ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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幻想と戦って3

「よくやったな」

 

「は、はい……」

 

 終わってみると短い時間の戦いだったのにミズキは汗でびっしょりになっていた。

 イリヤマは大きく頷いた。

 

「これがモンスターとの戦いというやつだ。命を狙ってくる敵との戦いはただ睨み合うだけでも消耗する。シミズはよく動いた方だ」

 

「……トモナリ君は」

 

「うーん、あいつはかなり肝が据わっているな。ほとんどのものは最初はああはいかない。あいつを参考にするのはやめておくべきだな」

 

 イリヤマの言うことは正解だった。

 その後も意気揚々と他の生徒がチャレンジしていったのだけどほとんどの生徒がゴブリンの雰囲気にのまれてしまった。

 

 倒すことができたのはトモナリやミズキを含めても少数でまともに剣を振れず、ゴブリンに襲いかかられてホログラムの勢いに目を閉じたり転げてしまったのである。

 

「これでみんな一巡したな」

 

 生徒たちが見学室に戻り、イリヤマはホログラム戦闘部屋の真ん中に立ってガラス越しに生徒たちを見た。

 

「やってもらったようにモンスターとの戦いは簡単ではない。これから君たちは武器の扱いを身につけて戦いにおける自信を積み重ねて今度は本物のモンスターと戦うことになるだろう」

 

 今日戦えずとも誰もなんとも思わない。

 本来ならこれからの授業で剣術などを習ってからモンスターとの戦いに慣れていくはずなのである。

 

 剣も何も扱ったことがないのにモンスターと戦うのは酷である。

 けれどそのうちにモンスターと戦うことにはなる。

 

 恐怖や雰囲気を覚えておき、それを訓練で乗り越えていく。

 これから特進クラスにはもっと険しい戦いが待っているのだと言うイリヤマの言葉を生徒たちは真剣な顔をして聞いていた。

 

「今日のことを忘れるな。次はこんなホログラムぐらい軽く超えてみせろ。少し早いが授業はここまでとする」

 

 最後にニコッとイリヤマは笑うけれどゴブリンに押されてしまった生徒たちは笑う気分にはなれなかった。

 

「アイゼン君すごいよね」

 

「ね、ヒカリちゃんだけじゃなくてちゃんと自分で倒しちゃったもんね」

 

 教室に戻る生徒たちの話題は先ほどのゴブリンとの戦いについてだった。

 やはり実際に目の前にすると違うものだと話している人やあっさりとゴブリンを倒してしまったトモナリやヒカリについて話している人もいる。

 

「なんか納得いかなーい」

 

「また負けず嫌いか」

 

 ミズキは口を尖らせている。

 トモナリもミズキもゴブリンには勝った。

 

 けれどミズキはギリギリだったのに対してトモナリは余裕だった。

 倒したのは二回目の方だけど一回目だってゴブリンの攻撃をさらっとかわしていた。

 

 余裕がなくて必死に回避したミズキとは大違いである。

 ミズキは自分とトモナリを比較してどうしてトモナリはあんなに簡単に倒せたのか納得いかない顔をしている。

 

 いつもの負けず嫌いがまた始まったのかとトモナリは苦笑している。

 この負けず嫌いのせいで手合わせするたびにいつも長々と付き合わされることになった。

 

 流石になんでもお願い聞く権利なんてものは二度とかけなかったけれど、手合わせしなきゃ引き下がらないので結構大変だった。

 

「なんであんなに慣れてるの?」

 

「そんなもん……人生経験の差だな」

 

「なにそれ? あんたと私で何が違うってのよ?」

 

 決して教えることはないけれど人生経験は大いに違う。

 トモナリは一度滅亡まで戦ったという経験がある。

 

 ゴブリン如きに恐れることなどないのだ。

 

「お前ならすぐに慣れるよ」

 

 ミズキも未来では剣姫である。

 つまりはモンスターと戦うのも経験豊富な覚醒者となる。

 

 そのうちにゴブリンなど目をつぶっても倒せるようになることは間違いない。

 

「サーシャさんもすごかったね」

 

 ミズキはたまたま近くを歩いていたサーシャに声をかける。

 トモナリやミズキと並んでサーシャもゴブリンを倒していた。

 

 トモナリほど簡単に倒してはいなかったけれど冷静にゴブリンの攻撃をかわして反撃を叩き込んでいた。

 ミズキよりもだいぶスマートであった。

 

「うん、あれぐらいならなんともない」

 

「そうなんだ」

 

 サーシャはクラスの中でもやや浮いた存在だった。

 みんな仲良くなろうと話しかけるのだけど受け答えがいつも淡々としていて壁を感じさせる子であった。

 

 時々視線は感じるなと思いながらトモナリがみるとサーシャは目を逸らしてしまう。

 不思議な子である。

 

「僕も倒したぞ!」

 

「ヒカリちゃんも強かったね」

 

「そうだろう、そうだろう!」

 

 すっかりクラスのマスコット的になったヒカリだが全く戦えないということでもなさそうだ。

 ヒカリがどうやったら強くなるのか。

 

 最終的に回帰前のような強さになるのか。

 そんなことも考えていかねばならないなとトモナリは思った。

 

 

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