呪霊装術   作:戦艦YAMATO

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幕間の小話8

 

〈中の呪霊達〉

 

 

私の名は【がしゃどくろ】、千鬼様に最初に調伏された特級呪霊だ。

あの出会いの時は忘れられない。

呪霊として生まれ、少し経った後に私の前に現れた千鬼様はまだ呪術のことも知らなかった。

私は最初こそ追い詰めたが、後に反撃され、敗北を喫した。

以来、約13年間千鬼様に仕えている。

呪霊装術というからその内私達に体を取り込まれるだろうと思っていたが、そんなことはなく元気に過ごしているようだ。

 

今日も、私達は千鬼様の中でそれぞれの時間を過ごしている。

ちなみにここは私の生得領域。

周りは荒地で、ところどころに骨が散らばっている。

最初にここへ来た時はなにもない真っ白な空間だったが、私が来た次の瞬間にはこの領域が現れた。

おそらく、これも呪霊装術の特徴なのだろう。

 

千鬼様に任務がなければ、基本的にこの内なる空間で各々、好き勝手にしているのだ。

 

……と、そんな日常の中で。

 

『うむ……暇だな』

 

私は骨の顎を鳴らしながら立ち上がる。

たまには様子見がてら、他の呪霊どもの領域を回ってみようと思ったのだ。

 

まず向かったのは、あいつのところだ。

 

途中で三級や四級、蝿頭などの呪霊達と何度もすれ違うが、こいつらは基本的に思考する頭がないのでただそこにぼーっとして大人しくしている。

 

私の領域を出ると、次の瞬間には氷の世界になった。

雪がしんしんと降り積もり、周りは煌びやかな氷で囲まれいている。

察していると思うが、ここは私の次に調伏された特級呪霊【雪女(ゆきおんな)】の領域だ。

どうやら今日は吹雪がないので、機嫌は悪くないらしい。

今思えば雪女と対峙した時の千鬼様の判断は間違っていなかっただろう。

千鬼様は雪女を感知した瞬間に、私を装備して一気に攻め立てた。

それこそ雪女が反撃をする機会を与えずに、そして調伏した。

一見簡単そうに思えるが、少しでも雪女が先に気づいていたらあの時の千鬼様では対処ができなかっただろう。

 

『なにをしているのですか?』

 

雪女との出会いを思い出しながら散策していると、雪女が私の後ろに現れた。

相変わらず感情の読めない顔で、雪女は私を見つめる。

だが私は知っている。彼女は静かな時ほど機嫌がいい。

 

『いや、改めて千鬼様の中を見て回ろうと来てただけだ』

 

『そうですか....確かにここはさまざまな領域や呪霊がいるので、少し見ないと変わっているところもありますからね。』

『ところで、せっかくですからお茶でも飲みますか?』

 

『…雪女、お前の氷の部屋でお茶は…』

 

『熱いですよ』

 

『……では、ありがたく』

 

雪女が作った氷の宮殿のような建物に入り、(入り口に置いてあった千鬼様の氷像は無視することにしよう)差し出された湯呑みから、ふわりと湯気が上がる。

見た目は氷の精霊でも、中身は意外とホスピタリティに溢れているのかもしれない。

 

熱いお茶をすする私の向かいで、雪女が一言。

鋭い目で私を見た。

 

『こうして来るのはいいですが、私の平穏を乱すようなことはしないでくださいね』

 

....確かに一級以上の呪霊達は意思疎通ができるため、さまざまな行動ができ、時にはぶつかり合うこともあるが....そういえば雪女はそれを抑えることをしていたな。

 

『分かっている....時に、幾つか質問をしたいのだが』

 

『いいですよ』

 

『なぜ、呪霊同士のいざこざを止めているんだ?

