五条悟と龍山千鬼が封印されたと言う知らせは渋谷に集結していた術師達に衝撃を走らせるには十分だった。
術師達はすぐに五条悟と龍山千鬼の奪還のために、渋谷の帳の中へ向かって入っていく。
〜帳の外〜
帳の外では灰原が他の補助監督達と連絡を取り、なんとか連絡や報告が途切れないように動こうとしていた。
「新田ちゃん、すぐに僕たちだけでも連絡網を確保するよ」
「非番の補助監督や窓の一部も動員すれば、!」
灰原後ろから何かを感じ取りすぐに動いた。
灰原のいたところには剣があり、もう少し遅れていたら灰原は刺されていただろう。
「あれー?外しちゃった。俺は本当にだめだなぁ」
そこにいたのは重面春太だった。
「さっきの眼鏡かけたやつは簡単にやれたんだけど」
「(眼鏡?…もしかして伊地知)」
「(それにこいつは、報告だと高専襲撃の時の呪詛師か)」
「これはすぐに伊地知の元に向かわないとだね」
「新田ちゃんごめん、ちょっとトラブル」
そう言って灰原は電話を切り拳を構えた。
春太は揶揄うように言った。
「黒いスーツのやつらって全員弱いんでしょ。無理せずにさっさと俺に殺されなよ」
それに対して灰原は真剣な目で春太を見据えた。
「悪いけど、僕はそこら辺の補助監督よりも強いよ」
※
〜ビル屋上〜
虎杖は一旦冥冥達と別れ、ミニメカ丸からの情報で五条悟と龍山千鬼が封印されたことを知り、それを伝えようと七海を大声で呼ぶ。
そして七海、猪野、伏黒と合流し、屋上で状況を説明しようとしていた。
「えっ!知ってたの!」
「あぁ、少し前に夏油先生の呪霊が知らせに来てくれた」
「ですので、私たちも帳の中に突入してたということです」
するとミニメカ丸が少し安心したような声で話す。
「そうだったか。では家入硝子は無事なんだナ」
「はい、夏油さんが後方まで運んできてくれました。今は夜蛾学長と一緒に何かあった時のために待機してくれてます」
「だが、夏油先生は急いで渋谷駅の方に行った」
「冷静そうに見えるが、やっぱりあの人もこの状況に結構焦ってる感じだ」
「確かにそうだな。渋谷は今正に伏魔殿」
「特級とそいつらが連れてきた呪霊、神凪の息のかかった呪詛師、改造人間に一般人」
「こんな状況に呪術界の三強のうち2人は行動不能」
「一刻も早く2人を取り返さないとならなイ」
「夏油さんは直接向かいましたが、私たちは地下鉄の隣駅から攻めた方が早いかもしれません」
「だが、そのためには帳を解かなければ」
「緊急事態だ。マルチタスクで頼ム」
「四の五の言っている場合ではなイ」
「一級でしか通らないことが出てくるはずです。外に出て灰原と済ませてきます」
「3人にはその間、“術師を入れない帳”を解いて欲しいです」
「猪野くん」
スタッ
先程まで上にいた猪野が降りてくる。
「日下部さんや禪院特別一級術師もこの帳の中にいるはずです」
「もう封印のことは伝わっているはずなので、合流した場合は状況確認と説明をして協力を仰いでください」
「了解!」
「それから、2人を頼みます」
その言葉に猪野は一瞬目を見開くが、すぐに真剣な表情となり元気よく返事をした。
「…はい!」
七海が行った後、猪野は動かなくなっていた。
「……」
「あの〜、猪野さん?」
「…(七海さんに頼られちゃった…)」
どうやら感動していたようだ。
そして急に後ろにいる虎杖と伏黒に声をかけた。
「おまえらぁ!」
ビクッ!
「任務の前に事の重大さを教えといてやる」
「題して、『五条さんと千鬼さんがいなくなって困る三つのこと』」
「まず一つ“五条家の失墜”」
「五条家は五条悟のワンマンチーム。五条さんが利かせていた融通(ワガママ)で救われていた術師が数多くいる!」
「それに関しては虎杖、おまえもその1人じゃないか?」
「っすね!」
「軽いな…」
「そういう連中がみんな困ったさんになってしまい最悪消される!
だが、これに関しては五条さんだけじゃなくて千鬼さんや夏油さんも手助けしてたから、夏油さんが健全である現状は、そんなに影響はないと考えられる」
「次に二つ目、“パワーバランスの崩壊”」
「五条悟がいたから、龍山千鬼がいたからという理由で大人しくしていた呪霊、呪詛師が一斉に動き出す!」
「正直、一つ目よりこの二つ目の方が影響が出てくると考えられる!」
「そして三つ目、“任務の増加”」
「二つ目にも繋がることだが、大人しくしていた呪霊や呪詛師達が動き出せば当然、それに関する事件なども多くなって任務も増えてくる!」
「さらに、千鬼さんに関しては日本全国、時には世界を周って任務をすることがあったので、あの人がいなくなっただけで俺たちの任務が増加する!」
「ただでさえ人手不足の世界なのに、これ以上増加してみろ、総力戦が起こった時には確実に負ける」
「そして俺たちは過労死か呪い殺されるかのどちらしか無くなる!」
「俺と七海さんはそう読んでる」
「もし総力戦で負けたらどうなる?」
猪野の質問に伏黒が答えた。
「少なくとも日本では、人間の時代が終わりますね」
「分かってんじゃねーか」
「それじゃあ行くぜ!後輩ちゃんズ!」
「七海さんが戻る前に帳をぶっ壊す!」
「そして、五条悟と龍山千鬼を助けるぞ!」
※
虎杖達は一旦帳がなんとか破壊できないから試すために帳のそばに来て虎杖が思いっきり殴っていた。
バチィッ!
