呪霊装術   作:戦艦YAMATO

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京都校と初めて本格的な交流をした時の話です。


幕間の小話5

 

 

〈京都校との対面〉

 

 

今日は体術の訓練ということで京都校の面々がグラウンドに集まっていた。

 

桃が呟く。

『体術って....私苦手』

 

それに続いて真依も呟く。

『東堂の無双状態確定じゃない』

 

『俺は意味あるのカ?』

 

メカ丸の疑問に加茂が答える。

『技術を覚えるというだけでも十分意味があるものだろう』

 

雑談をしていると歌姫が来た。

 

『はーい、みんな集まってるわね』

 

『先生!体術って具体的にどんなのを?』

 

『より実戦に重きを置いた形よ。だけど私じゃ貴方達に十分教えられない』

『だから、今回は特別講師を呼んだわ』

 

『特別講師?』

 

『そう、私の後輩で実力も人間性もちゃんと信頼できる人を呼んだわ』

 

『そう言われると少し恥ずかしいですね』

 

突然、京都校の生徒達の後ろから知らない声がした。

全員が咄嗟に振り返ると

 

『こんにちは』

 

東堂よりもでかい男が優しそうに挨拶をして来た。

 

『こっち来なさいよ』

 

その人物は歌姫の隣に来て、

『知ってると思うけど紹介するわ』

『特級呪術師の龍山千鬼よ』

 

『どうもこんにちは。龍山千鬼だ』

『ごめんな、驚かせてしまって。ほんの少しの間だが、よろしく頼む』

『気軽に千鬼先生って呼んでくれて構わないぞ』

 

千鬼は気軽そうにしているが、生徒達はそうではなかった。

 

『(禪院家を1人で壊滅できるという龍山千鬼か....加茂家嫡流として目指すべき場所に立っている人間だ)』

 

『(龍山千鬼って真依ちゃんが言ってた人。意外と話が通じそうな部類)』

 

『(危険とされる呪霊装術を持った術師カ)』

『(呪霊になるリスクを考えると、俺よりもタチが悪いナ)』

 

『(この男が師匠が言っていた龍山千鬼....)』

 

『(龍山千鬼!マジで!きゃー本物だ!)』

『(写真撮ってもいいかな!)』

 

すると真依が前に出て挨拶をする。

 

『お久しぶりです。千鬼さん』

 

『おう、真依か。元気そうでよかったよ』

『あとここでは先生と呼ぶように』

 

『はい、千鬼先生』

 

『霞ちゃん、真依ちゃんって龍山千鬼と知り合いなの?』

 

『真依から聞いた話ですけど、高専に入学する前に家の方にたまに稽古しに来てくれたらしいですよ』

 

『おい』

 

東堂が千鬼に声をかける。

 

『ん、君は?』

 

『東堂葵だ』

『龍山千鬼、好きな女のタイプはなんだ』

 

その言葉に京都校はまたかという表情になる。

 

『(東堂葵...在学中に一級になっているセンス抜群の生徒と聞いていたが、確かにセンス抜群だな)』

『俺の女の好み聞きたいのか』

 

『あぁ、女の好みがつまらん奴はそいつ自身もつまらん奴だからな。特級術師と言えど、俺を退屈させるなら潰すまで』

 

『(センスじゃなくて癖のある奴だな)....そんなに聞きたいなら教えてやるよ』

『ただし、俺に勝ったらな』

 

ドゴッ!

言い終わると同時に東堂はパンチを繰り出すが、簡単に止められた。

 

『攻撃に転ずるのが早い、いいね〜』

 

ギギッ

 

『!(動かん!)』

 

東堂は掴まれた拳が動かせないと分かると回し蹴りを繰り出そうとするが、先に千鬼が顎に目掛けてアッパーを繰り出した。

 

ゴッッ!

