ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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勝負の世界に先輩後輩なし2

「だったらどうかしましたか?」

 

「可愛い後輩の実力を確かめてやろうと思ってな」

 

 やっぱり因縁だった。

 

「嫌ですよ。なんでそんなこと……」

 

「逃げんのか?」

 

「あっ?」

 

 実力を確かめるというが要するにトモナリと戦おうというのだ。

 だが戦うなんて面倒なことしたくないは普通に断ろうとしたのだけど、ヤマザトはトモナリを見下すような目をして安い挑発を口にした。

 

「才能があると言われながら戦うことから逃げる臆病者だとはな」

 

 本当に安い挑発。

 別に才能があるなんて自分発信で言い出したものでもなく、ヤマザトと戦うことも義理もなければ義務もない。

 

 勝手に実力を見てやると言い出して断ると臆病者とはひどい話だ。

 

「……いいですよ」

 

「おっ……」

 

「ただし条件があります」

 

 戦いたいというのなら受けてやってもいい。

 けれど無理矢理な勝負に臆病者扱いまでされてはトモナリの方もただでは気が済まない。

 

「なんだ?」

 

「俺にはこんな勝負引き受ける義理はありません」

 

「ま、まあそうかもな……」

 

「俺が勝ったらなんでも言うこと聞いてもらいます」

 

 以前ミズキが戦えと言った時に出した条件をここでも出してみる。

 トモナリの記憶に拳王の存在はないけれど王職は正当に育っていけば強くなる可能性が高い。

 

 将来的にどんなことが起こるか分からない。

 使えるカードは多ければ多い方がいい。

 

「ふん、それぐらい構わない」

 

 負けるはずない。

 そう思っているタケルはトモナリの条件を快諾した。

 

「それじゃあ場所を移動するぞ」

 

 トレーニングルームはトレーニングルームであり戦う場所ではない。

 けれどトレーニングルームの隣にはリングが置いてあるバトルトレーニングルームがある。

 

「これをつけろ」

 

 タケルはグローブとヘッドギアをトモナリに投げ渡す。

 流石に素手で戦いは危険なのでやらない。

 

「一ラウンド三分で三ラウンドで構わないか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「やったれトモナリ!」

 

 ブカブカのヘッドギアを被ったヒカリはコーナーからトモナリのことを応援する。

 

「大丈夫か?」

 

「ああ、あんなやつに負けはしないさ」

 

「危なくなったら僕も入るからな」

 

「いや危なくなったらじゃなく……」

 

 トモナリは笑ってヒカリに顔を寄せる。

 

「頼んだぞ」

 

「ヌフフ……任せとけ!」

 

 トモナリがグローブをはめた手でヒカリの頭をポンポンと撫でてやる。

 

「それじゃあ始めるぞ!」

 

 タケルがスマホのタイマーをセットして手合わせが始まった。

 正直言ってタケルはかなり卑怯だとトモナリは思う。

 

 なぜなら戦うことには同意したもののこうした形式であることは一つも話し合っていないからだ。

 リングでグローブとヘッドギアを渡されると戦い方は自然と殴り合いになる。

 

 タケルの職業は拳王である。

 当然殴り合いの戦いというのはタケルが有利な戦いとなる。

 

 対してトモナリが習ってきたのは剣術である。

 トモナリがどんな戦いを得意とするのか聞くこともなくグローブを渡してタケルの戦いを強要した。

 

 安い挑発をしてきたので考えの浅いやつかと思ったら意外と強かなことをしてくるものである。

 

「はっ!」

 

 まずは一発と拳を突き出した。

 

「おらっ!」

 

 タケルもパンチを繰り出し、トモナリとタケルの拳がぶつかり合う。

 

「くぅっ!」

 

「トモナリ!」

 

 押し負けたのはトモナリだった。

 拳が弾き返され大きく体が押し戻された。

 

 タケルの方が力の能力値が高いと今の一撃でトモナリは察した。

 タケルは腕をたたんでガードを上げ、リズムを刻むようにステップを踏みながらトモナリに近づいてきた。

 

 こいつ素人じゃないとトモナリは顔をしかめた。

 ボクシングか何かを習っている動きをしている。

 

「やるな!」

 

 素早くコンパクトに突き出される拳をトモナリはかわしていく。

 どうやら素早さの能力値はトモナリの方がわずかに高そうである。

 

「これならどうかな!」

 

 タケルがトモナリの懐に飛び込んできた。

 繰り出されるボディブローをかわしきれなくてガードする。

 

 重たくてガードを突き抜ける衝撃がお腹に届いてくる。

 あまり攻撃を受けていると不利になる。

 

 さらには狭いリングの上というのも体勢を立て直しにくい要因である。

 反撃を、とトモナリも動き出す。

 

「うっ……」

 

 タケルの右ストレートを受け流すように防御しながら蹴りを繰り出した。

 蹴りは脇腹にクリーンヒットしてタケルは顔を歪める。

 

「卑怯だと言わないよな? この戦いはボクシングの試合じゃないんだ」

 

 全部が全部タケルに付き合ってやる必要はない。

 拳王であるしボクシングを主軸に戦っているタケルは拳中心の攻撃しかしてこない。

 

 けれどトモナリまでタケルに合わせて拳だけで戦う必要はないのだ。

 戦いではなんでも使う。

 

 蹴りも当然トモナリが使うべき攻撃手段の一つとなるのだ。

 

「ぐっ!」

 

 前に出てこようとするタケルの足に蹴りを入れる。

 タケルの方が力は強いけれどトモナリの力も弱いわけではない。

 

 まともにローキックを食らうと足に強い衝撃があってタケルの前進が止まる。

 今度はトモナリの方がタケルの懐に飛び込む。

 

 パンチよりも近い距離でトモナリが繰り出した攻撃は肘だった。

 体ごと回して脇腹を狙った肘をタケルは腕で防御したけれど硬い肘の攻撃は腕にずきりとした痛みを残す。

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