ビリビリビリ…
「ダメだ。びくともしねぇ」
「ま、まぁまぁの威力だな…(嘘だろ!?打撃だけなら七海さんとタメはるんじゃねーか?)」
「(つーか、だからこそ)」
「相当強固な帳ですね。どこか脆いところを探して一瞬でもいいから穴を開けないと」
「えっ、なんで?」
「なんでって、帳は自分を守るバリアみたいなもんだからだよ」
「えっ、でも原宿の時は…」
虎杖は原宿での帳の説明をした。
「…成程!」
「確かにその理屈なら強度がこんなにもある説明もつくな」
「……その理屈ならこの帳の基はかなり目立つ所にあるんじゃないですか」
〜渋谷 Cタワー屋上〜
「粟坂や、聞こえたか?」
「あぁ、聞こえたよ。五条悟と龍山千鬼が封印されたってな」
屋上では呪詛師、粟坂二良とオガミ婆とその孫がいた。
「先程、神凪の札からきた情報は本当じゃったな」
「興奮してきたぜ」
「にしても、気づくかな?」
「ここが一番目立つよな?」
「多分ね」
「でも、気付いたところでだよ」
「まぁ、確かにな」
「下には例の改造人間がうじゃうじゃいる。そうすぐには上がってこれねぇだろ」
粟坂達が油断していたその時、
ザッ!
背後に鵺が現れた。
その背には猪野と虎杖が乗り、虎杖が降りて鵺とは違う方向に行く。
鵺も粟坂達に真っ直ぐにはいかず横に逸れた。
だが粟坂達の体は何かに引っ掛かり、後ろに押される。
「(ワイヤー!?)」
孫はオガミ婆を庇いながらワイヤーを回避したが、粟坂はまともに受けて、そのまま屋上から落とされてしまった。
猪野は急いで帳の基を壊そうと動く。
「(よし、プラン通り)!」
帳の基が3本刺された跡があるが、そこには1本しかなかった。
猪野は急いで一本を破壊するが、帳は上がらない。
「(帳が上がらない。残りの2本は?)」
猪野は周りを見て落ちていく粟坂が持っているのを確認する。
「(あいつか!)」
猪野は粟坂は虎杖と伏黒に任せることにして、自分はこの2人を相手しようと決めた。
「孫よ」
「うん、分かってるよ婆ちゃん」
「カワイイ後輩もできたことだし、ここいらで活躍してぼちぼち俺も」
猪野は顔を隠した。
「一級術師になっちゃうぞ」
※
その頃、虎杖は下にいた伏黒と合流し、屋上から落ちた粟坂が倒れている場所まで行く。
道路の真ん中で倒れてはいるが、虎杖と伏黒は違和感を感じて近づかなかった。
「虎杖、俺は接地の瞬間を見てない。」
「けど、死体が綺麗すぎる。術師とはいえ、41階からの落下だぞ?」
そう言って伏黒は構えた。
「起きろ!タヌキジジイ!」
伏黒がそう言うと、粟坂はなんともなさそうに起き上がり、体のワイヤーを外した。
見たところ外傷は全くない、それどころかピンピンしていた。
「まったく、若者は年寄りを労わらんかい」
対する二人ももうすでに構えていた。
「時間かけらんねぇぞ」
「かかんねぇよ」
そして虎杖は飛びかかり、粟坂の腹に渾身の一撃を放つ。
ドゴォッ!