わざわざそんな面倒なことをしなくても、この中にいるもの同士の戦いなら死ぬことはないだろうに』

 

『私はただ静かに過ごしたいのです。それを邪魔されるのが嫌だから止めているだけのこと』

 

『そうか...では次に、千鬼様と出会った時、お前は先に気づかれてやられてしまったが、もしお前が先に気づいていたらどうしてたのだ?』

 

『そうですね....私は山に入ってきたものを気分で雪崩に巻き込んだりしていたので、あの時は氷漬けにしようと思っていました。』

 

....どうやら先制攻撃は間違っていなかったらしいな

 

『そうか...ん?なぜ氷漬けなのだ?』

 

『なかなかいい男でしたから』

 

『なるほど、硝子様が聞いたら大変なことになりそうだ』

 

『でも今は無理ですよ。調伏されてしまいましたから』

『それにしても、奥方様とは呼ばないんですね?』

 

『先日、それを注意されてしまった』

 

『そういうことですか。ちなみに次はどちらへ?』

 

『天逆毎のところへ行こうと』

 

『天逆毎なら、大百足と一緒に大嶽丸の元へ行きましたよ』

 

それは助かる。天逆毎ならともかく、大百足の領域は正直、居心地が悪いからな。

 

『....今度はどんな理由なんだ?』

 

『天逆毎は今度は勝つと言って、大百足は最近見下されてムカつくと言った感じですね』

 

『なるほど......いつも通りか』

 

それにしても、呪霊同士の中でも雪女は観察力と洞察に長けている。

本当に“静かに過ごしたい”だけなのか、実は裏で色々掌握しているのではないかと時々思う。

 

『なるほど、感謝する』

 

『いえいえ』

『言っておきますが氷像は壊さないでくださいね』

 

『(だったら入り口に置くな)』

 

私は氷宮から出る。

相変わらず、あいつの表情が文字通り凍っているな。

確か五条悟や夏油傑はクール系美人と言っていたが....あれはただなんとも思っていないだけではないだろうか....

 

 

 

しばらく歩くと、雷鳴が響く黒雲に覆われた領域に着く。

 

中へ入ると轟音が響いていたが、私が着く頃には終わっていた。

そして、目の前には高笑いする大嶽丸(おおたけまる)とその足元で膝をつく天逆毎(あまのざこ)、向こうを見ると本来の大きさに戻った大百足(おおむかで)が痙攣を起こしているように倒れている。

 

『ん、がしゃどくろか』

『なんのようだ?』

 

『少し中を散策しようと』

 

『そうか』

『少し前に入った異国の者達がまた来たのかと思ったが......』

 

そういえば千鬼様は新たな呪霊を調伏していたな、何なら日本ではない国で取り込んだらしい。

 

『それにしても残念だったな天逆毎、大百足』

新しく入った呪霊達を思い出していると、大嶽丸が楽しそうに笑う。

 

『はぁ、はぁ...くそ!』

 

『おの、れ....』

 

『まぁ、なかなかよかったぞ』

『昨日来た新参者達に比べればな』

 

『そのわりには余裕そうじゃねぇか!』

 

『余裕だったからな』

 

『我々を見下しているような発言、気に食わぬ!』

 

『ようなではない、見下しているんだ』

『俺とお前達は同じ特級として分類されているが、実力は見ての通り』

『だが、お前達は特級でも上の方に位置するだろう。誇れ』

 

『が〜!クソムカつく!』

 

『回復したらもう一度だ!』

 

『どんどんかかってこい。暇つぶしにはちょうどいい』

 

......退散した方が良さそうだ。

巻き込まれる前に、静かにその場を後にした。

 

『がしゃどくろー!どこ行ったー!』

 

天逆毎の声が聞こえたので退散してよかったな。

 

 

 

最後にアッコロカムイの元へ行くと、深海の中にいるような領域になる。

私は特に問題ないが、人間ならば大変なことになるだろう。

よく見るとアッコロカムイが影逆鉾(かげのさかほこ)と一緒に談笑していた。

 

『ん?おぉ、がしゃどくろ』

『今日も太い骨だなー』

 

『褒めているのか?それは』

 

『何しにきたんだ?』

 

『少し散策をな』

 

『散策〜?特級様はこうも暇なのか?』

 

『まぁ、毎日何かしらの事があるわけではないしな

それにお前も同じようなものだろう』

 

『暇じゃない、僕は重要な役目をよく千鬼様から任されている』

 

『五条悟に制裁を加えるやつか?』

 

『そうだ。あの最強に一番有効なのはこの僕、影逆鉾様だ!』

 

心なしか胸を張っているように思えた。(イカだから分からないが....)

