呪霊装術   作:戦艦YAMATO

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交流会も終盤です。
ということは渋谷事変がもう少し、展開はどうなるか私にも分かりません!
(逆に知りたい!)


30話 呪いに溺れた者

 

 

硝子達は冥冥の元へ向かった。

冥冥が硝子の説明を聞いて、戦闘準備をしたその時だった。

 

『!、硝子様!』

 

『え?』

 

雪女は叫ぶと同時に硝子の影に向かって氷の槍を放った。

影に槍が刺さると思われだが、急に影が槍を弾き返し、どんどん浮き上がる。

 

雪女は急いで硝子の前に出て、いつでも守れる形になる。

 

『やれやれ、1人になったところを狙っていたんだが....我も鈍ったものだな』

 

現れたのは1人の男だった。

漆のように黒い髪、額には一本の角、白と墨色を基調とした和装で、瞳孔は蛇のように縦長で金色だった。

 

『よく見つけたな』

 

『わずかに硝子様とは別の呪力が感じられたので...』

 

『なるほど......久しぶりに影に潜むから油断してしまったか』

 

冥冥は斧を構えて問いかける。

 

『何者だい?君』

 

『我は【夜刀神(やとのかみ)】聞いたことはあるだろ?』

 

『へぇ(登録されている特級16体の内の1体か....)』

 

『また特級!』

 

『こんぶ!』

 

『現れすぎでしょ!』

 

『それほど我らも、本気で潰すつもりということだ』

『さて....家入硝子以外は、殺せばいいな!』

 

夜刀神が腕を振ると、影でできた巨大な蛇が2匹現れ、冥冥と生徒達に襲いかかった。

 

冥冥は斧で切り裂き、雪女は氷の槍で蛇を串刺しにすると蛇は消えていった。

 

『おや、大したことないね夜刀神も、!』

 

『皆様、私が夜刀神を抑え、っ!』

 

二人の目が見開かれた。

 

体に感じた違和感

 

 

──呪力がだんだんと少なくなっている。

 

 

 

『!、(呪力が乱れている?)』

 

『....これは...呪力が吸われている?』

 

『ふははっ、かかったなぁ』

 

夜刀神は怪しい笑みを浮かべた。

 

雪女は先程の戦いで呪力を消耗していたので、もはや戦える力はほぼ無くなってしまった。

 

『っ!....申し訳ございません....』

 

『ちょっと、雪女!?』

 

菜々子が叫ぶが、雪女は首を振る。

 

『...もうこれ以上、守れません......硝子様、どうか......ご無事で......』

 

そう言って、雪女は消えてしまった。

 

加茂は内心舌打ちをする。

『(一番の対抗手段が断たれた。それに、冥冥の様子もおかしい)』

 

冥冥も呪力が吸われ続け、状況は悪化しているのを感じていた。

 

『...ちょっとマズいね、これは』

 

すると何かに気づいた硝子が呟く。

 

『名前?』

 

『正解だ。我の術式は【名喰影(なぐえ)

我の名を口にしたものは、徐々に呪力を吸い取られる』

『もちろん、吸い取った分は我のものだ』

 

『何それ....』

 

『名前言うだけって....反則......』

 

菜々子と美々子も術式の厄介さに愚痴る。

 

周りがどう対処するかを悩んでいたその時、

 

『オラァ!』

 

ドゴッ

 

突如、夜刀神が横から何かに弾き飛ばされる。

壁をぶち破り、夜刀神の体は高専のグラウンドへ叩きつけられた。

 

『がはっ』

 

吹き飛ばされた夜刀神は体を翻して立ち上がるが、口から紫色の血を吐き出す。

 

『ぐっ....龍山...千鬼...』

 

『今の受けて生きてんのかよ』

 

『夜刀神、大丈夫か?』

 

夜刀神の後ろから千鬼を追ってきた土蜘蛛と禍蛇が来る。

 

『...禍蛇、土蜘蛛...なぜ足止めをしていない』

 

『そう言うお前こそ、なぜ家入硝子を攫っていない』

 

言い争いをする2人を禍蛇が諌める。

 

『2人とも、今は目の前のやつに集中しろ』

 

『千鬼!そいつの名前言っちゃダメ!』

 

硝子が千鬼にアドバイスをするが

 

『え?そいつって...夜刀神って奴のことか?』

 

ここで天然炸裂。

 

『(かかった)』

 

『この馬鹿!』

 

『お!』

 

千鬼の呪力が乱れる。

 

『....(呪力が吸われている?こいつの術式か...)』

 

夜刀神の傷は瞬時に回復し、さらに呪力も跳ね上がる。

 