 

『うぐぉ....』

 

東堂はそのまま大の字に倒れた。

 

目の前で見ていた真依は目を見開く、

『(東堂が一撃で!)』

 

『数分で起きるだろ』

 

『さて、まずは実力の確認だ。全員で来い』

 

 

 

東堂が起きる数分後には京都校の生徒達は地面に倒れ込んでいた。

地面に倒れた京都校の生徒たちは、息を切らしながらも千鬼の方を見る。(メカ丸はボロボロ)

 

『はぁ…はぁ…(箒に乗せてすらくれないとはね)』

 

『まさか、全員が一瞬でやられるとは…』

 

『これが特級術師カ…』

 

千鬼は腕を組みながら、倒れている生徒たちを見下ろした。

 

『お前ら、全然悪くはない。むしろ、よくやった方だ。』

『だがな...』

 

千鬼の目つきが鋭くなる。

 

『呪術師として戦う以上、術式を過信しすぎて体術を軽視するのは死への片道切符だ』

 

生徒たちは真剣な表情で千鬼の言葉を聞く。

 

『俺がやるのは、お前らの体術を底上げすることだ。ただ鍛えるんじゃない、戦場で生き残るための体術を叩き込む』

 

千鬼が手を叩くと、歌姫が前に出てきた。

 

『まずは基本の立ち方から見直しましょうか。いくら呪力で身体能力を強化しても、軸がブレていたら意味がないわ』

 

『そんなの今さら…』と呟いたのは憲紀だったが、千鬼は笑いながら答えた。

 

『そう思うか? なら、もう一度俺に攻撃してみろ』

 

憲紀は呪力による身体強化に、赤鱗躍動を駆使して拳打を放つ。

 

『はあっ!』

 

しかし、千鬼はわずかに身をずらしただけで、加茂の攻撃を避けると同時に、背後に回った。

 

『っ!? いつの間に…!』

 

『足元を見ろ』

 

加茂が視線を落とすと、自分の立ち方が崩れていることに気づいた。

攻撃に意識を向けすぎて、体の重心が前のめりになり、次の動作に繋げられない。

 

『立ち方が悪いと、動きも遅くなるし、隙も大きくなる。相手が上手ければ、こうなる』

 

そう言いながら、千鬼は憲紀の肩を軽く押した。

バランスを崩した憲紀は、簡単に地面に転がる。

 

『これが、お前らが“体術を軽視している”ってことだ』

『今まともに体術が行えているのは、はっきり言って東堂だけだ』

 

京都校の生徒たちは改めて千鬼の実力を思い知った。

 

『よし、まずは基礎の体捌きからやるぞ』

 

倒れた東堂もすでに起き上がり、腕を組んで千鬼を睨んでいた。

 

『起きたか、東堂葵』

 

『フッ……さすがに一撃で倒されたのは初めてだったが、いい経験になった』

 

『なら何よりだ。じゃあ、東堂、お前も含めて全員、正しい立ち方を身につけてもらう』

 

千鬼はグラウンドの中央に立ち、静かに構えた。

 

『まず、体の軸を意識しろ。力を入れるんじゃなく、自然に立つ。そう、まるで一本の柱のようにな』

 

生徒たちは千鬼の指示に従い、立ち方を修正しようとする。だが、いざ意識すると逆に力が入ってしまい、不自然な姿勢になってしまう者も多かった。

 

『霞、お前は力が入りすぎだ』

 

『えっ、そんなことないはず…(声かけられちった)』

 

『試しに押すぞ』

 

千鬼が霞の肩を軽く押すと、彼女はバランスを崩しそうになった。

 

『ほらな。力むと逆に動きが鈍る』

 

『そ、そうかも…(きゃー押されちった)』

 

『(なんか別のことを考えてるような....)よし、まずは足の位置から意識しろ。重心を分散させるように立つんだ』

 

千鬼はひとりひとりの姿勢を見て修正していく。生徒たちは戸惑いながらも、真剣に取り組んでいた。

 

東堂が腕を組んで様子を見ていると、千鬼が目を向けた。

 

『どうした? お前もやるんだぞ』

 

『俺は必要ない』

 

『ほう、なら見せてみろ』

 

東堂は不敵な笑みを浮かべ、構えを取った。

無駄な力みはなく、安定した立ち姿だ。

 

『なるほどな。お前は基礎ができている』

 

『当然だ』

 

『だがな…』

 

千鬼は一瞬で東堂の前に踏み込み、軽く肩を押した。

 

『っ!?』

 

東堂の身体がぐらついた。すぐに体勢を立て直したが、わずかにバランスを崩したのは明らかだった。

 

