高専へ戻ったその日と次の日、千鬼ずっと寝ていた。
起きたのは高専に戻ってから2日後のことだった。
『ん...ふぁ〜』
目が覚めた千鬼は起き上がり、あくびをする。
今自分がどこにいるかを確認して、呟く
『ん....家か...硝子が運んでくれたのか?』
空港に帰って、高専にタクシーで帰った後の記憶がない。
家で寝ていることから恐らく硝子には会えたのだろうが....
千鬼が寝ぼけている頭で考えていると寝室のドアが開いた。
『起きたか、おはよう』
『硝子、おはよう』
『ここまで運んでくれたのか?』
『違うよ、運んでくれたのはどくろだよ。いきなり抱きついてくるからびっくりしたよ』
その言葉で千鬼の目は完全に覚めた。
『....俺...抱きついたの?』
『なんだ覚えてないのか、いい匂いとか言ってたぞ』
『もうやめてくれ、分かったから』
赤面する千鬼を見て硝子は微笑み、
『朝食できてるけど食べるよな』
『食べる....』
千鬼と硝子は朝食を済ませて、高専に向かう。
夜蛾学長に帰還の報告をしてから硝子に安置室へ連れてこられた。
『これが、例の....』
『そう、改造人間と言ったところかな。今回は結構厄介な相手かもしれない』
千鬼は少し眉をひそめ、
『何かあったら七海のところには俺が向かう』
『その方が安心だな』
『そういえば、新しい一年生はどうだ?』
『こんな感じかな』
そう言って紙を差し出してきた。
『恵、菜々子、美々子は無事入学か、まぁ当たり前だな。釘崎野薔薇...釘崎って岩手の?』
『そう、会ったことあるの?』
『多分この子の祖母に会ったことある。歳の割に威圧感があって元気そうだった。』
『なんかこの子も気が強そうだなぁ』
『大当たり、勝気な女の子だよ』
『フッ、まぁそれぐらいなければやってけないな』
千鬼がペラリとページをめくる。
『そして...虎杖悠仁?』
『この子は一般か?』
『そうだけど、よく見てみな』
『ん?....宿儺を受肉、だが意識は虎杖悠仁本人のまま...ってことは器か!』
『(宿儺だと!)』
『おわっ!』
千鬼の脳内で大嶽丸が声を張る。
『どうしたの?』
『いや大嶽丸が...』
そう言って大嶽丸を出す。
『見せろ』
『破くなよ』
紙を受け取った大嶽丸は、虎杖悠仁の情報を見て忌々しげに大きく舌打ちをする。
嫌だというのが分かるぐらい表情に出ていた。
『チッッ!あいつも蘇ったのか...』
『正確には受肉だけど、まぁ目覚めたのには変わりないな』
『ささっとこの小僧を殺した方がいい、呪物は俺の力が戻り次第、破壊するから心配いらん!』
『いやダメだろ。せっかく五条が生かしたのに...それにその子自身は巻き込まれたみたいなもんだろ』
『何を言っている。もしこの小僧が宿儺に乗っ取られ、力が完全に戻ったらこの国の民が滅ぶぞ!危険な存在だ。早く消した方がいい』
『その言葉、お前に返って来てるからな。何をそんなに嫌がっているんだよ、怖いのか?』
少し笑って馬鹿にするように言う。
『ふざけるな!誰が恐れるかあんな自惚れ馬鹿』
『何を考えているか分からない。自分の機嫌次第で好き勝手する。訳のわからん天上天下唯我独尊のようなあいつが心底嫌いなんだ!』
『(同族嫌悪ってやつか...)殺すのは無しだ。宿儺が暴れた時に止めるのはありにする』
『そんときにボコせばいいだろ』
『俺はあいつを今すぐ消し去りたいんだ!』
『はいはい分かった。じゃあな』
『おい!待t』
千鬼は大嶽丸を強引に戻した。
硝子は呆れ顔で呟く。
『相当な関係だね、その2人』
『そうだな、まぁ大嶽丸があんな反応だから、宿儺もこいつがいるって分かった瞬間に暴れそうだな.....というかウルセェな頭の中で!』
『まぁ、様子見だな。宿儺が暴走するなら止めなくちゃならん...』
『それは別にいいけどさぁ....死なないでよ』