 

急にアッコロカムイが触手をピンと立てる。

 

『そういえば影鉾、最近気に入った人間ができたらしいな』

 

『おいアッコロカムイ、言うなよ』

 

『いいじゃないか、困ることはないだろ』

 

『誰なんだ?千鬼様と硝子様ではないのか?』

 

『そのお二方は当然として、歌姫という人間が気に入った』

 

『歌姫...(確か千鬼様の先輩に当たる人物だな)何故だ?』

 

『よく可愛がってくれる』

 

....確かに何かと可愛がっているふうに見える。

イカというより犬のような可愛がり方だな

 

『それはお前が五条悟に有効だからだろう』

 

『それでも、あの四級だった頃と比べれば雲泥の差だ』

 

『まぁ、お前がそれでいいなら何も言わないが....』

 

まぁ、本人?がそう言うなら納得しよう。

 

『そういえば、がしゃどくろ』

 

少し考えていると、アッコロカムイから声をかけられる。

 

『なんだ?』

 

『久しぶりに将棋でもどうだ?』

 

するとどこからか将棋盤と駒が現れた。

 

『ほう、面白い』

『今度も勝たせてもらう』

 

『前回と同じではないというところを見せてやる』

 

『それじゃあ僕はゆっくり漂ってるよ』

 

そう言って影逆鉾はどこかへいってしまった。

 

私は将棋を指しながらふと考えた。

千鬼様の中には、恐れられた呪霊たちが今、こうして──

 

お茶を飲み、氷像を作り、将棋を指している。

 

私は無念に死んでいった死者の怨念が具現化したもの、そんな“平穏”というものは無縁のものだと思っていたが....

 

その後、千鬼様は特に任務がなかったのか、私達は誰も出ずにその日は終わった。

 

ちなみに将棋の結果は私の負けだった......今度は勝つ

 

 

 

 

特級呪霊達にインタビュー(インタビュアー影逆鉾)

 

〈硝子様の印象は?〉

 

がしゃどくろ

『千鬼様が唯一、逆らえないお方』

 

雪女

『昔はよく敵を見る目で見られていたが、今はそうでもない』

 

天逆毎

『千鬼様よりも強い女』

 

大百足

『我の毒を、恐れずに取りに来る変わった人間』

 

アッコロカムイ

『初対面で酒のつまみにされそうになったので、少し恐ろしい人間だと思う』

 

大嶽丸

『気丈で生意気な女....ますますあいつに似てきて腹立たしい』

 

 

 

〈今、人間を好きにしていいよと言われたら?〉

 

がしゃどくろ

『殺す』

 

雪女

『気分次第』

 

天逆毎

『強ければ戦いたい、弱ければ殺す』

 

大百足

『まずは遊んでやる』

 

アッコロカムイ

『どうでもいい』

 

大嶽丸

『呪力があれば食う、なければ術式の練習台』

 

 

 

〈千鬼様の最初の印象は?〉

 

がしゃどくろ

『獲物がノコノコやってきた』

 

雪女

『いきなり攻撃されて訳がわからない』

 

天逆毎

『強くて面白そう』

 

大百足

『凍らされ、一方的に体を破壊され、憤りしか感じなかった』

 

アッコロカムイ

『なんか前回相手した奴らよりはるかにヤバい奴がきた』

 

大嶽丸

『とても良い獲物が来た』

 

 

 

〈千鬼様と硝子様以外で印象に残っている人間、または呪霊〉

 

がしゃどくろ

『伏黒恵:私を玉犬の骨のおもちゃにしようとしていたので、なかなか度胸がある』

 

雪女

『天逆毎:私が凍らせたのに無理矢理動いて攻めてきたので、少し驚きました』

 

天逆毎

『虎杖悠仁:あいつ鍛えたら俺と殴り合えるぐらい面白くなりそう』

 

大百足

『黒井美里:硝子様の次に我を見ても驚かない女だった。』

 

アッコロカムイ

『七海建人:少し前にチェスに付き合ってくれた。次は勝ちたい』

 

大嶽丸

『乙骨憂太:いい成長具合だ。術式も面白い』

 

 

 

〈逆になんか嫌な人間または呪霊〉

 

がしゃどくろ

『五条悟:人間大になった私に理科室の標本と笑いながら言ってきた。あんなに笑うか普通』

 

雪女

『東堂葵:百鬼夜行の時、私を見てなかなかいいなと言ってきました。不愉快です』

 