『お前は攻めに強いが、守りに甘い』

 

『…なるほどな』

 

東堂は悔しそうにしながらも、納得したように頷いた。

 

『お前ら、覚えておけ。強さとは攻める力だけじゃない』

『どんな状況でも崩れない安定した身体を作ることが、本当に“生き残れる”呪術師になるための第一歩だ』

 

千鬼の言葉に、生徒たちは改めて気を引き締めた。

 

『よし、それじゃあ次は──』

 

 

 

 

千鬼が来て2週間ほど経った時、グラウンドで体術のおさらいをしていると補助監督が千鬼に駆け寄る。

 

『龍山特級術師、出張任務です』

 

『場所は?』

 

『四国地方となっています』

 

『四国地方か....今日中には着けそうだな』

『1時間後に高専出るので、飛行機とかの手配をお願いできますか?』

 

『分かりました。準備しておきます』

 

『先輩すみません。どうやら今日までですね』

 

『いいのよ。むしろ2週間も特級術師から教えてもらったんだから、この子達もいい経験になったし』

 

『そうだ。千鬼先生、俺も良い経験になったぞ』

 

『ご指導ありがとうございました』

 

『またお願いします』

 

東堂、霞、真依がお礼を言い、他の生徒達もお礼を言おうとしたが千鬼が手をあげて止める。

 

『いや、まだ終わんないぞ』

 

『えっでも』

 

『なんのために1時間後に設定したと思ってる』

 

『最後に何かするのカ?』

 

『あぁ、そうだ』

 

すると千鬼の呪力の流れが変わり、生徒達は身構える。

 

『....お前ら、最後の授業では実戦形式で行う』

 

千鬼の後ろから20mを超える巨大な骸骨、がしゃどくろが現れた。

 

『祓わなくていい....生き残れよ』

 

がしゃどくろは巨大な骨の腕を振り下ろす。

途端に地面が激しく揺れる。

 

砂煙が舞い上がる中、京都校の生徒たちは素早く散開し、攻撃の範囲外へと逃れた。

 

『っ…!何これ、やばすぎでしょ!』

桃が息を呑む。

 

『…千鬼先生、マジか』

霞は額に汗を滲ませながら、巨大な骸骨を見上げた。

 

東堂が不敵に笑いながら拳を鳴らす。

『ほう…面白い! つまり、こいつの攻撃を凌ぎきればいいんだな?』

 

千鬼が腕を組んで頷く。

『ああ。祓う必要はない。だが、生き残れ。』

 

がしゃどくろの目が怪しく光ると、次の瞬間、骨の腕が再び振り下ろされた。

 

『来るぞ!!』

加茂が叫びながらも穿血を撃つが、

 

ゴッ!

 

『!(効いてない!)』

 

真依が銃を構え、呪力を込めた弾丸を撃ち込む。

しかし

 

ガンッガンッ

 

『!?』

 

呪力弾が当たるが、まるでダメージを受けた様子はない。

 

『無駄な攻撃はかえって相手を刺激するぞ』

千鬼の声が響く。

 

『……つまり、攻撃しても意味がなイ』

自分の攻撃が効かないことを確認したメカ丸が瞬時に状況を判断し、素早く回避行動を取る。

 

それに合わせて他の生徒達も回避行動を取るが、がしゃどくろの体が不気味に揺れたかと思うと、無数の骨の棘が弾丸のように飛び出した。

 

『っ!伏せろ!』

 

生徒たちは散開し、飛び交う骨の弾幕を避ける。

だが、完全に避けきれる者はほぼいない。

東堂の肩をかすめ、加茂の袖が裂ける。

 

『くっ…近づけない!』

 

『……いや、近づく必要はないカモしれないナ』

メカ丸が冷静に言う。

 

『…どういう意味だ?』

東堂が問いかける。

 

『がしゃどくろの攻撃範囲を見てみロ…基本的に大振りな攻撃ばかりだろウ? ということは』

 

『動きが読める!』

憲紀が気づく。

 

千鬼がわずかに笑みを浮かべる。

 

『…正解だ。お前ら、特級だろうがピンキリある』

『“特級だからもう敵わない”という考えを捨てて、まず相手の動きをよく見極めてみろ』

 

