ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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アカデミーに隠された武器庫3

 できることなら全部手に取って確かめていきたいぐらいの気分になる。

 トモナリの戦い方はやや速度を重視したものになる。

 

 そのために剣は重たいものや長いものよりも通常の長さや重さのものがいい。

 重そうなもの、長いもの、形状が特殊なものは除外して考える。

 

「ん? なんでこれだけ床に?」

 

 剣や刀が並べられた通路は一本だけではない。

 まだ他の通路にも剣や刀は置いてあるので次の通路に行こうとした。

 

 すると通路と通路の間の細い壁に剣が一本立てかけられていた。

 全て壁にかけられていてディスプレイされているのにどうしてこれだけ床に置いてあるのだろうと気になって手に取った。

 

 赤い鞘に触れるとグッと手に吸い付いてくるような感覚があった。

 なぜか不思議とずっと持っていたかのような奇妙な懐かしさすら覚える。

 

「む? いかん……なぜあれがここに! アイゼン、待つのだ!」

 

 柄に手をかけて剣を抜こうとしているトモナリにマサヨシが気がついた。

 トモナリが持っている剣を見てマサヨシの顔色が変わる。

 

 剣を抜くことを止めようとしたけれど時すでに遅くてトモナリは剣を抜いてしまっていた。

 

「えっ……これ、ダメだったんですか?」

 

「う……ぬ……? なんともないのか?」

 

 止めにきたマサヨシをトモナリは引きつった笑顔で見ている。

 逆にマサヨシは驚愕したような顔でトモナリのことを見ていた。

 

「ええと……」

 

「いや、なんともないのならいいのだ」

 

「これ何かあるんですか?」

 

 トモナリはそっと剣を鞘に戻した。

 

「それは曰く付きの剣なのだ」

 

「曰く付き? 何があるんですか?」

 

「声が聞こえる」

 

「こ、声ですか?」

 

 そんなオバケみたいな話と思ったけれどこんな時にマサヨシは冗談を言う人ではない。

 

「そうだ。そしてふさわしくないと言われた後その剣は持ち主を燃やしてしまうのだ」

 

「え……」

 

「そのために別の場所で厳重に保管されていたのだが……なぜこんなところにあるのか……」

 

 とんだ代物だったとトモナリは改めて剣を見た。

 剣も鞘も赤いというのはやや特殊かなと思うけれどそんな危ないものだとは思いもしなかった。

 

「あっ……」

 

「どうかしたか?」

 

「声が……」

 

「むっ、アイゼン君、それを」

 

 トモナリが危ないかもしれない。

 マサヨシが手を伸ばすけれどトモナリは剣を見つめたまま動かない。

 

「ぐっ!?」

 

 無理矢理にでも取り上げよう。

 剣の鞘に触れた瞬間炎が上がってマサヨシは手を引っ込める。

 

 剣の鞘に真っ赤な炎が蛇のように巻き付いている。

 しかしその炎はトモナリを傷つけることがない。

 

「どどど、どうしたんですか!?」

 

「……分からん」

 

 その様子を見てマコトは大きく動揺しているけれどマサヨシも何が起きているのか理解できない。

 

「トモナリを傷つけちゃダメだぞ」

 

 トモナリの肩に乗ったヒカリが鞘の炎を爪でつつこうとすると炎は爪を避けるように動く。

 

「クロサキ、いつでもアイゼン君を治療できるように用意しておくんだ」

 

「分かりました」

 

 剣の鞘に巻きつく炎がトモナリの腕を伝い始める。

 けれどトモナリは剣を見つめたまま動かず、炎はトモナリを焼いているようにも見えない。

 

「炎が……消えた」

 

「アイゼン君、大丈夫なのか?」

 

 剣に巻き付いていた炎が消えて、トモナリがハッとしたように剣から視線を外した。

 

「あ、はい……大丈夫です」

 

「それをゆっくりと床に置くんだ」

 

「……学長、これをもらってもいいですか?」

 

「なんだと?」

 

「この剣……俺がもらってもいいですかね?」

 

 トモナリはニヤッと笑うと剣を抜く。

 

「なんともないですから」

 

「うーむ……」

 

 マサヨシは悩ましげに眉をひそめた。

 曰く付きどころではなく剣を抜いたことがある覚醒者には全身火だるまになって死んだ者もいる。

 

 そんな危険なものをトモナリに渡すわけにはいかないのだがトモナリはなぜか剣に燃やされることがない。

 所有者を選ぶ道具が存在しているというのは一部の人に伝わっている話で、マサヨシもそのことを知っていた。

 

 もしかしたら赤い剣はそうした所有者を選ぶ武器であるかもしれないとは考えていた。

 トモナリは剣に選ばれたのかもしれない。

 

「大丈夫です。この剣が俺を傷つけることはありません」

 

「本当なのだな?」

 

「はい」

 

 剣がトモナリを傷つけることはない。

 その言葉を聞いてマサヨシは目を細めた。

 

「ここにあるものを好きに持っていけと言った。それがここにあったのは何かの縁だろう。好きにしろ」

 

「ありがとうございます!」

 

「何か異変があったらすぐに言うのだぞ?」

 

「ええ、分かりました」

 

 トモナリは一度赤い剣に視線を向けると鞘に収めた。

 呆然としていたマコトもあまり遅くなってはならないと武器を探して、最終的にはトモナリのアドバイスもあってナイフを選んだ。

 

 影を走り、速度が高いマコトには取り回しのしやすいナイフがいいだろうと思ったのだ。

 

「アイゼン君ありがとうございます!」

 

 トモナリに選んでもらってマコトはウキウキでナイフを抱きかかえている。

 

「そうだ、ミナミ君」

 

「なんですか?」

 

「一つ聞きたいことがある」

 

 武器庫を出て予約トレーニング棟の前で解散する前にマコトはマサヨシに呼び止められた。

 

「えっ、僕が特進クラスに!?」

 

 それは特進クラスへの誘いだった。

 マコトはトモナリのことを見る。

 

 特進クラスで待っているなんてトモナリは言っていた。

 声でもかけに来いという意味だとマコトはその時の言葉を解釈していたのだけどまさか特進クラスに誘われるだなんて思ってもいなかった。

 

「無理にとは言わない。考える時間が必要なら」

 

「い、行かせてください!」

 

「ほう」

 

「特進クラス……頑張ってみたいです!」

 

 マコトはその場で決断した。

 きっとこの話をしてくれたのはトモナリだろうとマコトでもわかる。

 

 トモナリはマコトに期待してくれている。

 なら頑張ってみようと思った。

 

「さすがだな、マコト」

 

 ヒカリもマコトの決断に感心したように頷いていたのである。

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