天逆毎

『狗巻棘:鍛えろ』

 

大百足

『虎杖悠仁:毒が効かないとかつまらん』

 

アッコロカムイ

『夏油傑:俺を見てこんな蛸が脅威になるんだねと言ってきた。バカにしてんのか!』

 

大嶽丸

『宿儺:大嫌いだ。あんな自分勝手の傲慢馬鹿』

 

 

 

〈最近気になる事〉

 

がしゃどくろ

『最近入ってきた騎士のような風貌の呪霊、どうやって会話してるんだ?』

 

雪女

『最近入ってきた異国の女呪霊、私を見るなり獲物を見つけたような目になっていました。

いつか凍らせます』

 

天逆毎

『禪院真希、なんだか足りない気がする』

 

大百足

『満足に本来の大きさに戻れない事が多くなった。この国も案外狭いな』

 

アッコロカムイ

『最近入ってきた異国の呪霊達、馴染めんのかあいつら?』

 

大嶽丸

『真人とか言う呪霊。術式は面白そうだが、おそらく性格は俺が嫌いな部類だろう』

 

 

 

〈ぶっちゃけ、呪霊の中で誰が一番強い?〉

 

がしゃどくろ

『大嶽丸』

 

雪女

『大嶽丸ですかね...でも天逆毎が満足に領域を使えればもしかしたら...』

 

天逆毎

『俺だな! 

大嶽丸?......いつか勝つからいいんだよ!』

 

大百足

『悔しいが、大嶽丸だ』

 

アッコロカムイ

『状況とかにもよるが...術式でだけで言うなら影逆鉾が強いんじゃないか?』

 

大嶽丸

『俺に決まってるだろ』

 

 




〈硝子に質問、千鬼の呪霊について〉(インタビュアー伊地知)

がしゃどくろは?
『千鬼と付き合い長いからね。私の護衛とかもするし、何気に一番面識がある気がするよ。あいつ以外に少し柔らかくなってるんだよ、性格が』

雪女は?
『最初は五条達が見た目を褒めるもんだから警戒してたけど...今は千鬼の任務での様子とか報告するようにお願いしてるから、悪い仲ではないよ』

天逆毎は?
『あの喧嘩っ早いところ直して欲しいんだよね。千鬼がもっと戦闘狂になりそう』

大百足は?
『よく毒の研究とかで使わせてもらってる。おかげでいいのが作れた。何に使うのかは言わないよ』

アッコロカムイは?
『最初に千鬼から見せられた時、歌姫先輩とお酒飲んでたからつまみにしようとしてたよ。正直、少し悪かったと思ってる』

大嶽丸は?
『そのまま大人しくしてろって感じかな。あんまり会わないから最初の頃と印象がそんなに変わらないのが現状だね』





〈他の人に聞いた。千鬼の呪霊について〉

五条
『大嶽丸がマジでやばいと思うよ。前に少し戦ってみた時、僕の無限が突破されそうだったからね。全盛期に戻ったら少し覚悟しとかないと......影逆鉾?僕、あいつ嫌いなんだ』

夏油
『正直羨ましいとは思うけど、私の呪霊操術では呪霊達は成長しないからね。あの呪霊達は千鬼に調伏されて良かったんじゃないかな』

七海
『アッコロカムイという呪霊とチェスをしたのですが、なかなかいい腕でしたね。次に勝負した時は負けるかもしれません』

灰原
『みんな強い呪霊ばかりだけど、千鬼先輩はそれらを使いこなしているから、呪霊達よりもすごい人だと思ってるよ!』

歌姫
『呪霊を可愛がる日が来るとは思わなかったけど...あの影逆鉾っていいわよね。なんせあの子が近くにいる時は五条がウザくならないから、何気にイカのくせに可愛いし』

冥冥
『天逆毎が印象に残ってるよ。龍山君があの呪霊と戦うことになったのは、私が負けてしまってその救援で来た時だからね。彼に借りを作ることになってしまったよ』

理子
『大百足ですかね。最初見た時、叫んで気絶してしまいました。今でも姿を見ると少し寒気がします...』

美里
『雪女さんって意外に料理ができるんですよ。以前、一緒に料理を作った時に、手際の良さに驚きました。しかも美味しいですし、久しぶりに負けてられないと火がつきましたね』
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