『…なるほどな』

 

東堂がニヤリと笑う。

 

『つまり、こいつの動きを見極めて避け続ければいいってわけか!』

 

生徒たちは再び動き始めた。

 

がしゃどくろの大きな攻撃をギリギリでかわしながら、全員がそれぞれの方法で回避に徹する。

 

真依と三輪は素早いフットワークで間合いを取り、加茂は赤鱗躍動を使いながら紙一重で攻撃をかわす。

 

東堂は力強い脚力で地面を蹴り、時には術式を使用して、常にがしゃどくろの死角に回り込んでいる。

 

メカ丸はセンサーを駆使し、攻撃のタイミングを正確に予測する。

 

桃は箒に乗りながら、飛んでくる骨の弾丸を避けつつ、自分に弾丸の攻撃が来るようにして皆に攻撃が向けられないようにする。

 

『(やれる!いける!)』

真依が汗を拭いながらも、確信を持ち始めていた。

 

がしゃどくろが最後の一撃を振り下ろす。

 

全員が息を合わせるように、一斉に回避した。

 

 

沈黙

 

 

がしゃどくろは動きを止める。

 

そして、千鬼が手を叩いた。

 

『終了だ』

 

その言葉と同時に、がしゃどくろの姿が霧散するように消えていった。

 

生徒たちは息を切らしながらも、大きな怪我も無く立っていた。

 

『....終わった、のか?』

 

加茂が不安げに千鬼を見る。

 

千鬼は満足そうに頷いた。

 

『ああ、お前らは生き残ったよ』

 

『フッ、まあ当然だな!』

東堂が腕を組んで笑う。

 

『…思った以上に、体術と立ち回りが大事だと実感したわ』

真依が息を整えながら言う。

 

千鬼は生徒たちを見渡し、最後に言葉を送った。

 

『呪術師は、術式だけに頼るな。体術を疎かにする奴から死ぬ』

 

生徒たちは真剣にその言葉を受け止める。

 

『この2週間、お前らは確実に強くなった。あとは実戦で活かせるかどうかだ』

 

千鬼は満足げに頷き、

 

『じゃあな。機会があれば、今度はもっと深く教えてやる』

 

そう言って歌姫と一緒に校舎へ向かう。

 

『『『『『『ありがとうございました!』』』』』』

 

生徒達は去っていく千鬼に一斉に挨拶をした。

 

 

 

『ちょっと厳しすぎましたかね?』

 

『いいえ、逆にありがとね』

『あぁいう実戦的な訓練ってなかなかできないから、あの子達もいい経験になったわ』

『それに、特級という世界を少しは実感したんじゃないかしら』

 

『なかなかいいですよ京都校も』

『今度、特級に遭遇しても生き残るどころか、東堂あたりが祓うんじゃないですか?』

 

『確かに、ありえるわね』

(ちなみに神凪が百鬼夜行を起こす前の時系列です)

 

『それじゃ、自分はこれで』

 

『えぇ、ありがとう。またよろしくね』

 

『歌姫先輩もお元気でー』

 

千鬼は手を振りながら、車を用意した補助監督のもとへ走って行った。

 






〈訓練が終わった後〉


そういえば千鬼先生の女性のタイプってなんだったんでしょう?

『霞ちゃん、気になるの〜』

『えっ、まぁ少し(やっぱあぁいう人は理想が高いのかな)』

『私は小さい頃に仲良さそうな女の人は見たことあるけど...』

『それほんと!真依ちゃん』

『え、えぇ』
『でも今はどうか』

『だったら歌姫先生に聞いてみようよ。後輩って言ってたし、何か知ってるんじゃない』

西宮は三輪と真依を連れて歌姫のところ行き、千鬼はどんな女性がいいのかを聞いた。

『女のタイプもなにも、結婚してるわよ』

『『『えっ!』』』

『だ、誰とですか!?』

『東京校の家入硝子と』

『硝子、先生と....』

『うわ〜、ハイスペック夫婦ですねぇ』

『あまり口外しないでね。本人達は大々的に言いふらすようなことはしないから』

『分かりました』

『もちろん』

『....はい』

そう言う3人だが、今度の交流会で硝子に話を聞いてみたいと思うのだった。
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