ボボボボボッ
突如、五条達がいる部屋の札が全て赤色に燃えた。
それと同時に千鬼の蝿頭の視覚が全てブラックアウトした。
『!(何があった?!全部で百以上はいたはずだぞ!)』
『団体戦終了?....しかも全部赤色』
『妙だな烏達が誰も何も見ていない』
五条が千鬼に目線を送るが、千鬼はダメだというサインを返す。
『GTGの生徒達が祓ったって言いたいところだけど』
『未登録の呪力でも札は赤く燃える』
『おそらく、侵入者の可能性が高いね』
『天元様の結界が機能してないの?』
『外部だろうと内部だろうと、不測の事態には変わるまい』
夜蛾はすぐに指示を出す。
『俺は天元様の所に向かう』
『悟、傑、千鬼は楽巌寺学長と歌姫と共に学生の保護を』
『硝子は医務室へ待機、おそらくもっと怪我人が出てくる』
『分かりました』
『冥はここで区画内の学生の位置を特定、悟達に逐一報告してくれ』
『委細承知、賞与期待してますよ』
『ほらお爺ちゃん散歩の時間ですよ!昼ごはんはさっき食べたでしょ!』
『足腰が悪いなら運びましょうか?』
楽巌寺は五条と夏油の煽りを無視する。
『何やってんだ、急ぐぞ』
五条達は急いで外に出るが帳が下りてきていた。
『三人共!帳が下り切る前に先に行って!』
『『『無理ですね』』』
『はぁ!?』
そうこうしているうちに帳が完成する。
『ま、下りた所で破りゃいいでしょ』
五条が帳に触れた
バチィィィ
途端に手が弾き返された。
『?(なんだこの違和感...)』
『ちょっと』
五条が呼ばれた方を向くと、帳に手を入れている歌姫の姿があった。
『なんであんたが弾かれて、私が入れんのよ』
『いや、私と千鬼も入れる』
『.....なんでだ?』
五条は何かが分かりニヤッと笑う
『成程』
『傑達は先に行ってて、この帳』
『これ、五条悟を拒む代わりに、その他全てのものが出入り可能な結界だ』
『『『『!』』』』
『確かにそれなら足し引きの辻褄は合うな』
『でも特定の個人のみに作用する結界なんて...』
『余程腕の立つ呪詛師がいるね』
『そう、しかもこちらの情報をある程度把握してるね』
『だったら先に中に入って原因潰すぞ』
『1人でも死んだら俺らの負けだ』
4人で帳の中へ入ると、とても濃い呪いの気配がする。
『(なんて濃い呪いの気配!特級は確実ね)』
『おいおいおい』
階段の上から妙な格好の男が降りてきた。
『大量じゃねぇか』
『呪詛師か...できる方だな』
『だけどこの気配の主ではないね』
楽巌寺は素早く指示を出した。
『皆は先に行け、学生の保護を優先、歌姫は極力戦うな』
『ちょっと待てよ。せめて女を殺らせろ!』
『ジジィのスカスカの骨とシワッシワの皮じゃなんも作れねーよ!』
『スカスカかどうかは』
楽巌寺は大きなケースからギターを取り出す。
『儂を殺して確かめろ』
※
〜少し前〜
加茂と伏黒が建物から出て再び戦おうとする所に建物を越える巨大な木の塊が襲いかかる。
『なっ、なんだこれは!』
木の下で屋根の上を狗巻と菜々子、美々子が走っていた。
狗巻は伏黒と加茂を確認すると
『逃、げ、ろ』
呪言によって2人の体が動く、なんとか攻撃を回避した。
『恵!大丈夫?』
『あぁ、それよりもなんだこれは?』
恵は美々子に確認する。
『特級呪霊が出たの!』
『なに!』
『なんだと!』
伏黒達は一旦逃げるのをやめ、花御と向かい合う形になった。
『なぜ高専に呪霊がいる』
『帳も一体....』
『多分その呪霊と組んでいる呪詛師のです』
『何か知ってるのか?』