『フハハハ、素晴らしい呪力量だ。だが、いつまで持つかなぁ?』

 

すると、

 

『(千鬼)』

 

大嶽丸が急に声をかけてきた。

 

『(なんだよ大嶽丸、今忙しい)』

 

『(もう一度あいつの名前を言え)』

 

『(はぁ?)』

 

『(いいからやれ。そのまま放置していたら俺たちにまで影響がくる)』

 

『...夜刀神』

 

『なっ!』

 

すると呪力の流れが正常に戻った。

 

『お、吸われなくなった』

 

『(なぜバレた!?......そうか!)くそっ、大嶽丸か!』

 

『なるほど...昔の術師達は名前を言うのを警戒しすぎて、攻略法が分からなかったんだな』

 

『まぁ、そう簡単には行かないか......だが、なんとしてでも目的は達成するぞ!』

 

禍蛇の宣言で全員が構え、対する千鬼も構えたその時

 

バシュッ

 

区画内を覆っていた帳が消された。

 

『なっ!』

 

『....もう時間か?』

 

『いや、まだ早い』

 

禍蛇達が想定外のことに困惑しているところに滝夜叉姫も合流する。

 

『皆様、これは計画のうちに?』

 

土蜘蛛が不機嫌そうに返した。

『ないに決まっている』

『それより夏油傑はどうした?』

 

『帳がなくなるのが流石に早すぎると思い、一旦退いてきました。』

 

『急にいなくなったと思ったら、そういうことだったんだね』

 

滝夜叉姫が来た方向から夏油が現れる。

 

『......しつこい男は嫌われますよ』

 

『生憎、もう私には相手がいるんだ』

 

『おー夏油、生きてたのか』

 

『えっ...死んだと思われてた?』

 

『いや、大体1人で行動するやつって死んでくから』

 

2人が軽い冗談を言っている間に、虎杖と東堂も合流。

 

『おわっ、なにこの状況』

 

『悠仁、無事だったか』

 

『あっ、千鬼先生!こいつありがとう』

 

『いいよ別に、よくやった天逆毎』

 

『当たり前だ』

 

気づけば、特級4体を囲むように教師や生徒達も集まっていた。

 

五条は六眼で禍蛇達を見つめる。

『へぇー、なかなかいい術式ばっかじゃん』

 

『なに呑気にしてんのよ、早く対処しないと』

そんな五条に歌姫はツッコむも五条は余裕の笑みだった。

 

『五条、夏油....手ェ出すなよ』

『俺の獲物だ』

 

千鬼は楽しそうに笑いながら、禍蛇達を見据える。

 

『さて、どうするか』

 

『一旦、家入硝子は諦めるか』

 

『その方がよさそうですね』

 

禍蛇達が撤退の考えを示す中、夜刀神の金色の瞳が細くなる。

そして静かに手を上げると、周囲の影がざわりと揺れ、空間がわずかに震えた。

 

『だったら、こうしよう』

 

その言葉と共に、闇が膨れ上がる。地面の影が広がり、円錐状に盛り上がった2本の巨大な影が形成される。まるで闇が突き上がるようにして、鋭く尖った影が宙へと伸びた。

 

だが、次の瞬間──

 

 

 

 

 

 

 

ドスッ!

 

衝撃音と共に、影が放たれた。

だが、狙いは千鬼ではなかった。

 

『ぐはっ!』

 

『なっ!?』

 

鋭利な影の槍が、土蜘蛛と滝夜叉姫の身体を正確に貫いていた。

 

『ぐっ....夜刀神、貴様...っ!』

 

『なんの、つもりですか....夜刀神、っ!』

 

二人は怒りと困惑をあらわにして名を呼ぶ。

その瞬間、呪力が夜刀神へ吸収される。

 

『ぐっ...』

 

『がっ』

 

自身の呪力が急激に奪われていくのを感じ、咄嗟に名前をもう一度口にした。

 

『『夜刀神!』』

 

呪力吸収は解除されたが、2人は体力も呪力も削り尽くされ、反撃の余力など残っていなかった。

 

一瞬、場に沈黙が広がる。

 

誰もが、目の前で何が起きたのか理解できなかった。

 

『はぁ?どうなってんだよ...』

虎杖は困惑し、

 

『.....』

硝子も眉を顰める。

 

禍蛇は鋭い声で問いただす。

 

『なんのつもりだっ.....夜刀神!』

 

夜刀神はふっと息を吐き、冷え切った笑みを浮かべる。

 

『すまんな。......ある奴からの指示でな。この二人は“いらない”とさ。だからこうした』

 

