ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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日本vsドイツ1

「出番なし!」

 

「暇なのだー!」

 

 日本は強かった。

 ササキも呼ばれるだけの実力があって、先鋒戦を確実にものにしてくれた。

 

 トモナリは二回戦以降は大将として構えることとなったのだけど、ユウトを始めとした仲間たちの実力も高くて大将戦まで回ってくることなく勝ち上がった。

 なんと決勝までトモナリの出番はなかったのである。

 

 いつでも行けるようにと準備していたのに、ただただ近くで戦いを眺めるだけになってしまった。

 ただそれは運が良かったというところもある。

 

 今年もやはり優勝候補で去年トモナリに対して因縁有りだったハオレン率いる中国や、去年の十六歳組で決勝を戦ったエリオットが率いるカナダなんかはトーナメントの逆側の山で当たることがなかった。

 他の国が弱いわけではないが、強敵と見られている相手と当たらなかったのはトモナリのくじ運が良かったと言わざるを得ない。

 

「ただ次はそう簡単にはいかないだろうな」

 

 こうして決勝まで来たのだが、決勝の相手は少し意外だった。

 中国やカナダなど強敵ひしめくトーナメントを勝ち上がってきた決勝の対戦相手はなんとドイツであった。

 

「……相変わらずだな」

 

 戦いの舞台となるステージを挟んでドイツの方を見ると、大きなオオカミのようなモンスターを連れたドイツの覚醒者が手を振っている。

 こちらも去年個人戦で戦った、アルケスという青年である。

 

 テイマーという職業で、キュリシーという魔獣を連れているのだ。

 ヨーロッパが開催の舞台ということで、ヨーロッパの国々はかなりやる気を見せていた。

 

 そんな中で中国を撃破して勝ち上がったのがドイツなのである。

 アルケスは人の良さそうな笑み浮かべているけれど、ハオレンを倒すほどに実力を伸ばしてる。

 

 トモナリも手を振り返してやると、アルケスは笑顔を浮かべる。

 

「‘団体戦決勝……予想に反して勝ち上がったのはドイツチーム! そして去年の優勝国としての底力を見せた日本チームだ!’」

 

 MCが試合を盛り上げる。

 こうなるとヒールになるのは日本の方で、声援はドイツばかりを応援している。

 

「‘日本は圧倒的でした! 初戦の四人抜きから始まり、ここまで大将が出ることもありませんでした! 対してドイツは覚醒者強国の中国を破り、この決勝の舞台へと駒を進めました!’」

 

 中国に勝つということ自体劇的なストーリーである。

 会場全体がドイツの勝利を望んでいるし、MCもそんな感じで誘導している。

 

「ちぇっ……俺たちは悪役かよ」

 

 ユウトが拗ねたような顔をする。

 ここまで勝ち上がるのだって楽じゃなかった。

 

 ドイツに比べれば多少の負担は少ないが、それでも簡単だと思われるのはちょっとムカつくと思った。

 

「まあしょうがないよな」

 

 興行的な側面があるということはどうしてもこうしたことが起こりうる。

 

「なら最後までヒールでいてやろうぜ。勝つのは……俺たちだ」

 

「……ふっ、そうだな」

 

 煽りたいなら煽ればいい。

 そんなことで動揺して負けるようなみんなではない。

 

「んじゃ、俺がいくぜ」

 

「好きにしろ」

 

 決勝の先鋒はミヤマエが務める。

 十六歳同士で次はほぼ負けることが分かっているが、初戦の勝敗の勢いは後にも影響してくる。

 

 ササキは相変わらずあまり積極的ではなく、ミヤマエに戦いを譲った。

 ミヤマエの相手は女の子だった。

 

 幅の広い剣を持った女の子はキッとミヤマエのことを睨みつける。

 

「いくぞ!」

 

 ブザーがなって両者同時に走り出す。

 

「くっ!」

 

 ミヤマエとドイツの女の子の剣がぶつかって、ミヤマエの方が押し負ける。

 流石に両手で剣を持ったドイツの女の子の方が、片手で剣を振るミヤマエよりも力で勝ったようだ。

 

「はっ!」

 

 けれどもミヤマエにはもう一本の剣がある。

 剣を弾き返した隙を狙おうとしているが、もう一本の剣を振ることで攻撃の隙を与えない。

 

 片手で剣を振る力は敵わないようだけど、ミヤマエは二本の剣を使って巧みに戦う。

 力で敵わないといってもその差は小さく、相手は次々と襲いくる二本の剣の対処に苦戦している。

 

「‘昇風撃!’」

 

 ドイツの女の子はスキルによる技を発動させる。

 

「ぐぅ!?」

 

 振り上げられる剣が下から上へと風を巻き上げ、ミヤマエの体も浮き上がってしまう。

 

「‘はああああっ!’」

 

 ドイツの女の子は振り上げられた剣をそのまま振り下ろす。

 

「こんなもん!」

 

 ミヤマエは剣をクロスさせて防御するものの、空中では威力を殺せず背中を床に叩きつけられる。

 

「あぶねっと!」

 

 追撃を飛び上がってかわし、ミヤマエは一度距離を取る。

 

「流石につえーな。先輩たちが負けるとは思ってないけど……俺がここで負けるわけにはいかねえよな!」

 

 保護魔法の魔道具の耐久がどれぐらい残っているのか分からないが、今の一撃で大きく削れたことは間違いない。

 あまり余裕がないと察したミヤマエは本気を出すことにした。

 

「魔法剣! 本気でいくぞ、コラァ!」

 

 右手の剣に炎が、左手の剣に冷気がまとわれる。

 ミヤマエが剣を振り下ろすと炎と氷の斬撃が飛んでいく。

 

 ドイツの女の子が剣を振り下ろして斬撃を打ち消すと炎の熱さが皮膚を襲い、剣が凍りつく。

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