コンクリートの分厚い壁すらを砕く拳が粟坂野原に直撃する。
さらに伏黒も式神【渾】を出して攻撃させ、自身も影から剣を取り出し攻撃。
敵よりも虎杖の動きに合わせる方が大変だが、着実に敵を追い詰めていた。
──はずだった。
コキコキ
「……フム」
粟坂を確認すると、倒れるどころか怯んでいる様子すらなかった。
それどころか傷一つすらついていない。
そして粟坂は腹巻から短刀を取り出して虎杖に斬りつける。
虎杖は急いで離れ、伏黒は蝦蟇を使って粟坂を投げ飛ばした。
「虎杖!」
「
瓦礫の中から無傷の粟坂が出てきた。
「元気元気…将来有望、殺り甲斐がある」
伏黒の玉犬は特級にも効く、持っている剣も花御を傷つけた。
虎杖はそれ以上、だが粟坂にダメージはなかった。
むしろ相手は楽しむように笑っている。
「時間かかりそうだな」
「……ノーコメントで」
目の前の二人と戦いながら粟坂は思い返していた。
※
20年以上も前、粟坂やオガミ婆などの呪詛師は自由だった。
年々活発になる呪霊の相手で術師は手一杯。
上手く立ち回れば何にも縛られずに楽に稼げる。
まさに自由に我儘に呪詛師達は生きていた。
そんな呪詛師の一人だった粟坂とオガミ婆はある噂を聞いた。
「五条悟?」
「えぇ、五条家に生まれた六眼の子供です」
「子供?」
「すでにトータルの賞金は億を超えています」
「あぁ、これは依頼ではありません」
「早い者勝ちという話ですよ」
粟坂もオガミ婆もまだ年端もいかない子供を殺すだけで億の金が入る楽なものだと思っていた。
──だが違った。
実物を見てすぐに理解した。
年々力を増している呪霊…その原因を
こいつだ!五条悟!
五条悟が生まれたから、世界の均衡が変わったんだ!
その日から粟坂達、呪詛師は狭い生き方を送ることになった。
だがそれでもある程度自由ではいられた。
だが崩れた均衡は五条悟だけではなかった。
五条悟が生まれて約15年ほどが経った時、龍山千鬼と夏油傑が呪術界に現れる。
最初は五条悟よりはマシ、所詮は一般人から出た青二才。
そう思っていた。
──だが違った。
ある呪詛師が二人を殺す依頼を受けていた。
その呪詛師は粟坂と知り合いで、
「どうせ一般人の延長みたいなもんだ。すぐに殺してたんまり金貰うさ」
そう言って行ってしまった。
──そいつは帰ってこなかった。
その日から、呪詛師の数が減って行った。
理由は明確、あの二人も手を出しちゃいけなかった。
夏油傑も龍山千鬼もちゃんとイカれていた。
平気な顔して呪詛師を殺している。
なんなら呪霊の餌にしているって噂も広がった。
俺たちは窮屈な生き方をせざる負えなくなっていた。
俺達は…自由だった
※
粟坂は虎杖と伏黒を相手に善戦、虎杖達の攻撃は効かず、だが粟坂自身の攻撃は虎杖達には効く。
「(俺達は晩年にしてその自由を奪われたんだ)」
まるで怒りをぶつけるように虎杖を蹴り飛ばす。
「(ふざけんな!)」
後ろから攻撃してくる伏黒にもちゃんと対応する。
「(俺は生涯現役、死ぬまで弱者を蹂躙する!)」
「楽しいぜ!」
「マジでなんなんだよこいつ!タフってレベルじゃねーぞ!」
「(十中八九、術式によるもの。無効化?…)」
「なら…」
伏黒は何かを思いつき、口を開いた。
「おい!五条悟が渋谷に来ている!さっさと帳の基を置いて逃げたらどうだ!」
それを聞いて粟坂はわらう笑う。
「クックック、ハッタリが下手だなぁ。五条悟が封印されたってお前達が大声で言ってただろうが」
「それに龍山千鬼も封印されて、夏油傑はそっちに夢中なんだろ?」
「つーか、だから俺達がハシャいでんだろうが、この3人が健全でいたら家で大人しくしてるわ」
「(やっぱり、こいつは五条先生達には勝てない。だから無効化なんて大層なもんじゃない)」
「どんまい、伏黒」
「ウルセェ、そもそも大声で言ってたのお前だろうが」
「やる気がないなら、そろそろ殺すが?」
そして粟坂は虎杖達には向かっていく。
「来るぞ!」
虎杖達は構えたが、
──パシャッ、バシッ!
向かってくる粟坂の動きが止まり、腹には縄が絡みつき、粟坂は投げ飛ばされた。
「恵〜、苦戦してる?」
虎杖達が声のする方へ振り向くと、菜々子と美々子がいた。
「お前ら…後方で家入先生の護衛じゃ?」
「家入先生が学長もいるし、私はいいから行ってくれって言われたの」
「そ、だから私達も帳に入ったらちょうど戦闘音が聞こえたから向かってきたってわけ」
「そうか……菜々子、お前術式使ったよな?」
「えっ、そうだけど」
「なんかまずい?」
「いや、ありがとう。
これであいつのタネが分かった」
伏黒からお礼を言われた菜々子は少し目を見開いて照れくさそうに返した。
「…いや〜、良かったよ。恵の役に立てて」
「……(ずるい)」
「虎杖、すぐに終わらせる。俺の指示に従ってくれ」
「りょーかい!」
瓦礫の中から粟坂が出てくる。
「なんだぁ小娘二人が救援か?」
「すぐにガキ共を殺して、嬲って悲鳴を上げさせてやる」
「うわっ何あのおっさん。キモっ!」
「…不潔」
「反撃するぞ!いくぞ!」
伏黒の掛け声で四人は粟坂にかかって行った。
伏黒恵のヒロインは?
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美々子
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菜々子
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いやまだ出そうだから待って!