ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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ドラゴンを狙う者1

「日が昇るのも早くなってきたな」

 

 アカデミーの生活にもだいぶ慣れてきた。

 同じ時間に朝のランニングを続けていると環境の変化にも気づくことがある。

 

 アカデミーに入ったばかりの頃はランニングの時間は薄暗かったけれど、太陽が昇る時間が早くなってきてランニングをしている最中にも普通に明るくなるようになってきた。

 捕らえてきたモンスターと戦うことはあるけれどゲートは最初に一度行ったきりなのでそろそろかなと考えながら走ったりしていた。

 

「ふふ〜ん」

 

 ヒカリはご機嫌に鼻歌を歌いながらトモナリと並走して飛んでいる。

 先日マサヨシにお願いしていたヒカリ用のヘルメットが部屋に届いた。

 

 ヒカリはそれが大層気に入ったらしくいつも身につけている。

 

「トモナリ、何か近づいてきてるぞ」

 

 休憩で水分補給しているとトモナリの頭にひしっとしがみついたヒカリが何かを感じ取った。

 朝から部活をやっている人もいるので出歩いている生徒を見かけることはある。

 

 アカデミー構内を広くランニングするトモナリはあまり人が来ない場所を分かっていて、今もそうした場所で休んでいる。

 他に何かある場所でもないので近づいてくる人など基本はいない。

 

 となると何か目的があってトモナリの方に来ていることになる。

 

「頼むぞ」

 

 トモナリはどこへともなく声をかけた。

 

「ヒカリも飲むか?」

 

「うん、飲むのだ」

 

 トモナリはヒカリにボトルを渡す。

 ちょっと薄めのスポーツドリンク。

 

 ヒカリとしてはもうちょっと濃いめが良いなと思う。

 

「さて、お客さんだ」

 

 ヒカリが感じていた気配がトモナリの目にも見えるところまで来ていた。

 武装した二人の男子生徒で一人は槍を、もう一人は剣を腰に差している。

 

 顔に見覚えはなかった。

 トモナリが顔を向けると視線が合う。

 

 明らかにトモナリに用がありそうだ。

 

「おはよう、愛染寅成君」

 

「おはようございます。どちら様ですか?」

 

 トモナリの方は二人に見覚えはないけれど二人の方はトモナリが誰なのか分かっている。

 

「噂には聞いていたけど本当にドラゴンを連れているんだね」

 

 トモナリの言葉は無視して槍を持った生徒は言葉を続ける。

 その時点でトモナリの中では少しイラッとした感情が湧き起こる。

 

「能力値も素晴らしいと聞いた」

 

「……なんのご用ですか?」

 

「単刀直入に言おう。僕たちの仲間にならないか?」

 

「なんの仲間ですか?」

 

 薄々相手の正体に気がつきながらもトモナリは知らないフリをして話を進める。

 

「僕たちには崇高な目的がある。今世の中がどうなっているのか知っているだろう? 人類は悪しき存在に騙されて無駄な抵抗を続けているけれど終末は避けられない運命なんだ」

 

 分かりやすいワードが出てきてトモナリはやっぱりなと思った。

 

「正しく終末を迎えることこそ本当に人類がやるべきことなんだ。正しく終末を迎えた覚醒者は救われる。新たな世界への扉が開かれるんだ」

 

 相変わらず訳の分からない理論を振りかざすものであるとトモナリは内心で笑う。

 

「どうして俺を?」

 

 トモナリが答えると興味があるのかと勘違いして槍を持った生徒はニヤリと笑った。

 

「優れた者は正しい終末を迎えて次の世界を支配すべきなのだ。君と君のドラゴンは新たな世界へ行くにふさわしい力の持ち主であるから声をかけたのさ。僕たち終末教は君のことを歓迎するよ」

 

 この二人は終末教の信者であった。

 トモナリがドラゴンを連れているということや優秀な能力を持っていることを聞きつけてスカウトしに来たのである。

 

「君が加わってくれるのなら将来の幹部級待遇は約束……」

 

「断ったらどうなりますか?」

 

 なぜか話を受ける前提で話してるけれど当然のことながらトモナリに終末教に入るつもりなどない。

 ただこのまま引き下がるのならこの場は見逃してやろうとトモナリは思っていた。

 

 後でマサヨシにチクるけど互いに疲れることなく話は終わるだろう。

 

「……もし断るなら平穏には済まないよ。君は僕たちの正体を聞いちゃったからね」

 

「俺を殺すんですか?」

 

「そうだね。最も確実な口封じだから」

 

「ヒカリもか?」

 

「ヒカリ? ……ああ、そのドラゴンか。そのドラゴンは殺さない。お前を殺した後僕たちが引き取って正しい終末のために利用させてもらう」

 

 終末教にならなきゃ殺すとはただの脅しと何も違わない。

 終末教になるつもりはないけど殺されてやるつもりもないしヒカリを好き勝手させるつもりもない。

 

 ヒカリを生かして連れて行くということは結局目的はヒカリなんだろうなとトモナリは思った。

 トモナリと槍を持った生徒の間にピリついた空気が流れる。

 

「どうする? 仲間になるか、ならないか」

 

「答えなんか決まってるだろ」

 

 トモナリはフッと笑う。

 

「仲間になんかなるかよ、クソ野郎」

 

 そして二人に向かって中指を立てた。

 例え殺されたって終末教の仲間になんかなってやらない。

 

 二人の顔が一気に険しくなる。

 

「そうか……なら仕方ないね」

 

 槍を持った生徒が槍につけていたカバーを外す。

 剣を持った生徒もトモナリを睨みつけながら剣を抜く。

 

「本当にいいんだね?」

 

「寝言は寝て言えってよく言うだろ? 俺は終末教なんかには入らない」

 

「そうか。残念だよ」

 

 槍を持った生徒が切っ先をトモナリに向けた。

 ピリついた空気が殺気に変わった。

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