硝子は真剣な眼差しで千鬼を見る。
『分かってるって、でも怪我はするかも...』
『それは治してあげる』
『ありがとな』
『あとこれ、』
そう言って硝子は十数枚程の紙をまとめたファイルを渡した。
『どれどれ』
千鬼が紙の内容を見ると報告書の未提出、伊地知への報告書押し付け、予定時刻の数分の遅刻などなど五条の問題行動が書かれていた。
『....予想はしてたけど....結構あるね』
『最初はみんな黙ってたけど、特級術師の龍山千鬼が対応するって言ったらどんどん出してくれたよ』『ちなみに生徒達は最初っからたくさん出してた』
千鬼は目頭を押さえてため息を吐く
『はぁ、我が同期ながら疲れるなぁ....』
『それじゃあ、七海の任務で何かあったら俺に連絡するように灰原に言ってくれ、あと俺が戻ったことは五条や生徒達には内緒で』
『交流会の時に登場するから』
『分かった。この後は?』
『ここにいるのもあれだから家に戻るよ。五条の問題行動も見なくちゃいけないし...』
『分かった。ついでに掃除と洗濯よろしくね』
『りょうかーい』
※
千鬼が家で呪具の手入れをしているとスマホが鳴った。
『もしもし灰原か?』
『先輩!お久しぶりです。それよりも里桜高校に帳が下ろされて、虎杖君が1人で行きました。七海も行ったんですけど相手が厄介なので、先輩も向かってください。伊地知をそっちに向かわせました!』
『分かった俺も向かう』
電話を切りすぐ準備して家を出ると伊地知がちょうど着いた。
『ナイスタイミングだ。お疲れ伊地知!頼む』
『はい!』
しばらく走っていると、伊地知から近くに来たことを言われ窓から様子を見てみる。
高校があるであろう場所は帳に覆われていた。
千鬼は急いで車から降りて帳に向かう。
『(中に入れるか?)』
少し手を入れてみると簡単に入れた。
『行けるな』
帳の中に入ると、校庭に巨大な黒いドームとそれを殴る虎杖がいた。
『!、誰?!』
『君が虎杖悠仁君?俺は味方だと覚えとけばいい、状況は?(この呪力量...領域か)』
『ナナミンがこの中に!』
『(ナナミン?)OK、壊すぞ!』
千鬼は神壊を使い、領域の結界を壊す。
バリィィィン!
鏡が割れたような音とともに、虎杖と一緒に中に入る。
中では無数の手があり、七海とツギハギの呪霊が対峙していた。
『は?』
真人は驚愕する。
虎杖が自ら領域に入ってくるだけでなく、もう1人呪力量が半端ない者もいたからだ。
『(なんだあいつは?!
いやそれよりもしまっ──)』
『言ったはずだぞ....二度はないと』
その声とともに一閃──
ズバッ!
宿儺に切られ、痛みが走る。
だが次の瞬間にはまた別の光景に変わった。
『(!...な、なんだここは!?)』
真人が自分が今どこにいるかを確認する。
明らかに宿儺がいる領域ではない
空には黒雲が渦巻き、中で雷鳴が轟いてる。
周りを見ると、遠くの方で巨大な竜巻が砂塵を巻き上げている。
地面は燃え尽きたように黒く焦げていた。
その中央。
巨大な岩の上で、一人の鬼が酒を片手に座していた。
『ん、なんだお前は?』
真人の存在に気づいた鬼が、ゆっくりと顔を上げる。
──大嶽丸だった。
金色の瞳が真人を見つめる。
『ふむ....取り込んだわけではなさそうだな...』
大嶽丸が立ち上がり、ゆっくりと真人へ近づいてくる。
『..っ....』
その圧倒的な威圧感に、真人は動くどころか言葉を発することすらできなかった。
『ということは、侵入者か....魂に触れるとは面白い術式だな』
少し面白いものを見つけたような表情だったが、真人にとって冷や汗をかくのに十分な理由になった。
『その面白い術式に免じてこれぐらいにしてやる』
大嶽丸は拳を握った。
『さっさと出てけ』
次の瞬間──
真人の目の前まで迫り、腹を軽く殴った。
ドォォォーン!
