ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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幻想と戦って2

「今回戦ってもらうモンスターはゴブリンだ。戦闘力としては弱く、武器を持っていないようなこともある。ゲートの中で会う時には油断禁物な悪知恵を見せることもあるが、寝ていない限りは負けることもないだろう」

 

 トモナリの目の前に現れたモンスターはゴブリンというものだった。

 緑色にくすんだ肌をしていて大きく突き出た鼻、濁った瞳の目、鈍く尖った牙と醜悪な見た目をしている。

 

 体は子供ほどの体格しかなく肌はたるんでいてガサガサとし、手足は短く枝のように細い。

 モンスターの中でもゴブリンは弱いとよく言われている。

 

 多少の知恵があって面倒なことをしてくることがあるけれど一般人でも倒すことが可能と言われるほどだ。

 しかしやはりモンスターはモンスター。

 

 むしろ醜悪な見た目なために恐怖感や嫌悪感を抱くような人も少なくはない。

 

「非常にリアルだろう? 攻撃を受けてもダメージはないが目の前に迫られる感じは本物と遜色ない」

 

 待機状態のためかゴブリンはダラリと腕を下げて虚空を見つめている。

 そんなゴブリンなど見たことはないがかなり精巧にできている。

 

「みんなもこれと戦ってもらう。よく見ておくように」

 

 レベルアップはしないだろうが安全に戦いの経験を積めるこんなものがあったのかとトモナリは驚いた。

 

「それでは始めるぞ」

 

「ほぅ……」

 

 イリヤマが再び操作盤を操作する。

 するとうつろだったゴブリンの目に正気が戻ってトモナリの方を向いた。

 

 ニヤリと凶悪な笑みを浮かべる。

 ぞくりとする笑い方にガラスの向こうでは嫌悪感をあらわにしている生徒がいる。

 

 ゴブリンは動かないトモナリの方に走り出すと大きく飛び上がった。

 これが偽物だとは信じられないとトモナリは思った。

 

「……冷静だな」

 

 飛びかかってきたゴブリンをトモナリは軽くかわした。

 まるで戦い慣れているかのような動きにイリヤマは目を細めていた。

 

 手に持っているタブレットにトモナリの評価をリアルタイムで書き込む。

 

「どりゃー!」

 

 くるりと振り返って再びトモナリに飛びかかろうとしたゴブリンにヒカリが飛び蹴りをかました。

 

「にょわっ!?」

 

 相手はホログラムである。

 ヒカリの飛び蹴りはゴブリンをすり抜けてしまい、ヒカリはガラスの壁に激突した。

 

「いたいのだぁ〜」

 

 ヒカリにやられたゴブリンはそのままブレるようにして消えていってしまった。

 

「……終わりですか?」

 

「う……もう一度いいか? 今度はヒカリ君なしでだ」

 

 トモナリとヒカリは一体なのでヒカリが倒したならトモナリが倒したのと同じである。

 しかしこれではトモナリの力が分からない。

 

 仕方ないので今度はヒカリの協力なしで戦うことになった。

 

「これでいいですか?」

 

「……言うことなしだ」

 

 イリヤマの隣でヒカリが腕組みをして見守る中で二回目を始めた。

 トモナリは飛びかかってきたゴブリンをそのまま空中で切り落として倒してしまった。

 

 あっけないほどの勝利でイリヤマも驚いていた。

 

「さすがだな、トモナリ」

 

「ヒカリもよくやったな」

 

 これぐらいは余裕である。

 仮に覚醒していないとしてもゴブリンには遅れを取らない。

 

「次やりたいものはいるか?」

 

 イリヤマが隣の見学室の方を見る。

 チラホラと手を上げるものが出てきた。

 

 トモナリが戦っているのを見て簡単そうだとみんな感じたのである。

 手を上げ始めた生徒を見てイリヤマは苦笑いを浮かべた。

 

 トモナリを一番初めにしたのは失敗だったと思った。

 

「では……シミズ! アイゼンと交代だ」

 

 次に選ばれたのはミズキだった。

 

「見てなさい。私もやったるから」

 

 見学室のドアを開けたトモナリとミズキがすれ違いになる。

 ミズキはトモナリができたのだからできるだろうとウィンクまでしてみせてホログラム戦闘部屋に入っていった。

 

「次はミズキか。あいつも強いからな」

 

 数は多くないけれどミズキがトモナリと手合わせしているところをヒカリは見ている。

 トモナリの方が今の段階では圧倒的に強いのだけれど諦めないミズキは時々トモナリにも勝ったりする。

 

 トモナリに勝ったことがあるのだならミズキも強い方というのがヒカリの中での基準だ。

 

「ふん、あいつができたんだから……」

 

 ヒカリもトモナリと同じく木刀を手に取った。

 軽く数回木刀を振って感触を確かめる。

 

 ミズキはしっかりと木刀を構えてゴブリンと対峙する。

 

「それではいくぞ」

 

「はい、お願いします!」

 

 イリヤマが操作盤をいじるとゴブリンが動き出す。

 

「きゃあっ!」

 

 簡単だろう。

 そう思っていたのに濁った目で見つめられて、目の前でゴブリンの凶悪な笑みを向けられた瞬間にミズキの体が動かなくなった。

 

 怖いと思った。

 トモナリはあんな簡単に倒していたのにミズキは飛びかかってくるゴブリンをかわすので精一杯だった。

 

「くっ!」

 

「まあ、よく反応したもんだな」

 

 相手から目を離して、回避もドタドタとバランスを崩してしまうものだった。

 けれどミズキは振り返った時に飛びかかってきていたゴブリンに上手く木刀を合わせて切り裂いた。

 

 ゴブリンのホログラムは空中で消えてしまい、戦いはミズキの勝利となった。

 決してスマートな戦いとはいえないけれど動けただけ偉いものである。

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