ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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初めてのゲート攻略5

 なんで俺にアピールしたのだとトモナリはサーシャのことを見る。

 

「何?」

 

「……いや、なんでもない」

 

 ただサーシャは普通にトモナリのことを真っ直ぐに見返して首を傾げた。

 特に他意もなさそうである。

 

「いたぞ」

 

 爪跡があったところを中心に探してみるとゴブリンを見つけた。

 相手は3体なのでイリヤマから言われていたルールの中には収まっている。

 

 一人一体などと言われているが一人一人がゴブリン一体ずつと戦えとは言われていない。

 トモナリたちは協力してゴブリンを倒すことにした。

 

 個人の戦いも学んでいるけれど集団としての戦い方も学んでいる。

 気づかれないギリギリまで近づいたトモナリたちは一気に走ってゴブリンに近づく。

 

 先頭に立つのは素早さが高い人でなく、ステータスの体力が高いタンク系列の職業の人。

 今回はサーシャと4班の二人が前に出ている。

 

 トモナリも前に出ていいぐらいの能力値はあるけれどみんなの機会を奪いすぎてはいけない。

 近づくトモナリたちに気がついたゴブリンが威嚇するような声を上げるけれどもう遅い。

 

 一人一人で戦ったのならゴブリンの勢いに飲まれることがあったのかもしれない。

 けれど10人もまとまって戦うのなら心強い。

 

 サーシャが槍を突き出し、残りの二人も剣でゴブリンを狙う。

 けれどサーシャの槍がゴブリンに浅く刺さったのみで残りの攻撃はかわされてしまった。

 

 サーシャの方もゴブリンに刺した槍から伝わる生々しい感覚にそれ以上槍を突き出すことをためらってしまった。

 

「行くぜ!」

 

 タンクとして前に出た3人の後ろからミズキやユウトたち接近戦闘職の3人が前に出る。

 トモナリも接近戦闘職であるが前に出ないでいざという時のために状況を見守る。

 

「おりゃー!」

 

 まず飛び出したのはユウトだった。

 サーシャが突き刺したゴブリンに向かって剣を振る。

 

 思い切りがよく、しっかりと踏み込んで剣を振れている。

 ゴブリンの首が切り飛ばされて飛んでいき、顔に血が飛んでもうろたえることもなかった。

 

「負けられない!」

 

 ユウトの横をすり抜けて別のゴブリンを狙ったミズキも刀を振り下ろす。

 同じ道場で鍛錬し、同じタイミングで覚醒したトモナリには負けたくないというライバル心がミズキの中にはあった。

 

 手合わせしても負け越しているしここで怯んで更なる差などつけられたくはなかった。

 振り下ろされたミズキの刀はゴブリンの左肩からまっすぐ縦に体を切り裂いた。

 

 気持ち悪い、怖いという思いもあったけど刀にそうした思いを乗せてはならないというテッサイの教えを思い出して振り切った。

 

「はっ!」

 

 それでもまだ死んでいなかったゴブリンの頭に炎がぶつかった。

 コウが放ったもので狙いにくい頭によく当てたものだとトモナリは感心している。

 

 頭に当たった炎が全身に広がってゴブリンは身を悶えさせながら死んでいった。

 残りの一体も4班で協力して仕留めた。

 

 トモナリ以外の生徒たちにとっての初めてのモンスターとの実戦はなんとか怪我もなく終えることができたのだった。

 

「みんな大丈夫か?」

 

 トモナリが一応みんなの状態をチェックする。

 反撃は受けてないように見えたけれど何があるかはわからない。

 

 知らないところで転んで足をくじいていたなんてこともあり得ない話ではない。

 

「もちろん大丈夫だ!」

 

「お前は早く顔の血拭け」

 

「他のみんなも大丈夫そうだな。じゃあまたゴブリン探すか」

 

 本来ならばモンスターを倒せば死体を運んだり軽く解体して魔石と呼ばれるものを回収するのだけど今回はそうしたことはしない。

 

「うーん、トモナリ君がリーダーっぽいのなんか納得いかない」

 

「そうか? 俺はトモナリで全然いいけどな」

 

「うん、僕もいいと思う」

 

「私も」

 

「ぐぬ……圧倒的支持率……」

 

「別にミズキがリーダーやりたいってならいいんだぞ?」

 

「……そんな余裕ないもん」

 

「ならトモナリに従うのだな!」

 

「ヒカリちゃんまで……」

 

 自然とトモナリがリーダー的な役割を果たしていることにミズキは少し不満そう。

 ただミズキ以外はトモナリがリーダーであることに全く不満はない。

 

 ミズキ自身もリーダーやるならトモナリだろうとは思うので何も言えなくなる。

 

「あと7……アイゼン君は終わってるからあと6体か」

 

 この分ならすぐに倒せそうだとコウは思った。

 

「おっ、今度はあっちから来るぞ」

 

「えっ!? あっ、本当だ!」

 

 周りを警戒していると今度はゴブリンの方から走ってきていた。

 仲間の叫び声を聞きつけたのかもしれない。

 

 二体のゴブリンはものすごい形相をしていてミズキはちょっと嫌そうな顔をする。

 

「タンクは前に!」

 

「あ、うん」

 

 トモナリが指示を出してサーシャが慌てて槍を構える。

 

「コウ、魔法で迎撃だ!」

 

「ああ、分かった!」

 

 コウが杖を持ち上げて魔力を集中させる。

 

「食らえ!」

 

 走ってくるゴブリンに向かって火の玉を放つ。

 

「よしっ!」

 

 コウの火の玉は外れたが4班の子が放った水の槍がゴブリンの胸を貫いて倒れた。

 

「今度こそ……!」

 

 先ほどは生の相手を攻撃する生々しい感覚に怯んで手が止まってしまった。

 今度はしっかりと倒せるように攻撃するんだとサーシャが飛びかかってきたゴブリンに槍を突き出す。

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