『風姿も報告と近いので、以前五条先生を襲った特級呪霊だと思います』
『ツナマヨ』
『そうですね。菜々子、五条先生に連絡してくれ』
『OK』
『ちょっ...と待て』
『君は彼が何を言っているのか分かるのか?』
『今はそんなことどうでもいいでしょ』
『相手は領域を使うかもしれません』
『距離をとって五条先生達のところまで後退....』
その時、
加茂の背後に花御が迫る。
ビッ
パキャッ
一瞬の隙をつかれ、菜々子のスマホが壊された。
『動くな!』
狗巻の呪言で止まり、その間に攻撃を仕掛ける。
加茂は輸血パックを破き
赤血操術 【苅祓】
バシュウ
花御に当たるが効果はなかった。
『(ダメージなしか!)』
伏黒は鵺と剣を持ち、攻撃するが、傷ついてすらいない。
『チッ(さすがに固い!)』
『ちょっと!うちのスマホに何してくれてんの!』
『菜々子、落ち着いて』
『ツナツナ』
その時
『(やめなさい、愚かな児等よ)』
伏黒達の頭に花御の言葉が響く、だが聞いている音は全く理解できない言語なので気味が悪く感じた。
『なんか気持ち悪い...』
『変な感じぃ』
『気持ち悪ぃな』
『(私はただ、この星を守りたいだけです)』
『呪いの戯言だ。耳を貸すな』
『低級呪霊だったらそうしますけどね』
『(森も海も空も、もう我慢ならぬと泣いています)』
『(これ以上、人間との共存は不可能です。
欲しいに優しい人間がいることは知っています。
しかし、その慈愛がどれだけの足しになろうか)』
『(彼らはただ“時間”を欲している)』
『独自の言語体系を確立しているんです』
『....狗巻を下がらせろ』
『(“時間”さえあれば、星はまた青く輝く)』
『時間?』
『(そう、人間のいない“時間”)』
『あぁ、そういう系ね』
『(死して、賢者となりなさい)』
『建物に入れ!』
伏黒の号令で建物の中へ逃げ込む、木の塊と共に花御も追ってきた。
伏黒恵は目の前の異形を睨みながら呼びかける。
『連携して戦うぞ!』
伏黒の呼びかけに、狗巻も答える。
『しゃけ』
呪言を温存しつつ、周囲を警戒しているのだろう。
一方、菜々子はポケットからデジカメを取り出し、美々子は縄を構えて花御を睨む。
花御は木の鞠のようなものを出して攻撃を仕掛ける。
『止まれ』
呪言で木の鞠と花御が止まる。
【百斂 穿血】
ドシュ
花御の顔が少し傷つく
『!』
『すごいじゃん!』
『急げ、どうせすぐ治してくる』
『狗巻先輩、大丈夫ですか?』
ゴホッ
『しゃけ』
伏黒達は屋根の上に出て、すぐに体勢を整える。
伏黒は鵺を出し、指示する。
『狗巻先輩と菜々子が止めてくれる。ビビらずいけ』
鵺が花御に一直線に突っ込み、狗巻が呪言を使おうとした時
ガハッ
ドシュッ!
狗巻が吐血し、鵺は花御に刺された。
『(先に限界がきたのはコッチか!)』
『っ!』
パシャ!
加茂に向かう花御を、菜々子が急いで写真を撮るが
『ごめん!半分しか写ってない!』
花御は半身は動かなくなったが、木の塊を加茂にぶつける。
バゴォ!
木の鞠で追撃をしようとしたところに美々子が急いで加茂を縄で引っ張る。
パシッ!
『生きてますか!加茂先輩!』
伏黒は状況を確認する。
『(強い言霊を使っていないのに、先輩の喉が潰れた)』
『(菜々子の呪力も乱れてる。数回止めただけで....)』
『(それだけ…格上!)』
『高菜』
伏黒に任せろと言わんばかりに前に出た狗巻は、口から血を流しながらも花御に向かう
『先輩だめです!』
『狗巻先輩!それ以上は!』
『ぶっとべ』
ドガァァァァン!
