ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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剣に宿りしモノ1

「すっかり遅くなっちまったな」

 

 武器庫から出てきた時には夕方だった空もすっかり暗くなっていた。

 部活動をしている生徒もおらずアカデミーの中は静まり返っている。

 

 マサヨシは寮まで送ってくれると言っていたけれどつい先日襲われたばかりで終末教もまた人を送ってくるとは考え難い。

 だから大丈夫だろうと断って急足で寮まで帰ってきた。

 

「なんか食いたいもんはあるか?」

 

「お肉食べる」

 

「肉ねぇ……ハンバーグにでもするか」

 

「ん! ハンバーグいいぞ!」

 

 アカデミーはかなり便利で生徒のために結構遅い時間まで食堂がやっていたりする。

 さらには部屋まで届けてくれる宅配サービスまであって部屋から出ずとも温かい料理を食べることが可能なのである。

 

 トモナリはスマホを使って食堂に料理を注文する。

 大きめなハンバーグに大盛りご飯と食べ盛りな注文であるが、ヒカリのためにハンバーグ三つ、大盛りご飯も二つとさらに食べ盛りな注文もする。

 

 ついでにデザートも頼んでトモナリはベッドに腰掛ける。

 

「んで……これだよな」

 

 トモナリは手元の剣を見た。

 マサヨシからもらった曰く付きの赤い剣である。

 

 剣を抜いてみると炎を思わせるような真っ赤な刃が現れる。

 

「出てこいよ、少し話そうぜ」

 

 トモナリがこの剣を選んだのには理由があった。

 本来なら怪しい曰く付きの剣など選びはしない。

 

 だが赤い剣をトモナリは選んだのである。

 

「お前が俺を選んだんだからな」

 

 もっと言えばトモナリが選んだのではなくトモナリは選ばれたのである。

 赤い剣が赤い光を放ち始めた。

 

 その瞬間トモナリの意識はふっと遠くなったのであった。

 

 ーーーーー

 

「ほぅ……」

 

 トモナリは思わず声を漏らした。

 気づけばそこはベッドの上ではなく草原であった。

 

 柔らかな風が吹いていて揺れる草がサワサワと耳心地の良い音を立てている。

 少し離れたところに柱と屋根しかない東屋が見える。

 

 東屋の下には赤い髪の女性が座っている。

 

「あんたが声の主か?」

 

 トモナリが東屋に近づいて女性に声をかける。

 

「……いかにも。立ち話もなんだ、座るといい」

 

 女性はカップの紅茶を一口ゆったりと飲み込むと赤い瞳をトモナリに向けた。

 トモナリは女性の正面に座る。

 

「お主は何者だ? ドラゴンではないが、ドラゴンの気配を感じる」

 

「人に何かを尋ねるならまず自分が名前ぐらいいうものだぜ」

 

「小生意気だな。まあいい、私の名前はルビウス。偉大なるレッドドラゴンだ」

 

「……レッドドラゴン、だと?」

 

 トモナリは眉をひそめた。

 レッドドラゴンはトモナリでも見たことがある。

 

 八十番代の試練ゲートに現れるボスモンスターがレッドドラゴンであった。

 ゲートは攻略されずにレッドドラゴンは外に出てきて色々なところに甚大な被害をもたらした。

 

 結局レッドドラゴンは他のドラゴンと縄張り争いをして人間ではなくドラゴンに倒されてしまった。

 

「そう警戒せずともよい。今のところ妾はお主を攻撃するつもりはないからな」

 

 今のところはなんて言葉に引っ掛かりを覚えるが今のところは流しておこうとトモナリは思った。

 

「お主が持っている剣は妾の牙、そして心臓からできているのだ。だから妾は死んだけれど妾の意志が剣に宿っているのだ」

 

 それならばゲートから出てきたレッドドラゴンはまた別なのだろう。

 

「これでよいか? ならばこちらからも質問しよう。お主は何者だ?」

 

「……俺は愛染寅成。何者と聞かれてもな」

 

 ドラゴンに語れるような身分なんて持ち合わせていない。

 トモナリはトモナリなだけだ。

 

「ドラゴンの気配がする。あの黒い子竜との関係は?」

 

「ヒカリか? あいつは俺のパートナーだ」

 

 ヒカリのことが分かっていたのかと驚く。

 

「パートナー? 人間が、ドラゴンと?」

 

「そうだよ。何か問題でもあるか?」

 

「ドラゴンと契約しているのか?」

 

「ああそうだ」

 

 それがどうしたのだとトモナリは怪訝そうな顔をする。

 

「……お主はやはり何者なのか」

 

「だから何者ったって……俺はドラゴンナイトなだけだよ」

 

「ドラゴンナイト! ほほぅ……」

 

 ルビウスは驚きで目を見開いた。

 

「ドラゴンが守ると誓い、ドラゴンを守ると誓った者か……なるほど。だからお主からドラゴンの気配がするのだな」

 

 ルビウスは一人うんうんと頷いている。

 

「何を一人で納得してるんだ?」

 

「ふふふ、ドラゴンナイトはドラゴンと共に歩む者、ドラゴンの友である。妾がお主に惹かれるのも当然というわけだ」

 

 見るものを魅了する妖艶な笑顔をルビウスは浮かべる。

 

「気に入らぬものに妾は使われる気はない」

 

「だから他の人を燃やしたのか?」

 

「その通り。ふさわしくないものが妾を使うなど言語道断だからな。お主ならば妾を使うのによさそうだ」

 

 なんだか分からないけど気に入られているようだ。

 

「お主、妾と契約してみるつもりはないか?」

 

「なに?」

 

「妾もお主の力になってやろう。妾と契約すれば剣もお主にのみ帰属することになる」

 

 予想外の提案であった。

 驚くトモナリの顔を見てルビウスはクスリと笑う。

 

「俺にはヒカリがいる」

 

 契約できるのかもしれないけれどトモナリにはすでにヒカリというパートナーがいる。

 力を手に入れられるのかもしれないけれどヒカリの承諾なくして勝手に新しくドラゴンと契約するつもりはなかった。

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