その衝撃は凄まじく、虎杖達の視点では領域が解除され、真人は弾丸のようにどこかへ飛んで行ったようにしか見えなかった。
『なっ!』
『なんであんなに飛んだんだ?!』
七海はすぐに携帯を取り出す。
『灰原、さっき飛んで行ったのは呪霊です。猪野君を連れて行ってください。今なら貴方たちでも祓えます。』
七海が電話をしていると、千鬼の隣にいた虎杖が倒れた。
『!、悠仁君!しっかりしろ!』
『虎杖君!』
『七海、こっち頼む。俺はあいつを追う!』
『分かりました。お願いします』
千鬼は鷹の呪霊に乗り、真人が飛んで行った方へ向かった。
※
人が寄りつかない山の麓の温泉で漏瑚が休んでおり、その後ろでは三つの影がある。
そこに何かを抱えた神凪が来た。
『あ!いたいたー!』
『漏瑚ー!』
『!』
神凪から出ないような明るい声がしたので視線を移すと、漏瑚の目が見開く。
『真人!何があった!』
そこには首だけになった真人が神凪に持ち抱えられていた。
『その話はあとで、一旦浸かるね』
神凪は真人を温泉に入れる。
『呪力は大分戻ったようだね』
『まぁな、ここは居心地がいい。人間どもも寄りつかん』
『肉体がないのも考えもんだよねー、自己保管の効率悪いし』
『っていうかそちらの方々は?』
真人は薄く笑いながら、目線を漏瑚の近くにいる3人に向け、尋ねる。
『この者達は我が同胞達だ。神凪と儂がここへ来るように打診して来た者だ』
『実は他にも声をかけたり、封印を解いたりしててね。一旦はその3名が私たちと合流だよ』
すると3人は紹介を始める
『我は[
『[
『[
『へぇ〜有名どころじゃないか...だけど禍蛇は聞いたことないな?』
『まぁそれもそうだな、実は...』
禍蛇が何かを話そうとしたが、漏瑚が手を上げて遮る。
『それは後ででいいだろう。真人、お前何があった?』
『随分と消耗しているようだが、そろそろ話せ』
『実はねー、大嶽丸にやられたんだ。』
『宿儺と器も天敵でねぇ』
『何?!大嶽丸もいたのか!』
神凪が横から補足を加える。
『いや、正確には龍山千鬼がいたんだよ。帰って来てたようだね』
『漏瑚、宿儺と大嶽丸に触れて分かったよ』
『とりあえず神凪のプランを軸に進めていいと思う』
真人は思い出す。飛ばされた先の下水道で感じたあの感覚を
あれが呪いの王[両面宿儺]と天災の王[大嶽丸]
宿儺は現時点では漏瑚より呪力の総量が劣るはず、なのにあの存在感....