ガハッッ
狗巻は血を吐いて倒れてしまった。
花御が飛ばされた先で真希が刀を振り下ろす。
『(そのナマクラでは私は斬れませんよ)』
ギィン
花御が腕でガードすると刀は簡単に折れてしまった。
『チッ』
伏黒が駆けつけて、花御の顔の樹を切る
ズバッ
『(目の樹は他と比べて脆い!)』
だが、すぐに再生されてしまった。
『(こちらの刀は悪くない)』
『恵、他は?』
『菜々子と美々子に先輩達を家入先生のところまで運んでもらってます』
『そうか....おい、もっといいのがあるぜ』
真希は伏黒の影から特級呪具【游雲】を取り出した。
『これを使うのは、少し気をつけねぇといけねぇけどな』
※
一方、夏油は千鬼達とは別行動をしていた。
呪力が濃い方へ向かっていると、向こうから菜々子と美々子が誰かを担いで走ってくるのが見えた。
『『夏油様!』』
『2人とも、無事でよかった』
『だけど、先輩達が』
『!(憲紀と棘!相当やられているね、2人の呪力も少ない....やはり特級が)』
『とりあえず硝子のところへ』
夏油が2人を連れて行こうときたその時──
ォォォォォォ
夏油達の周りから武者鎧を着た者達が現れた。
『!』
『何!?』
『囲まれてる!?』
夏油はすぐに虹龍を使い、周りを一掃する。
『これでいいかな』
『夏油様すごい!』
『さすがです』
『やはり、だめでしたか』
『『『!』』』
突如、上から鈴のような女の声が聞こえたので、見上げると
『一筋縄ではいきませんね』
黒い着物を着た女性が、夏油達を見下ろしていた。
『(この呪力量....特級か)2人とも、急いで硝子のところへ』
『でも...』
『私は大丈夫だから』
『...分かりました。行くよ美々子』
『うん!』
2人は加茂と狗巻を担いで校舎へ向かった。
女性は2人に見向きもせず、夏油を見下ろしている。
『見逃してくれたのかな?』
『私の目的はあなたです。
まぁ、龍山千鬼もいたほうが都合が良かったのですが....』
『君は敵であっているんだよね?』
『まぁ、あなたを殺そうとしてますから』
言葉と同時に、女性が手を振ると無数の弓が出現し、夏油目掛けて射抜く。
夏油は呪霊を使い、難なく防いだ。
『....名前を聞いてもいいかな?』
『それは申し訳ありません』
『申し遅れました。
私の名は、【
その名前に夏油は驚愕する。
『!(滝夜叉姫....確か平安の呪詛師)』
『(当時の術師達が討伐したと聞いていたが....呪霊になっている)』
『(術師としての腕は確かだけど、それよりも注目すべきは)』
『確か父親は』
『やはり存じ上げていましたか。私の父は【
『ふっ、超大物じゃないか....』
『父の国を再び作るため、まずあなたには死んでもらいます』
滝夜叉姫が手を振るうと、無数の武者達が出てくる。
しかも、呪力が先ほどと比べて高いようだ。
『....千鬼達と別れて正解だったよ』
夏油も後ろから呪霊達を出す。
『さて、私も頑張るか』
武者達が一斉に夏油に襲いかかった。
※
〜高専内〜
なんとか菜々子と美々子は校舎にたどり着き、加茂と狗巻を硝子に治療をしてもらっていた。
『すみません家入先生』
『おかか....』
加茂と狗巻が申し訳なさそうにする。
2人の傷はもう大丈夫そうだ。
『いいよ別に、これが私の役目だからね』
硝子は変わらぬ調子で答える。その声は穏やかで冷静、だが医務室に漂う空気は、わずかに緊張の糸を含んでいた。
『だが、すぐに戻らなくては』
『しゃけしゃけ』
『無理しないほうがいいよ』
『そっちの2人もね』
『だけど家入先生、あいつ私のスマホ壊したんだよ!』
『それに恵達も心配....』
『五条達が対処しているんだ。大丈夫だろ』
その言葉に4人はようやく頷く。わずかに表情も和らいだ。
『まぁ、それもそっか』
『夏油様や千鬼先生に五条先生もいたら、解決できないことはないしね』
その時だった....