 

 

 

 

〜襲撃前〜

 

『それで、話とは?』

 

『今回の襲撃では....土蜘蛛と滝夜叉姫を始末して欲しい』

 

『!、どういうことだ?』

 

『君も土蜘蛛の行動を見ただろ。滝夜叉姫だって同じようなものさ』

『あの2人は強いし、野心もある。いつか私達の障害になる。ならば、今のうちに消すべきだよ』

 

『それでは家入硝子は難しくなるぞ?』

 

『そこは問題ない。最悪、今回は失敗してもいい。また次がある。

それよりも、“長期的な脅威”を潰す方が優先だ」

 

『.......』

 

夜刀神は沈黙する。そして、わずかに頷いた。

 

『...分かった。やってみよう』

『俺もあの二人が鬱陶しいと思っていたところだ』

 

 

 

 

 

『お前達はもう用済みだ』

 

様子を見ていた周りも少し困惑する。

 

『あれあれ?仲間割れかなー』

 

『呪霊同士も、一枚岩ではないんだね』

 

五条と夏油も少し、理解しづらそうにみていた。

 

『禍蛇、我はもう退かせてもらうぞ』

 

『させるか!』

 

千鬼が即座に地を蹴り、神壊(かがい)を振りかぶる。

 

 

だが、夜刀神は自分の影に入り、

 

『さらばだ』

 

そのまま消えていった。

 

ゴゴォン!!

 

振るわれた一撃は、夜刀神が消えた後の地面を砕き、巨大なクレーターを作る。

 

禍蛇は避けるが、土蜘蛛と滝夜叉姫は直撃は免れたものの、衝撃の余波をくらい地面に転がる。

 

『ちっ、(1人逃した....だが!)』

 

千鬼は、すぐさま倒れている2人に手をかざす。

 

『ぐっ、くそ!』

 

『こんなところで!』

 

土蜘蛛と滝夜叉姫はもがくように立ち上がろうとするが、そのまま呪霊玉に変えられた。

 

『よし、あとはお前だけだ』

 

そう言って神壊を禍蛇に向ける。

 

禍蛇は周りを見るが、五条、夏油、冥冥、千鬼、そして高専の生徒達、わずかな隙も見い出せない。

完全に囲まれており、逃げようとすれば間違いなく止められるのは明白だった。

 

そして、ふいに噛み殺すような笑い声を漏らした。

 

『クク......はは...ははははは......あー...いや、悪い。こんな緊張感、いつぶりだろうな』

 

その笑いは場違いにすら思えるほどに静かで、狂気と哀しさを含んでいた。周囲の者たちが一瞬警戒を強める中、禍蛇の視線はまっすぐに千鬼を捉えていた。

 

『お前まさか、さっき調伏した土蜘蛛と滝夜叉姫、取り込むつもりか?』

 

千鬼は軽く肩をすくめて答えた。

 

『ああ。せっかく手に入った特級モノだ。使わない手はないだろ?』

 

即答した千鬼に、禍蛇は少しだけ目を細め、そしてわずかにうつむいて笑った。

 

『そうか...そうだよな。お前は、なんとも...ないんだな』

 

『......何の話だ?』

 

千鬼が目を細めると、禍蛇はまっすぐに顔を上げた。

 

『ふふっ....ところで、お前は呪霊装術についての文献などは読んだか?』

 

『....一通りな』

 

『そうか....その中に、【八郎太郎(はちろうたろう)】と言う呪術師の名前があったか?』

 

『確か....9代目だったな。それがどうした?』

 

禍蛇は静かに答える。

 

『それは私だ』

 

禍蛇の言葉に千鬼だけでなく、周りも驚愕する。

 

『!、はぁ?』

 

『私は9代目の呪霊装術の使い手、江戸時代にいた術師なんだよ』

 

夏油は確認をするように呟いた。

 

『...ということは、千鬼の先輩か?』

 

五条も確信したように呟く。

 

『しかも呪霊化って言う最悪な形になった方だね』

 

禍蛇は千鬼をまっすぐ見つめながら問いかける。

『あぁ、最悪だろう。だが龍山千鬼よ。呪霊装術の終着点が“これ”だとしたら、どう思う?』

 

千鬼は黙っていた。

 

その沈黙は、返答を拒むものではなかった。

むしろ、その問いに対して、言葉で答えるには時間が足りなかった。

 

──もしこの術式の果てが、禍蛇のような姿だとしたら?

