシと音がする。

 

「‘今、誰の手に、お前の命があると思ってんだ?’」

 

「‘う、あ、ああ……’」

 

 激しい痛みに看守は言葉すら発せない。

 

「‘おい、こんな遊ぶな’」

 

「‘あっ?’」

 

 グシャリとひどい音がした。

 髭面の男が手を離す。

 

 看守は力なく床に落ちて倒れ、髭面の男は看守の服で手についた血を拭う。

 

「‘あー、かわいそうに’」

 

「‘そんなこと思っていないくせに’」

 

 もう一人暗がりから男が現れた。

 同じ緑のつなぎを着た細身の男は床で動かなくなった看守を見て歪んだ笑みを浮かべている。

 

「‘さっさとここを出るぞ。じきに応援も来るだろう’」

 

「‘だからどうした? 全員殺してしまえばいいんだよ’」

 

「‘殺せるやつならいいが、セイクリッズが来たら面倒だろう’」

 

「‘はっ! 今度は俺があいつらをぶっ殺してやる!’」

 

「‘これだから脳筋は……’」

 

 細身の男は呆れたような顔をする。

 

「‘お前が死ぬのは構わないが、僕は逃げさせてもらうよ。むしろ囮になって戦ってくれるとありがたいよ’」

 

「‘チッ! 嫌味な野郎だ’」

 

 髭面の男は舌打ちする。

 

「‘他のレベルファイブも動き出してる。さっさとこんな陰気臭いところ抜け出してしまえばいい’」

 

「‘誰がこんなことしたんだ? 面白半分にしては馬鹿みたいなことをする’」

 

「‘さあ? ただ、暴れろと言われてる’」

 

「‘はははっ! それは俺の得意分野だな!’」

 

「‘お前ら! 何を……’」

 

「‘こうすればいいのだろう?’」

 

 角を曲がってきた看守が武器を構えようとしたが、髭面の男がそれよりも早く看守の顔面を殴り飛ばした。

 壁に叩きつけられた看守は顔からボタボタと血を流している。

 

 髭面の男は血まみれになった拳をベロリと舐めると愉快そうに笑った。

 

「‘これからどうするつもりだ?’」

 

「‘いろいろ必要なものは多い……だけど他のやつも動けばそこら中何も残らないだろうな’」

 

「‘なら他のやつぶっ殺して奪えばいい’」

 

「‘それもいいけど……’」

 

「‘なんだ? 何かあるのか?’」

 

「‘今、この国で交流戦なんてものが開催されているの、知っていますか?’」

 

 細身の男はまたしても歪んだ笑みを浮かべる。

 髭面の男はこの笑顔だけは好きになれないなと思っていたのだった。

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