『だが、警戒は怠らないほうg....!』
加茂は言葉が不自然に途切れ、目を見開く
『こんぶ?』
狗巻が首を傾げた瞬間、加茂は窓の方を見て叫ぶ。
『皆、扉の方に下がれ!』
加茂の指示で全員が急いで扉の方へ下がった瞬間
バゴォォォン!
医務室の窓側の壁が壊れる。
壊れた壁から入ってきたのは
上半身は男だが、下半身は人間の大きさを優に超える巨大な蜘蛛になっている者
もう一人は和装を着ており、瞳の色が黒く、瞳孔が青色で、顔には水が流れるような呪霊特有の模様が浮かび上がっている青年だった。
見た目からしてただ者ではなく、纏っている呪力からして、2体とも特級呪霊なのは間違いなかった。
『っ!(さっきの特級....いや、それ以上か!)』
『はぁ!なんなの、こいつら!?』
『っ!....まずい...』
加茂が歯を噛みしめ、背筋を強張らせた。菜々子と美々子も、咄嗟に背中を壁へ寄せる。
『おかか....』
狗巻の声に緊張が混ざる。
硝子は驚きつつも、口を開く
『壁ぶち破ってくれてさぁ....随分と派手にやってくれたね』
いつもと変わらない様子で相手に話しかける。
『直すの大変なんだけど....』
『それはすまない』
青年は涼しげに微笑んだ。
『私は
『なに!』
『こんぶ...』
『(土蜘蛛か......確か特級として登録されている呪霊だったな)そんなやつらがなんの用?』
『治療を受けに来たってわけでもないし』
硝子の声には揺れがなかった。
『生憎、五条達はいないよ』
『あぁ、それは都合がいい。今回は五条達が目的ではないからな』
『は?』
『目的は....君だよ家入硝子』
その一言で、医務室の空気が一気に凍りついた。
『!....殺そうっての?』
硝子がの目が少し険しくなるが、禍蛇は微笑みながら返す。
『いやいや、ちゃんと生かしたままだ』
『殺すと、いろいろと面倒だからな』
狗巻は急いで口元のジッパーを開く
『うごく、(ギチッ)っ!』
狗巻が呪言を言おうとした瞬間に首に糸が巻き付いた。
『せんぱ、!』
『何これ...』
『くっ!.....動けん』
気づけば、硝子以外の4人の体には蜘蛛の糸が絡み付いていた。
『まだ殺すなよ、土蜘蛛』
『...分かってる』
禍蛇はゆっくりと硝子に近づく
『さぁ、大人しくきてもらおうか』
『っ...』
硝子はなんとか状況を覆そうと考えるが、
『少しでも逃げるか、抵抗をしたら』
禍蛇の言葉と共に、狗巻の首から一筋の血が流れる。
『っ!...』
『生徒達が切り刻まれるぞ』
そう言って禍蛇の手が硝子へ伸ばされた。
〈返してね〉
『真希、借りるのはいいけど...』
夏油は渋々という表情で【游雲】を差し出す。
『分かってるよ。ちゃんと返す』
真希は受け取り、伏黒に渡した。
『分かってるならいいけどね』
『恵、くれぐれも無くさないでくれよ』
『分かってますよ』
『それ5億円くらいするからね』
『えっ!』
『無くしたら真希と一緒に弁償ね』
『なんで私もなんだよ!』
『当たり前だろう』
『そんなんじゃ、菜々子と美々子に嫌われるぞ!』
『2人は私の味方さ...』
『どうだか、反抗期って怖いからなぁ』
真希はニヤッと笑う。
『えっ、2人がなにか言ってたのかい?ちょっと真希』
『...(使わないほうがいいんじゃないか?)』
伏黒は必死に聞き出そうとする夏油を見て、めんどくさそうだから絶対に無くさないようにしよう、と誓うのだった。