 

呪霊を取り込み、力を重ね、敵を打倒するたびに強くなる。

だが、その先に“呪い”そのものに身を堕とす未来が待っているとしたら

 

『(それでも、俺は......)』

 

彼の目に迷いはなかった。

だが、完全に切り捨てられるものでもなかった。

千鬼は自分の術式の怖さを知っている。

そして、同じ術式の末路を歩んだ者を前にして、わずかに胸が疼くのを感じていた。

 

それでも、何かを言おうと口を開こうとした時

 

『...ふざけんなよ』

 

低く、しかし鋭い声が場を裂いた。

 

家入硝子だった。

 

硝子は禍蛇を睨みつけるように見つめていた。

表情には珍しく怒気が含まれていた。

 

『“終着点”だ? あんたが勝手にそこへ堕ちただけだろ』

 

その声は静かで、よく通る。冷徹さすら帯びていた。

 

『千鬼は、あんたとは違う。あんたの言う“終わり”に、こいつを当てはめるな』

 

そう言って硝子は、千鬼に近づくと手を軽く掴んだ。

 

『私は医者だ。こいつが呪霊になんかなる未来は....私が、絶対に許さない』

 

禍蛇が一瞬だけ目を細める。だが、その視線には敵意ではなく、どこか羨望に似た感情があった。

 

千鬼は横目で硝子を見る。

彼女の手は、少しだけ震えていた。

千鬼は静かに、だが確かな声で言った。

 

『そういうことだ。俺は“それ”になるつもりはない』

 

そして、神壊をもう一度、禍蛇に向ける。

 

『お前がそれを望んだとしても、だ』

 

周囲の空気が、再び張り詰める。

 

『そうか...そうだな』

ぽつりと呟いた禍蛇の表情には、奇妙なやわらかさが宿っていた。

 

そして俯き、静かに呟く

『私にはなかったものを持っているな...』

 

禍蛇は千鬼の顔を真っ直ぐに見ると、ゆっくりと両腕を広げた。

 

『ならば見せてみろ。龍山千鬼』

『私ができなかった。“そうならない”という可能性を、お前が証明してみせろ」

 

空気が一瞬にして震える。

禍蛇の呪力が爆発的に膨れ上がる。

周囲も警戒して距離を取る。

 

禍蛇は、薄く笑いながら告げた。

 

『今出せるお前の最高の力で、私という“呪い”を祓ってみろ!』

 

千鬼は、一瞬だけ目を伏せた。

 

『...ああ。応えてやるよ、先輩』

 

呟いたその瞬間、千鬼の背後に黒雷のような呪力が奔った。

それを感じた硝子は邪魔にならないように千鬼から離れる。

 

『大嶽丸、装備』

 

その瞬間、千鬼の見た目が変わる。

頭部には兜に金属製の尖った角を持ち、全身に雷や炎、氷などの自然を表す印が刻まれた、紅と黒が輝く武者鎧の姿がそこにあった。

 

禍蛇の目が見開かれる。

 

『それが大嶽丸か!面白い!』

 

『行くぞ、禍蛇!』

 

呪霊装術の使い手と呪霊装術の使い手だったものが今ぶつかろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

夜刀神(やとのかみ)

名喰影

特級呪霊

 

人々が恐れた蛇神信仰や夜刀神から生まれた呪霊。

平安時代に猛威を振るっていたが、自分の力を過信し、大嶽丸に挑む。

結果は惨敗、大嶽丸から『次は退屈しない程度に強くなれ』と言われ、見逃される。

その逃走している途中で、大嶽丸の元へ向かっていた鈴鹿御前と遭遇する。

憂さ晴らしを兼ねた、呪力をもらうため襲いかかるが、返り討ちにあい、封印される。

その後はずっと山奥の小さな祠に封印されていたが、長い年月で綻びが生じ、呪力が流れ出て、それを発見した神凪に解放される。(なので硝子を攫うのには乗り気だった)

大嶽丸が攻略法を知っていたのは、名前を呼んだ時に呪力を吸われたが、手加減するにはちょうどいいと思い、もっと吸わせてやろうと再び名前を言ったら解除されたから(そこから一気に興味をなくして殺す気も失せた)

今の目的は『自分が悠々と過ごせる場所を作る』こと、そのためならばなんでも利用し、協力も惜しまない。

 

術式:名喰影(なぐえ)

夜刀神の名前を言った者呪力を吸い取ることや影の中に潜み、影を操る術式

呪力を吸収する対象は選択可能で神凪達の時は吸わないようにしていた。再び名前を言うと解除され、5分後に同じ対象にまた使える。(大嶽丸には5分も持たなかった)

影に影響を与える術式なので、伏黒が一番相手にしてはいけないタイプ

 

 

 

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