ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした   作:犬型大

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ヒカリが生まれた4

「うん……もう頭の中で何も聞こえない。ずっとモヤモヤした感じだったのに頭の中がスッキリして自由になった感じがあるんだ!」

 

「…………そうか」

 

 今ならまだ力のないトモナリでも殺せそう。

 どう殺すか考えていたトモナリにヒカリは屈託のない笑顔を向けた。

 

 あまりにも純粋な目をしている。

 そこに破壊の色は少しも見られない。

 

 キラキラとしたヒカリの目に見つめられていると殺さねばという思いが非常で極悪なものに感じられて、トモナリは引きつったような笑みを浮かべてヒカリの頭を撫でた。

 ヒカリは目を細めてトモナリに撫でられている。

 

「……未来は変えられる」

 

 ヒカリを撫でているとふとある人の言葉を思い出した。

 悲観的に思えるような未来でも努力をすれば変わることがある。

 

 ヒカリがここにいる時点でもはや回帰前とは大きな変化が起きている。

 もしかしたらヒカリの未来だって変えられるかもしれないと思った。

 

 世界を滅ぼすほどの力を持っていたヒカリを上手く導いてやれば世界の滅亡を回避することができるのではないか。

 そう考えた。

 

「ステータス」

 

 トモナリは前を向いた。

 何かを見つめるような目をしていたが期待していたものが出てこなくて眉をひそめた。

 

「ステータスオープン」

 

 もう一度試してみるがなんの変化も起こらない。

 

「まだ覚醒してないのは確かなようだな」

 

 なんとなくは分かっていたがヒカリがいるしもしかしたらと思った。

 だが人生そう上手くはいかないようである。

 

「よいしょっと」

 

 床に座ったままなのでヒカリを抱きかかえて立ち上がる。

 持ち上げてみるとヒカリはずっしりと重たかった。

 

「何してるの?」

 

 机の上にヒカリを置いて椅子に座る。

 ボールペンを片手にノートに向かい合うトモナリをヒカリが興味深そうに覗きこむ。

 

「未来の計画を考えてるんだ」

 

 といってもほとんどのことは書き終えていた。

 何を書こうかはすでに決まっていた。

 

 “ヒカリを正しい方に育てる”

 

「なんて書いてあるのだ?」

 

「ふふ、秘密だよ」

 

「ただいまー」

 

「げっ!?」

 

 細かいことはおいおい考えていけばいい。

 クルクルとボールペンを回しながらニヤリと笑ったトモナリは玄関が開く音が聞こえてきて焦り出す。

 

 サッと時計を確認すると意外と遅い時間になっていた。

 

「トモナリ?」

 

 慌てたように部屋の中を見回すトモナリをヒカリは不思議そうな顔で見ている。

 

「ちょ、お前ここ入れ!」

 

「むぎゃ! トモナリ何する!」

 

「いーから!」

 

 トモナリはヒカリを掴むとクローゼットの中に押し込めようとした。

 ヒカリは訳も分からず閉じ込められることに抵抗してトモナリの腕にしがみつく。

 

「トモナリ、昼のことについて話し合いたいんだけど……」

 

 ガチャリとドアを開けてゆかりが入ってきた。

 一度病院まで来てくれたゆかりだったのだが、仕事も途中でありまた仕事に戻っていたのだ。

 

 帰ってくる時間だったことをトモナリは完全に失念していた。

 ドアを開けたゆかりが見たのは慌てたような顔をしているトモナリと必死に腕にしがみついて抵抗するヒカリの姿だった。

 

「……そ、それなに!?」

 

「あ、あはは……」

 

 どうやって言い訳しようか。

 これからそれを考えるつもりだったのに何かを考える前に見つかってしまった。

 

 トモナリはとりあえず乾いた笑いで誤魔化しつつゆっくりとクローゼットの扉を閉めたのであった。

 

 ーーーーー

 

「どこで拾ってきたのかしら?」

 

 リビングのイスに座らせられて事情聴取が始まる。

 ヒカリはトモナリの膝の上に大人しく座っていて、黙っているようにというトモナリのいうことを聞いている。

 

「その……帰ってくる時に」

 

 卵から生まれましたと言ってもいいのかもしれないがそうなると卵の出どころを聞かれる。

 卵がどこから来たのかトモナリには説明できないし、回帰しましたなんてところまで話がいってしまうと面倒である。

 

 猫や犬じゃないんだからと思いつつもどうにか拾ったことにするしかない。

 

「それに何なのそれ?」

 

「…………トカゲかな」

 

「ト……モグゥ!」

 

 ドラゴンにしてみるとトカゲと言われるのはかなり心外なことである。

 驚いてトモナリを見たヒカリが抗議しようとしたけれどトモナリはサッとヒカリの口を手で塞いだ。

 

「今喋らなかった?」

 

「気のせいだよ……」

 

「トモナリ……正直に言いなさい。その子、モンスターでしょ」

 

 流石のゆかりもごまかされはしない。

 トカゲというのもギリギリ理解はできなくないが背中に翼が生えているトカゲなど見たことがない。

 

 となるとモンスターしかないということは少し考えれば分かる。

 

「今通報するから……」

 

「まっ、待って!」

 

 猫や犬なら元いたところに捨ててきなさいというところだがモンスターとなると話が違う。

 そこらへんに放つわけにいかないのでゆかりは警察にでも連絡しようとした。

 

 トモナリは慌ててゆかりを止める。

 

「何かしら? モンスターを放っておくっていうのかしら」

 

「こ、こいつ危ない奴じゃないから!」

 

 トモナリが抱きかかえたヒカリをゆかりの前に差し出す。

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