大嶽丸に関しては圧倒的だ。あれでまだ全盛期に戻ってないって...文字通りあの二つの存在は
“格が違う”
これで確信に変わった。
宿儺と大嶽丸、両方...いや、どちらかがこっちについてくれれば呪いの時代が来る。
真人は考え述べる。
『けど正直言って、宿儺と大嶽丸にはそれだけの価値があるけど...あの2人が一緒に協力するのはまずありえないかな』
真人の意見を聞いた神凪は戦争に勝つ条件三つ目の方針を決めた。
『なら、龍山千鬼を戦闘不能にするってことでいいかな?』
『そうだね、宿儺は大嶽丸と違って復活するために指が必要だ。まだ交渉の余地がある』
漏瑚は興味深そうに眉を上げる。
『なるほど、指を全て集めて宿儺に献上する...か』
『結果儂らが全滅してもだな』
『おっ分かってた』
『いいだろう、100年後の荒野で笑うのは儂である必要はない。呪いが人として立っていればそれでいい』
『じゃあ、まず高専の保有する6本の指を回収するよ』
『その案は前に聞いた。虎穴に入らずんばと言うしな....』
漏瑚はキセルのようなものを叩いて質問を続ける。
『だが、龍山千鬼の方はどうする?天岩戸の条件を考えると...絶対に封印できんぞ?』
神凪は微笑んだ。
『それも考えてるよ』
『彼には大きな弱点があってね』
漏瑚が怪訝そうに神凪に聞く。
『弱点だと?』
『大嶽丸を取り込むようなやつに弱点などあるのか?』
『あるよ』と返事をした神凪の目線は禍蛇達の方に向かれる。
『そちらの新入り3名には、家入硝子という女性を攫ってもらいたい...』
空気が張り付いた。
漏瑚が興味深げに片眉を上げる。
『ほう....』
真人は、にたりと笑った。
神凪は落ち着いた声で話す。
『高専にいる内通者から面白い情報が来てね』
『龍山千鬼が“何よりも”大切にしてるもの……それが家入硝子だ』
禍蛇が不気味に笑う。
『なるほど、それならば天岩戸に封印可能だな』
夜刀神がクククと笑う。
『それが戦力削ぎの鍵になるのなら、なおさらだ……』
土蜘蛛が重々しく頷いた。
『ふん……まぁ人間の大切なものを奪うのは、何よりも気分がいい』
それぞれの反応に神凪は怪しい笑みを浮かべる。
『決まりだね....では準備を進めよう』
呪いの計画が、静かに、しかし確実に動き出していた。
質問コーナー
Q千鬼の中ってどういう感じ?
A千鬼の中では調伏した呪霊達が住んでいます。
呪霊玉が飲み込まれるとその呪霊は何もない真っ白な空間に行き、そこで過ごしています。
中から千鬼のことを見たり、外の景色を見ることが可能で、ある程度の物(将棋盤やトランプなど)はなぜか必要な時に自動的に出てくる仕組みです。
↑ここはツッコミなしで
さらに領域を使うことができる特級呪霊が入ってくるとその呪霊の生得領域が空間に現れます。
特級呪霊が複数体いる場合は、生得領域もその都度増えていき、領域同士は綺麗に分かれています。(幽遊白書の魔界統一トーナメント会場のような感じ)
もちろん他の呪霊同士が交流することが可能です。千鬼の呪霊が日々成長しているのは(前の呪霊紹介でもチラッと書いている)こういう交流や喧嘩などがあってこその部分もあります。(これは呪霊装術の特徴の一つでもある)
Q真人が触れた時には大嶽丸の生得領域に迷い込んだってこと?
Aそうなります。
正確には真人が触れて干渉しようとすると、必ず千鬼の呪霊達がいる場所に行きます。
今回はたまたま機嫌がいい大嶽丸に遭遇したのが真人の幸いでした。
最悪の場合、千鬼の中にいる特級呪霊達に袋叩きにされる可能性もありました。
簡単に言えば、真人が千鬼に干渉したいなら、その中にいる呪霊を全て倒してからの話になるので基本的に不可能です。(というか大嶽丸が魂に関する話を千鬼にしているので、ますます干渉がし辛くなっている)
Q最後に出てきた呪霊3体は?
A敵の呪霊を増やしました。
正直言って五条悟に夏油傑、龍山千鬼という面子だけでも神凪達は相当不利なのですが、それに加えて大嶽丸だけでなく、特級呪霊の数でも神凪達が劣っているので敵も強化した方が良いということで増やしました。
どれも知る人ぞ知るような妖怪をモデルにしています。
禍蛇の方もある妖怪をモデルにしているのですが、それぞれの詳しい紹介は多分、後々紹介します。
ちなみに呪霊はもう少し増やしていく予定です。
(術式や領域、考えるのが大変....)
呪霊装術、渋谷事変も書いて欲しい?
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YES
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NO