ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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顔合わせ3

 力の能力値は元々トモナリに敵わなかった中でスキルで下がっている。

 速度を重視した攻撃は軽くて防御にも大きな苦労がない。

 

 それに加えて器用さが低いとトモナリはレイジと戦いながら感じていた。

 器用さが上がると何がいいのかと聞かれると意外と難しい。

 

 力は文字通り力であるし素早さは素早さである。

 そのままの意味通りでないこともあるが大体そのままの通りに解釈すれば構わない。

 

 ならば器用さとは文字通り器用になるとして戦いにどんな影響を及ぼすことになるのだろうか。

 器用さは攻撃の正確さにつながってくると言われている。

 

 攻撃を狙ったところに正確に決めることは戦いにおいて非常に重要になってくる。

 急所を外せば倒せる相手も倒せなかったり思わぬ反撃を受けることがある。

 

 どんな体勢からでも正確に攻撃できれば攻撃の幅は広がるし、正確な攻撃はそれだけ力も乗せられる。

 中々明確に変化を感じられにくい能力であるけれど、より実力の近い接戦になるほどに器用さの違いは現れてくるのだ。

 

 レイジが速度を上げれば上げるほど狙いは雑になり、しっかりとガードしなくても少ない動作で攻撃を防げてしまう。

 ただ攻めは激しくあたかもトモナリが防戦を強いられているようにも見える。

 

 しかし決着の時は突然訪れた。

 

「うっ!」

 

 レイジは振るでもなく突くでもない中途半端な軌道を描いて槍を突き出した。

 体勢も不十分で狙いも定まっていない。

 

 トモナリは木刀を振るって槍を大きく弾き返した。

 踏ん張りきれずにレイジの手から槍が飛んでいってトモナリの前に大きく胸をさらす格好となる。

 

「いけー! トモナリ!」

 

「すいません、先輩」

 

「ぐわっ!」

 

 防御も回避もできずにレイジはトモナリに胴を薙がれた。

 トモナリは一撃を狙っていた。

 

 素早さが高い人というのは多くの場合体力が低くて防御が弱い。

 さらに体力が低いということはスタミナ的にも低いということになる。

 

 スキルを維持するだけの魔力は十分であったのだけどスタミナがついていかなかった。

 槍を振り回しながらレイジは汗だくになっていた。

 

 スタミナ的に限界が近いことをしっかり見抜いていたトモナリはレイジに隙が生まれるのを待っていた。

 トモナリの狙い通りにヨレヨレの一撃を繰り出したレイジは見事にトモナリの反撃を受けてしまったのである。

 

「く……そ……」

 

 レイジは腹を押さえて床に膝をついた。

 

「そこまで! よくやったな、アイゼン。ウラヤスも良い戦いだった」

 

 上級生たちは驚きを隠せない。

 強いと聞いていたけれど本当に二年生を倒してしまったことはやはり衝撃的である。

 

「さて……疲れているかもしれないが次に行こう。誰がやるかな?」

 

 トモナリを見る上級生たちの目の色が変わった。

 レイジを倒してしまったことでこれ以上負けられないという空気とトモナリと戦ってみたいというビリビリする圧力を感じる。

 

「では僕が」

 

 背の高い爽やかな好青年が前に出た。

 

「僕は課外活動部の部長である三年の黒羽輝(クロハテル)だ。これからよろしくね」

 

「よろしくお願いします」

 

 強いなとトモナリは思った。

 流石に三年ともなると感じる魔力の力強さに圧倒される。

 

 強そうなだけでなく背が高くて顔も良いのだからちょっとずるいとトモナリは少し目を細めた。

 

「僕の職業はガーディアン。防御に秀でていてナイトなんかの職業よりもさらに防御に寄った職業だよ」

 

 ガーディアンは希少とまではいかなくとも比較的珍しい職業で、得られるスキルも分かりやすく防御に寄ったものが多い。

 ステータスも体力を中心として伸びが良い。

 

 トモナリの記憶ではガーディアン職業の人がかなり遅くまで戦いに残っていた。

 最前線に立ってモンスターと戦う職業なのにそうして残っていたということはスキルの兼ね合いもあるのだろうけどやはり優秀な職業だったのだろうと感じる。

 

「それじゃあやろうか」

 

 テルは盾と剣を手に取った。

 どちらも木製のものであるが武器を構えるだけでもより威圧感を感じる。

 

「先手は譲るよ」

 

 テルは余裕の表情を浮かべている。

 力の差があることは歴然なので当然であるがそれでも少しムカつくなとトモナリは思った。

 

「じゃあ俺も本気でいかせてもらいます。ヒカリ」

 

「ほいきた!」

 

 サーシャの腕から飛び立ったヒカリがトモナリの隣に降り立つ。

 

「ようやくその子の力も見られるようだね」

 

 テルは目を細めて笑う。

 ヒカリもトモナリのパートナーであるので参加して卑怯と言うつもりはない。

 

「いくぞ、ヒカリ!」

 

「うむ!」

 

 トモナリは魔力を全身にみなぎらせて床を蹴って走り出す。

 ヒカリもトモナリの横を飛んで並走して一気にテルと距離を詰める。

 

 木の盾を両断する。

 そんなつもりで魔力を込めた木刀を全力で振り下ろした。

 

「ふふ、中々やるね」

 

「くっ……」

 

 まるで巨大な岩でも殴ったようだ。

 テルは盾でトモナリの木刀を受け止めていて、切りかかったトモナリの手の方が痺れるくらいだった。

 

「どりゃー!」

 

「ん……おっと」

 

 ヒカリは素早く横に回り込んでテルに突撃した。

 テルはトモナリの剣を押し返すと素早く盾でヒカリをガードする。

 

 盾にぶつかってきたヒカリが想像よりも重たい衝撃があって一歩押し返され、テルは驚いたような顔をした。

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